2016年 10月 03日
サントリーホール30周年記念 ガラ・コンサート ズービン・メータ/小澤征爾指揮 ウィーン・フィル 2016年10月2日 サントリーホール











【第一部】
モーツァルト: オペラ『フィガロの結婚』K492から 序曲 …(M)
シューベルト: 交響曲第7番 ロ短調 D759 「未完成」 …(O)
【第二部】
武満徹: ノスタルジア ―アンドレイ・タルコフスキーの追憶に― …(O)
ドビュッシー: 交響詩『海』-3つの交響的スケッチ …(M)
【第三部】
J. シュトラウスII: オペレッタ『ジプシー男爵』から 序曲
: ワルツ『南国のバラ』 op. 388
: アンネン・ポルカ op. 117
: ワルツ『春の声』 op. 410
ヘルメスベルガーII: ポルカ・シュネル『軽い足取り』
J. シュトラウスII: 『こうもり』から「チャールダーシュ」
: トリッチ・トラッチ・ポルカ op. 214
第三部 全曲 … (M)
(M)=指揮:ズービン・メータ (O)=指揮:小澤征爾
指揮を執るのは、80歳のズービン・メータと81歳の小澤征爾。大変に仲のよい二人であり、文字通り過去30年間、いやそれ以上の長きに亘り、世界のトップで活躍して来た指揮者たちだ。そうして演奏を務めるのはあのウィーン・フィルなのである。これは文字通り歴史的なイヴェントであり、この世界的なホールにふさわしい世界的なイヴェントでもある。今回はロレックスがスポンサーであったようだが、このホールの小ホールであるブルー・ローズにはドリンクコーナーが設けられ、写真パネルも展示されている。あ、ドリンクコーナーと言っても、タダでドリンクが配布されているわけではなく、ホールの通常メニューの通常料金でしたがね(笑)。



第1部はオーストリア古典派からロマン派の音楽。最初はメータ指揮の「フィガロの結婚」序曲。この指揮者らしい重心の低い音でよく鳴っていたが、やはりそこはウィーン・フィル。重めの音でも優美さに欠くことはないのだ。2曲目は小澤の指揮でシューベルトの「未完成」。いつもの椅子を指揮台に置き、ほとんどが座っての指揮であったが、第1楽章の大詰めや、第2楽章の中間部の盛り上がりではすっくと立ち上がり、往年と変わらぬ歌心に満ちた演奏を展開した。この曲は、このホールのオープニングシリーズの中で、カラヤンに代わって小澤がベルリン・フィルを振って演奏した曲。30年を経て、今回はウィーン・フィルとの演奏である。こんなことのできる日本人指揮者は、もう今後出てこないであろう。何も感傷的になる理由はないが、正直なところ、涙腺が結構危なかったことを白状しておこう。
第2部はフランス的感性が求められる曲。最初は今年没後20年の武満の曲である。小澤は世界に知られた武満演奏のスペシャリストであるが、この「ノスタルジア --- アンドレイ・タルコフスキーの追憶に」を指揮したことはあっただろうか。ちょっと記憶にない。ここでヴァイオリンを演奏したのは、まさに現代ヴァイオリン界の女王、アンネ・ゾフィー・ムターである。

http://www.imageforum.co.jp/tarkovsky/tkmt.html
そして、武満の感性に通じるフランス音楽の精華、ドビュッシーの「海」。メータのレパートリーとしては決して中核ではないと思うし、スコアを見ながらの指揮であったが、その演奏の美しいこと!!言葉であれこれ形容しても届かない。このコンビは後日ほかのオーケストラコンサートでもこの曲を演奏することになっている。行かれる方は是非楽しみにして欲しい。
そして最後の第3部は、ウィンナワルツである。メータはウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに何度となく登場しており、もともとウィーンで学んだ人だけに、実に大らかに楽しそうに、暗譜でこれらの曲を指揮する。とても先頃80歳になったとは思えない。世の中にこんなに楽しい音楽はない。ただ、その享楽が退廃と紙一重であるからこそ、限られた人生を楽しもうという気になるのである。ここでは、ワルツ「春の声」と、喜歌劇「こうもり」からのチャルダーシュを、イスラエル出身のソプラノ、ヘン・ライスが美しく歌い上げた。

アンコールの2曲目には再びムターが登場。小澤だけでなくメータとの協演も披露しようということか。演奏したのは、クライスラーのウィーン奇想曲。ムターのヴァイオリンはまさに万能。なんとも言えないウィーン情緒が現出した。
そして次に小澤とメータが2人で登場。指揮台には小澤のための椅子は用意されていない。そこで小澤は指揮台に腰掛ける。それを見たメータは、自分もその横に腰掛けて笑いを取る。そして、腰掛けたままのメータの指揮で始まったのは、ヨハン・シュトラウスのポルカ「雷鳴と電光」。「こうもり」の劇中で演奏されることもある華やかな曲で、先頃の小澤征爾音楽塾の演奏でもそうであった。2人の巨匠指揮者はそのうち立ち上がり、譲り合うような競い合うような感じでそれぞれ指揮をする。小澤は踊るようなひょうきんなふりを見せ、雷鳴を響かせるトロンボーンが演奏の度に立ち上がる際に、逐一合図を送っていた。そうして最後の和音とともに、ホールの左右の壁のかなり高いところから、爆竹の破裂音とともに、金色のリボンが大量に吹き出し、客席はもう大盛り上がりだ。日本にしては珍しく、すぐに総立ちのスタンディングオベーションが始まり、この記念すべき30周年ガラ・コンサートは終わりを告げたのであった。これは終演後の様子。床に散乱した金色のリボンを拾う人たちが沢山いた。


