2016年 07月 20日
世界遺産ポンペイの壁画展 森アーツセンターギャラリー
ここでご紹介する展覧会は、先ごろまで東京六本木の森アーツセンターギャラリーで開かれていたもので、既に東京での会期は終了してしまったが、もうすぐ名古屋市美術館で開かれるはずだし、その後も神戸、山口と、未だ会場と期間は決まっていないようだが福岡にも巡回するので、この記事で興味を持たれた方には、そのいずれかで実物を目にするチャンスを追い求めて頂きたい。これは、昨年来開かれて来た日伊国交樹立150周年を記念する展覧会のひとつ。紀元 79年、ヴェスヴィオ火山の噴火によって埋もれてしまうことで、ローマ帝国時代の人々の日常生活がそのまま保存された奇跡の街、ポンペイから発掘された壁画を並べた興味深い展覧会だ。私はポンペイに行ったことはないと既に書いたが、負け惜しみではないが、これまで日本で開かれた展覧会、すなわち1997年横浜美術館での「ポンペイの壁画展」と2001年江戸東京博物館での「世界遺産ポンペイ展」は見ていて、2000年前のタイムカプセルに残された絵画作品における人間性の異常に豊かなことには、舌を巻いたものである。また、前者の展覧会開催に合わせて芸術新潮が組んだポンペイ特集では、展覧会には出ていない、ちょっとここに書くのが憚られるようなアダルトな内容も紹介されていて、その奔放さにまたびっくり!! それから、近年のハリウッド映画「ポンペイ」はもちろん見たし、さらには、ポンペイのシーンが重要な役割を果たすロベルト・ロッセリーニ監督の「イタリア旅行」(当時の妻イングリッド・バーグマン主演) まで、もちろんリヴァイバルだが昔劇場で見たものだ。
最初の「建築と風景」コーナーでは、壁画の中に風景として建築を描きこんだような例が紹介されている。しょっぱなから度肝を抜かれることには、この「赤い建築を描いた壁面装飾」には、ちゃんと遠近法があるではないか!! 壁画としてだまし絵風にこのような神殿建築を描いた理由は、一体なんだったのだろう。これはヴェスヴィオ山周辺地域の別荘の壁画であったようである。なんらかの非日常性が表されているのだろうか。