2017年 05月 05日
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2017 井上道義指揮 新日本フィル (バンドネオン : 三浦一馬) 2017年 5月 4日 東京国際フォーラム ホールC
ピアソラ (マルコーニ編) : ピアソラ・セレクション (バンドネオン独奏 : 三浦一馬)
バカロフ : ミサ・タンゴ
なるほどそう来たか。ここでは、アルゼンチンを代表するダンスであるタンゴが題材となっている。これもなかなかの慧眼だし、何より楽しいではないか!! タンゴとなるともちろんバンドネオン。ここでは 1990年生まれと未だ若手ながら、世界的な活躍をしている三浦一馬がソリストとして登場する。
そしてメインの曲は、ルイス・バカロフ (1933 - ) のミサ・タンゴ。バカロフはアルゼンチン生まれのイタリアの作曲家で、映画音楽を多く手掛けている (代表作は、「フェリーニの『女の都』」や「イル・ポスティーノ」)。このミサ・タンゴという曲は、文字通りタンゴのスタイルを使ったミサ曲という変わり種なのである!! 演奏時間は約 35分。珍曲ではあるが、実は私は以前からこの曲を知っているのだ。というのも、チョン・ミョンフン指揮サンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団による CD を所持しているからなのである。私の場合、持ってはいても未だ聴いていない CD が山ほどあるが (苦笑)、これは大丈夫、数年前に中古で購入して聴きましたよ。もともと私はピアソラが大好きで、ブームになったクレーメルのシリーズやヨーヨー・マのアルバムや、自作自演までいろいろ録音を持っているが、その流れで、どこかでこの曲のことを知り、そしてこの録音の存在を知るに至ったものだ。この盤のひとつの特色は、テノール独唱をあのプラシド・ドミンゴが担当していること。彼らしい視野の広い活動ぶりである。
興味深かったのは、合唱団が全員暗譜で歌ったこと。相当な練習をしたのであろう。力強い箇所も繊細な箇所も、自信をもった歌いぶりだ。一方、独唱の二人のうちバリトンは、特に最初のうちは声量が充分でなく、何か落ち着かない様子であったが、体調でも悪かったのだろうか。その点メゾの池田は余裕の歌唱ぶりで、バリトン歌手に出番のあとの着席を促すなどしていた。井上指揮するオケはここでも大変に美しい演奏を聴かせており、そのメリハリは最高度である。新日本フィルの場合、最近特に演奏を楽しんでいる感じを覚えることが増えてきた。井上はかつてこのオケの音楽監督を務めており、私もその頃よくこのコンビを聴いたが、正直なところ、今の方があらゆる意味で進化していると思う。いわゆるミッチー節は、このような変化球でよく生かされるということは言えるかもしれないが、これからは、この手の珍品や現代音楽に加え、スタンダードなレパートリー、例えばブラームスなどやってみても面白いのではないだろうか。
などと勝手なことを唱えてはいるものの、とにかくこの 2回のコンサート (内容的には通常の 1回分だが)、大変充実した内容で、堪能した。実は明日、いやもう日が変わって今日になっているが、もう一度マエストロ井上のコンサートに行く予定としている。これも、今の彼なら大変期待できる曲目なので、楽しみなのである。私もちょっと記事のネタが溜まっていてちょっと時間が足りない状態であるものの、コンサートに関しては極力タイムリーに記事を書くというこのブログのポリシーに則って、がんばります!!