川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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メモ帳

プラネタリウム (レベッカ・ズロトヴスキ監督 / 原題 : Planetarium)

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この映画は昨年上映されていたものであるが、小劇場での公開とはいえ、あまり評判がよくなかったのか、気がつくと上映が終了してしまっていた。だが、これはやはり映画好きなら見逃してはいけないものだろう。なにせ主演がナタリー・ポートマン。共演が、これは私も知らない女優だったが、名前から明らかなジョニー・デップの娘、リリー=ローズ・デップ。2016年にこの作品がカンヌ映画祭でプレミア上映されたときの女優たちのツー・ショットと、デップ親子の写真がこちら。ちなみにリリー=ローズの母は、昔アイドル歌手であったフランス人のヴァネッサ・パラディなのである。
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もちろん私がこの映画を見たいと思ったのは、彼女らだけが理由ではない。もしこの 2人が感動のラヴストーリーで共演していたら、私はきっとパスしたはず。この映画はそうではなく、1930年代のパリを舞台に、死者の魂を呼び出す降霊術を行う姉妹が主人公であって、そこにはオカルトの気配が漂う。このように超自然現象が題材となると、俄然私の興味は動き出すのである。だがちょっと待て。冒頭に掲げたチラシは一体なんだ。この姉妹役の女優たちが、泡だらけのバスタブで何やらタバコを吸っている場面。これはどうみてもオカルトの要素はない。私は思うのであるが、この映画があまりヒットしなかったとすると、訴える観客層を絞り切れなかったからではないか。感動ストーリー派か、心霊オカルト派か。どちらかに、いやこの場合は明確に、後者に絞った方がよかったのではないかと思うのである。

さて、そのように上映終了してしまった映画を、私はどのようにして見ることができたのか。それはこうである。あるとき都内のアート系小劇場で何かの映画を見たときに、既に上映終了してしまったはずのこの映画のチラシを発見。取り上げてチェックしたところ、なぜか 1/8 (月・祝) の上映時刻だけが記載されている。上映している劇場の名前は、ユジク阿佐ヶ谷。初めて聞く名前であり、ユジクの意味が分からない。阿佐ヶ谷は我が家から出掛けるにはかなり不便なところで、以前勅使川原三郎のダンスを見に行くために多大な時間を要して、閉口したことがある。そうそう、阿佐ヶ谷には確かラピュタの名を冠した映画館もあるはず。何か関係があるのだろうか。と思って今調べてみたら、なんとこの「ユジク」とは、ユーリ・ノルシュテインのアニメ「霧の中のハリネズミ」の主人公ヨージックから取ったとのこと。
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あー、なんたること!! そうだったのか。このブログで書いたことは未だないかもしれないが、ノルシュテインの代表作「話の話」は、私にとって生涯ベスト 10に入るほど大好きな映画。なのでこの「霧の中のハリネズミ」も当然見たことがあるが、不覚にも主人公の名前までは覚えていなかった。なんでもこの劇場の支配人はノルシュテインその人と交流があるらしい。うーん、道理で言ってみるとなかなかに落ち着いた、いい小劇場であるわけだ。壁には黒板があって、やはり今この劇場で上映中のスウェーデン映画「サーミの血」を題材にしたチョーク画が描かれているが、これは水沢そらというアーティストの作品。壁にはまた彼の小品がいくつかかかっているが、これは展示即売なのである。なかなか面白いとは思うが、ただこの作風は、ヘンリー・ダーガーを知っている人にはその模倣ぶりが一目瞭然だ。ともあれ、この 48席の劇場にかかっている作品たちは、なかなか味わい深く、映画ファンとしてはかなり刺激を受ける場所である。因みにこの「プラネタリウム」も「サーミの血」も、今週金曜日、1/19 まで上映しているので、まだ間に合いますよ。

とこのように、新たな劇場との出会いによって、また東京における文化との接点が増えたことは嬉しいのだが、だが肝心のこの映画、残念ながらさっぱり楽しむことができなかった。ひとつ確実なことは、ナタリー・ポートマンなしにこの映画はできなかっただろうということ。降霊術を実際に行う妹をうまく押し立てながら、フランスで映画の道に深入りして行く姉を、ほぼ出ずっぱりで演じていて、セリフのかなりの部分をフランス語でこなす点を含め、その演技自体は称賛に値する。因みに彼女はもともとフランス語ができたわけではなく、パリに移住して、この映画のために勉強したとのことだ。とはいえ、別にこの映画のためにパリに移住したのではなく、旦那 (「ブラック・スワン」の振付師) がフランス人であるからであるようだ。まぁいずれにせよ、これはある意味でナタリー・ポートマンの映画と言える。実年齢では親子に近いほども年の離れたリリー=ローズ・デップ (ナタリー 36歳、リリー=ローズ 18歳) と、姉妹と言っても違和感ありませんな。
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だがこの映画、どういうわけか大変に流れが悪い。ストーリーには先を読ませない意外性がある割には、なるほどと思う瞬間が極めて少なく、逆に、「なんなんだよこのオッサンは。何がしたくて姉妹を厚遇するんだよ」「姉妹の間の関係は本当はどうなんだよ」「ほかの登場人物たちが、男も女も印象薄すぎ」「うぇー、この展開には必然性ないよ」「この設定はちょっと陳腐ではないかい」というハテナが、見ているうちに次から次へと沸いてくる。そして私の根本的な疑問は、なぜこの映画は 1930年代を舞台にして、しかも降霊術を題材にする必要があったのか、ということである。本当に理解に苦しむ。まあこの際、「リリー=ローズ・デップの右の眉が切れているのはなぜなんだろう」とか、「うわー、この表情、お父さんにそっくり!!」という感想は、それほど重要ではないと言ってしまおう。でも、見ているときにそういったことが気になるという時点で、既にして映画としての流れに課題があるということも言えるだろう。
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それから、音楽にもちょっと気になる箇所が。ナタリー・ポートマン演じるローラが思いがけず映画の道に入って苦労し、そして何か達成したときに (それが何だったのか、今思い出せないのだが。笑)、明らかにストラヴィンスキーの「火の鳥」の中の「子守歌」の模倣が鳴り響く。この曲は、昨年ゲルギエフとマリインスキー歌劇場管の演奏会のアンコールでも演奏され、それから、このブログの記事では触れるのを忘れたが、アレハンドロ・ホドロフスキーの「エンドレス・ポエトリー」でも数ヶ所で使われていた。もちろん名曲であるからして、映画で使われるのは理解できるが、この映画では、なぜにその響きを模倣して、しかも原曲のクオリティに及ばない曲をつけるのか。映画において音楽が本来持ちうる素晴らしい力を思うと、この映画における音楽のレヴェルは、大変残念だとしか言いようがない。因みに題名の「プラネタリウム」は、恐らくはラストシーンから来ていて、人生は所詮、室内で星を眺めるようなこと、とでもいう意味なのかと思う。だが、この題名と映画全体のトーンには、少し齟齬があるのではないだろうか。

監督はフランス人女性のレベッカ・ズロトヴスキ。私は初めて聞く名前だが、レア・セドゥ (例の「007 スペクター」でのボンドガールである) を主演に起用した「美しき棘」というデビュー作 (2010年) で注目を集めたという。
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もちろん、この 1作だけで監督の力量を全面否定することは避けたいと思うし、ましてや、あのユーリ・ノルシュテインに因む名前の劇場で鑑賞した映画であるから、ネガティヴな感想はここらで一旦胸にしまい込んで、この監督が次にまたよい作品を撮ることと、ユジク阿佐ヶ谷が今後も意欲的な上映を続けて行ってくれることを、期待したいと思います。

by yokohama7474 | 2018-01-16 23:34 | 映画 | Comments(0)
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