デュトワは若い頃にスイス出身の大先輩指揮者であるエルネスト・アンセルメに学んでいるが、このアンセルメは、言うまでもなくストラヴィンスキーの盟友であった人。だからデュトワのストラヴィンスキーは、作曲者直伝の要素があるのである。私は今回の演奏会を聴きながら、改めてデュトワが N 響に対して果たした大きな役割を思っていた。彼は 1996年に N 響の常任指揮者に就任し、1998年には音楽監督となった。それまでの N 響はドイツ系の偉大な指揮者たちが主として指揮台に立っていたことから、デュトワの就任は冒険かとも思われたが、それから 20年以上を経て、N 響の演奏能力はより一層向上しているわけで、やはりデュトワがこのオケに対して果たした功績には、絶大なものがあると思う。
そのデュトワが指揮する最初の曲目は、ストラヴィンスキーの若き日の作品、幻想的スケルツォである。これは作曲者が未だロシアでリムスキー = コルサコフに師事していた頃の作品であり、私としてはよく知っている曲だと思っていたが、恥ずかしながら今回のコンサートのプログラムで知ったことには、もともとはベルギー象徴派の作家、モーリス・メーテルリンクの「蜜蜂の生活」に基づき、女王蜂や働き蜂の生活を描いたものであったらしい。そう思って聴くとなるほどと思うこともあるが、ストラヴィンスキーにはやはり、物語性よりも、すっきりとした明確な輪郭線が欲しい。作曲者自身が後年この曲を、純粋な交響的音楽として書いたと主張している。デュトワと N 響は、その意味で大変素晴らしい演奏を成し遂げたと思う。