2016年 09月 17日
特別展古代ギリシャ 時空を超えた旅 東京国立博物館
私はギリシャには一度だけ行ったことがあるのだが、出張で訪れたアテネで、午後の空いた時間を使ってパルテノン神殿や博物館を見ただけである。それでも、ヨーロッパ文明発祥の地をこの目で見ることができたことは、今に至るも私の人生において大きな糧となっている。ただ、何分にも古い文明の遺跡であるので、パルテノンにしても、歴史の風雪になんとか耐えて、執念でかろうじて立っているという痛々しさを感じざるを得なかった。その後ヨーロッパ文明の中心地となったローマの壮大な遺跡群に比べると、街の規模も遺跡の残存具合もかなり差があり、華麗なるローマが日本における京都だとすると、アテネは古い奈良に喩えられるのではないかとの印象を持ったものだ。だが、ギリシャは多くの島からなる国であり、それぞれの都市国家が覇を競った場所。ほんの数時間アテネを歩いただけでは、もちろんその奥深さは分かろうはずもない。今回のような大規模な展覧会で、ギリシャ各地の時代も様々な遺品を目にすることで、見えてくることがあるだろう。こんな風景を思い浮かべて会場を歩こう。
ともあれこの展覧会、さほど大きな作品は来ていないし、とにかくそれを見なければ一生悔やむような絶品がズラリと並んでいるかと言えばそうでもないのだが、それでも興味深い作品が多く、また体系だった分類で数々の展示品を並べており、ギリシャ文明のダイナミズムはよく理解できる。構成は以下の 8部。
1. 古代ギリシャ世界のはじまり
2. ミノス文明
3. ミュケナイ文明
4. 幾何学様式 ~ アルカイック時代
5. クラシック時代
6. 古代オリンピック
7. マケドニア王国
8. ヘレニズムとローマ
なにせ展示品数325の大展覧会である。細かくご紹介して行くときりがないし、それぞれのセクションについてまとめるのも相当に骨が折れる。よって、川沿いのラプソディ(つまり、狂詩曲ですな)のタイトルを言い訳として、思いつくまま、興味深い展示品を適宜採り上げて行きたいと思う。
最初にお目にかけたいのは、このお尻。
そして、展覧会ポスターの真ん中に据えられたこの絵は、サントリーニ島から出土した漁夫のフレスコ画。紀元前17世紀のもの。
と、ごく一部をご紹介するだけで大変な労力が必要な展覧会なのであるが、それだけ古代ギリシャ文明が奥深くまた幅広いということだろう。また現地を訪れる日を夢見て暮らして行こう。ま、とりあえず、朝からの観覧で空腹を覚えた私は、東京国立博物館内、東洋館の脇にある、ホテルオークラ経営のレストランで昼食を取ることとした。この展覧会期間中の特別メニューのひとつ、「ムサカセット」をオーダー。ムサカとは、ギリシャ風グラタンのようなもので、ズッキーニとかひき肉が入っていて、なかなかに美味でしたよ。