2017年 02月 11日
久坂部 羊著 : 芥川症


病院の中
他生門
耳
クモの意図
極楽変
バナナ粥
或利口の一生
もちろん、このブログをご覧になる方に、もとになった芥川の小説名を説明する必要はないと思うが、念のために書いておくと、「藪の中」「羅生門」「鼻」「蜘蛛の糸」「地獄変」「芋粥」「或阿呆の一生」である。そもそも日本の小説家の中で芥川ほど入りやすい人はいないのではないか。短編しか書いていないこともあり、また古典を換骨奪胎していることや、時に童話の形態を取っているものもあるゆえ、(今は知らないが私が子供の頃には) 教科書にもよく取り上げられていた。随分以前から私の手元には、ちくま文庫の芥川全集全 8巻があり、未だすべてに目を通したわけではないものの、彼の文学の鋭利な感覚には常に特別なものを感じている。また、昔私は田端に住んでいたので、いわゆる「田端文士村」の中心人物としての芥川には、長らく特別な思いがあるのである。

とは言いながら、全 7編、飽きることなくスムーズに読み切ることができたことも事実。芥川を必要以上に意識しなければ、それなりに楽しめる書物であると思う。

