2016年 11月 12日
鈴木其一 江戸琳派の旗手 サントリー美術館
そもそも家人から、「キイツの展覧会やってるよ」と聞いたとき、私の頭に浮かんだのは、25歳で世を去った英国ロマン派の夭折の詩人、ジョン・キーツ(1795-1821)であった。ロンドンではハムステッドにある彼の旧居に行ったこともある。彼の詩集も今手元にあるが、「エンディミオン」という作品の冒頭、"A thing of beauty is a joy for ever." (美しきものはとこしえに歓びである)に心震える思いである。だが、そんな私の妄想を打ち砕く家人の声。「琳派だよね」・・・むむむ、キーツはリンパ炎で亡くなったのだろうか・・・などとあらぬことを考えているうちに気付いたのだ。おお、これは琳派の鈴木其一(すずき きいつ)の展覧会だったのだ。
そのような私の思いをギャグだと思われる方には、以下の事実を申し上げよう。詩人キーツの生年は上記の通り1795年だが、江戸琳派を酒井抱一とともに代表する鈴木其一の生年は1796年(没年は幕末の1858年)。なんと、西洋のキーツと東洋のキイツは、1歳違いの、ほぼ同い年なのだ。事実は小説より奇なり。夭折の天才キーツの死後まもなく描かれた肖像画はこれだ。