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アンドレア・バッティストーニ指揮 東京フィル 2017年 9月24日 めぐろパーシモンホール

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このブログでは既におなじみのイタリアの若き名指揮者、アンドレア・バッティストーニと、彼が首席指揮者を務める東京フィルハーモニー交響楽団 (通称「東フィル」) が、目黒にあるパーシモンホールで演奏会を開いた。このホールは目黒区の施設であり、収容人数 1,200名と小さめではあるが、ステージは充分大きく、オーケストラコンサートにも充分使用できるサイズである。
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パーシモンとは柿のことであり、柿ホールとはなんとも奇妙な名前に響くかもしれないが、それはこのホールが柿の木坂という坂に面していることによるもの。まあ、目黒区だからブラックアイホールでもよかったかもしれないが、うーん、それならパーシモンの方が絶対よいだろう (笑)。ともあれこのホールが開館 15周年を迎えたということで、このコンサートはそれを記念して開かれるもの。演奏曲目は以下の通り。
 ベートーヴェン : 劇音楽「エグモント」作品84 序曲
 ベートーヴェン : 交響曲第 9番ニ短調作品125「合唱付」

そう、日本では年末に盛んに演奏される第九である。この第九、確かに年末には驚くほど多くの回数が演奏されるものの、その祝祭的な特性から、何かのお祝い事などにおいても演奏されることがあり、今回はまさにそれに当たるわけである。もっとも、プログラムに掲載されている目黒区芸術文化振興財団の理事長の方のメッセージには、このホールでは開館以来 3年に一度、「めぐろで第九」という企画を実行していて、そこでは一般公募の合唱団が第九で日本の一流オケと共演し、今回もそのひとつだという。なるほど、上のポスターにも確かに「めぐろで第九」とある。私は初めてこのめぐろで第九を経験するが、さて一体どのようなことになったのか。
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バッティストーニと東フィルの第九は、既に 2015年12月19日のサントリーホールでの公演を聴いて、記事も書いた。そのときはこの若き指揮者が人生で初めて第九を指揮する機会であり、また東フィルとの関係は、現在の首席指揮者ではなく、未だ首席客演指揮者であった。その後共演をさらに重ねて来た手兵との今回の第九は楽しみである。そこで、このブログで第九を採り上げる際にいつも使用している「第九チェックシート」から始めよう。

・第九以外の演奏曲
  ベートーヴェン : 劇音楽「エグモント」作品84 序曲
・コントラバス本数
  6本
・ヴァイオリン対抗配置
  なし
・譜面使用の有無
  指揮者 : なし
  独唱者 : なし
  合唱団 : なし
・指揮棒の有無
  あり
・第 2楽章提示部の反復
  あり
・独唱者たちの入場
  第 2楽章と第 3楽章の間 (チューニング時)
・独唱者たちの位置
  合唱団の前 (オケの後ろ)
・第 3楽章と第 4楽章の間のアタッカ
  なし

前回のものと比べると、ほとんど違いはなく、違っているのは組み合わせの曲 (前回は同じベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第 3番) と、独唱者たちが譜面を見ていたかいないかくらいである。あと、今回は途中に休憩がなかったためか、第 2楽章と第 3楽章の間にチューニングが入ったのは確か前回と違っていたと思う。演奏の印象であるが、まず最初の「エグモント」は、結構ズシリという音で始まり、フレージングは丁寧で、終始内声部が充実した演奏であった。ただ、特に歌心が特殊に響くということもなく、ごくオーソドックスな演奏であったかと思う。そして第九であるが、全曲 1時間ほどの快速テンポで、前回をあまりよく覚えてはいないものの、もしかすると今回の方がさらに速かったのではないか。特に終楽章の冒頭すぐから始まる低弦 (先行楽章のテーマを否定し、歓喜のテーマに納得して、自ら歌い出すところまで) は、速いだけでなく音も短く切られていて、激しい突進力である。この部分に象徴されるように、決してしんねりむっつりした第九ではなく、強い表現力を表に出した、激しい演奏であったと思う。ただ、自分の書いた前回の記事を見ると、トランペットがイタリアの歌心を表したようなことを書いているが、今回はそのような印象はない。「エグモント」とともに、金管には僅かながら課題が残ったし、弦楽器の熱演にも関わらず、演奏全体の高揚感はもうひとつだったという気がする。ソリストたちは二期会の若手 (ソプラノ : 高橋絵理、メゾソプラノ : 富岡明子、テノール : 与儀巧、バリトン : 青山貴) で、安定した歌唱であったが、合唱 (めぐろ第九合唱団) は、第九のコンセプトをよく反映し、プロのような巧みさよりも、全員で音楽することの喜びを感じるタイプの歌唱であった。もちろんそれが第九の持ち味であり、そのような合唱が感動を呼ぶ要素は当然あって、今回も、かなりなご年配の方々を含めた合唱団の皆さんの歌う様子は、感動的であったと言える。この演奏会はそれだけでも聴いた価値があるというものだろう。合唱指揮は、泉智之という若い人であったが、プログラムには、バッティトーニ自身が合唱の指導をしているところの写真が載っている。今年の 5月27日というから、既に 4ヶ月も前で、彼の前回来日時 (このブログでも、その時の「春の祭典」をメインとした演奏会を紹介した) から既に準備していたということになる。
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私の印象では、今回は必ずしも瞠目の名演奏ということではなかったが、このコンビの目指すスタイルは聴き取ることができた。バッティストーニは、これからもまだまだこのオケとの関係を深めて行ってくれるであろうから、様々な曲を聴かせてほしいものである。若干 30歳の将来有望な指揮者が成長する舞台が東京となれば、こんな素晴らしいことはないし、定期的に第九を聴くこともできれば、それによって彼の成長を定点観測できることにもなると思う。

さて、私はこれから出張に出てしまうので、一週間ほどブログの更新はできません。何卒ご容赦を。

by yokohama7474 | 2017-09-24 20:15 | 音楽 (Live)