2016年 11月 23日
禅 心をかたちに 東京国立博物館

まずこの展覧会であるが、臨済禅師没後(仏教用語では「遠諱」(おんき)というらしい)1150年、白隠禅師没後250年を記念して開かれるもの。これらの高僧がどんな人たちであるかについては以下で言及されるが、ではそもそも禅とは何なのであろうか。展覧会における主催者側の冒頭挨拶から引用してみよう。
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およそ千五百年前、達磨大師(だるまだいし)によってインドから中国へ伝えられたとされる禅宗は、唐代の中国において臨済禅師義玄(りんざいぜんじぎげん)によって広がり、我が国には鎌倉時代にもたらされました。禅は武家のみならず、天皇家や公家にまで広く支持され、日本の社会と文化に大きな影響を与えました。
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禅は、釈尊の坐禅による悟り、即ち仏心を言葉や文字によらず、心から心へと伝えていくことを宗旨としております。体得したものは文字言句では説明し尽くせないからです。
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ここで既に本質的なことが明らかになっている。つまり禅とは、ほとけの悟りの極意を、視覚聴覚で認知できる方法ではなく、心をもって伝えて行く仏教の一派であるということだ。それゆえ、この展覧会の副題は「心をかたちに」となっているのであろう。また、その禅の日本における広がりは、武家政権確立とともに始まり、広く社会に受け入れられて行ったということなのである。それから、もうひとつここで認識すべきなのは、この展覧会は、日本における3派の禅宗のうち2派、つまり臨済宗と黄檗宗(おうばくしゅう)の文化財の展示に限られ、もうひとつの宗派である曹洞宗(そうとうしゅう)は対象から外れていることだ。武家の支持を受けて鎌倉や京都で盛んとなった栄西を開祖とする臨済宗に対し、曹洞宗の開祖道元は、山奥に籠って修行することを是とした(福井の永平寺が総本山であることを想起すれば理解できるはず)。一方の黄檗宗は、江戸時代になって入ってきた中国風の禅で、全国規模で見ればマイナーな存在だ。従って、京都の華やかな禅寺の多くは臨済宗であり、この展覧会にはその臨済宗の寺院からの出展が多いと整理できる。ご覧頂ける通り、多くが高僧とその事績にまつわる遺品である。
では出品作を見て行こう。禅宗の高僧の名前には今日使われていない漢字も多く、ちゃんと漢字変換できない可能性もあるが、その点は何卒ご容赦を。まず最初は、禅の開祖である達磨を描いた作品。山梨県の向嶽寺の所蔵する国宝だ。

仏教の流派はよく、始祖からの正統的な継承を重要視するが、臨済禅はとりわけその要素が強く、六大祖師なる存在が崇敬された。これは最初のふたり、達磨と、その弟子である慧可(えか。日本では雪舟の「慧可断臂図」で知られる)である。京都の妙心寺所蔵になる鎌倉時代の作品で、日本における六大祖師像の現存する最古の例であり、重要文化財だ。







































