さて、現代指揮界では、エサ=ペッカ・サロネンを代表として、フィンランド人の指揮者たちの活躍が目立つ。このブログでも何度かそのようなことに触れてきたが、このインキネンは未だ 30代で、これからまだまだ活躍の場が広がって行くべき人であり、そのような俊英の指揮を日フィルで聴ける喜びは大きい。だがフィンランド指揮者というと、ひとつ課題がある。それは、何かというとフィンランドの国民的作曲家であるシベリウスの作品を演奏することを求められることである。もちろんシベリウスの音楽は素晴らしいし、フィンランド人がそれを素晴らしく演奏することは事実である。だが、指揮者たるもの、自国の音楽だけ指揮してよいと思うわけもなく、自らが率いるオケとは、様々なレパートリーを演奏して行くべきである。その意味でこのインキネンと日フィルの関係は面白くて、首席客演指揮者時代からシベリウスを集中的に採り上げ、主要作品は既に演奏し終わってしまった。さてそうなるとインキネンとしては、「まず、求められる期待には応えたでしょう。あとは自分の好きなことをやりますよ」と言いたくもなるであろうし、実際最近は、ワーグナーの楽劇を含む後期ロマン派を集中して演奏している。そして、ブルックナーのシリーズもその一環であろう。パーヴォ・ヤルヴィと NHK 響、ジョナサン・ノットと東京響といったコンビもブルックナーをシリーズで手掛けているようだが、インキネンと日フィルには彼らなりの個性を聴いてみたいものだ。