2016年 11月 17日
ジェイソン・ボーン (ポール・グリーングラス監督 / 原題 : Jason Bourne)

さて、「ボーン・アイデンティティ」(2002)に始まるこのシリーズ、「ボーン・スプレマシー」(2004)、「ボーン・アルティメイタム」(2007)の3作に加え、監督・主演は異なるものの、同時進行する物語として「ボーン・レガシー」(2012)がある。私は最初の3作は見ているが、正直なところ、作品と作品の間に時間が空きすぎたきらいがあり、主人公ボーンが過去の記憶を失い苦悩する場面はもちろん覚えているものの、なんとか計画という固有名詞までは覚えておらず、シリーズ物の場合はそのような点がどうしてもネックになるケースがある。現代人はなかなか忙しく、実に多くのログインIDやパスワード(しかも業務に関係するものはそれを定期的に変えて行く)を、いちいち覚えていなくてはならない。それに加えて加齢という不可避の要因もあり、15年近くに亘って続く映画のシリーズの内容詳細までは、どうしても覚えていられないのが厳粛な事実である(笑)。なので、映画の冒頭に出てきてかなり暴れまくるニッキー・パーソンズという女性(演じるのはジュリア・スタイルズ)が、やけにボーンとなれなれしいと思ったら、後で調べてみて過去3作すべてに出演しているキャラクターであったと判明。でも本当に覚えていませんでした!!

というわけで、私の期待は、今回初登場するキャラクター、CIAのサイバー部門を束ねる若きエージェント、ヘザー・リーに集まるのである。


その点、彼女の上司を演じるトミー・リー・ジョーンズはさすがである。この人独特の人間味と、社会の中で責任を全うしようとするがゆえの冷酷性をよく表現していて、見事。


そんな役者陣の中で、相変わらず役のイメージをクリアに伝える演技をするのが、主役のマット・デイモンだ。彼も既に46歳。このシリーズの最初の頃よりは、この役を演じるための肉体的ハードルは上がっているのは確実だろう。実際インタビューの中で、久しぶりのボーン役について、お気に入りのキャラクターだから役作りは苦にはならないが、自分の年齢で鍛え上げた肉体を作るのは大変なことだったと白状している。だが、このようなシーンにおいて、肉体美そのものというよりは、全身から発する「気」のようなものでその人物の強さを表現できる俳優は、そうそういないと思う。

ただ、この時代になってくると、誰のために戦うのか、世界をどう変えられるのか、悪に立ち向かうにはいかなる決断が必要なのか・・・そういった事柄について、大勢で同じ価値観を共感できるような楽天性は、もう描けないのかもしれない。そういえば、上で触れたアリシア・ヴィキャンデル以外でも、ここに出ている俳優には、おしなべて笑顔がない。上のポスターによると「新章始動」とあるので、ここからまたジェイソン・ボーンの新たな戦いのシリーズが始まるのであろう。しょうがない、このボーンの真剣な表情に免じて、その戦いにお伴するとしよう。でも、またあまり間を空けての制作になると、今回の内容を忘れてしまいます!!早く次を撮って欲しい。


