川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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メモ帳

オリエント急行殺人事件 (ケネス・ブラナー監督 / 原題 : Murder on the Orient Express)

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自分で言うのもちょっと気が引けるのであるが、私は結構悪運の強い方で、トラブルからラッキーなかたちで逃れることが時々ある。もちろん、それほど大げさなことではなく、車で出かけたときに雨が降っても、車から降りるときにはやんでいるとか、その程度のことであるが、それでも、地震や、あるときはちょっとした事故などから逃れられたときもあり、果たして祖先に感謝すればよいのか、はたまた自身の普段の行いのよさを誇りにすべきなのか (まぁ、後者はないでしょうな。笑)。そんなひとつの事例が、今週東京を襲った大雪である。私はたまたま今週は出張で日本にいなかったので、その間に東京で大雪が降ったことはネットニュースでしか見ておらず、帰ってきてから自宅の周りに残る雪を見て、これは大変だったんだろうなと実感している次第。

さて、冒頭にそんなことを書いたのは、この映画においても雪が大いに関係しているからである。舞台は 1930年代、トルコからフランスに向かう長距離列車、オリエント急行であるが、殺人発生の直後に、こんな雪の中で列車は立ち往生。この設定は、なかなかによくできている。つまり、列車が大雪で足止めを食ったことによって、複数の人間をその中に閉じ込める密室ができたことになり、犯人は必ずその中にいることになるわけで、しかもどこにも逃げるわけにはいかない。これはかなり極端な状況である。
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もちろん原作は英国のミステリーの女王、アガサ・クリスティで、この作品は既に 1974年にも映画化されている。実のところ、その映画が有名なせいか、この作品の原作を読んでいる人が私の周りにも結構いることが分かったのだが、恥ずかしながら私は、その映画も子供の頃少しテレビで見た記憶しかなく、原作も読んでいなかった。但し、クリスティの作品なら、名探偵エルキュール・ポワロが初めて登場する処女作「アクロイド殺し」や「ABC 殺人事件」、さらには「そして誰もいなくなった」や、ロンドンでの舞台上演の超ロングランで知られる「ねずみとり」、それからミス・マープルものなど、10冊ほどはこれまで読んでいたのだが、どういうわけかこの作品はそこから漏れていたということになる。そこで今回は、映画を見る前に原作を読んでみた。なるほどこのトリックは印象に残る。だが、一度ネタが分かってしまえば、新たな映画を見る価値が果たしてあるのだろうかということにもなる。その点、この作品の場合の期待は、その綺羅星のごとき出演者たちもさることながら、主演のポワロ役も務めているケネス・ブラナーが監督であるという点に、大きくかかってくることになるだろう。これが、そのブラナー演じるポワロ。
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この映画の予告編では、「全員名優」という言葉で検索せよと宣伝していたが、1ダースに及ぶ容疑者たち、つまりは列車の乗客たちであるが、この顔ぶれはすごい。順不同で挙げても、ジュディ・デンチ、デレク・ジャコビ、ウィレム・デフォー、ミシェル・ファイファー、ペネロペ・クロス、そして現在進行中のスターウォーズ・シリーズで主役レイを演じているデイジー・リドリーといった具合。これはその容疑者たちに車掌役を合わせた 13人。
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そうそう、それから、容疑者以外にも名優がいて、それはほかならぬジョニー・デップ。彼は容疑者ではなく被害者なので、自然と出演時間は少なくなってしまっているが、その存在感はさすがである。
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とは言っても、いくらなんでも全員が名優かと言われれば、そうでもない気がするが、まぁそれはそれとして (内容を知っている人にはしらじらしい物言いであることは、ここでは触れないことにして)、原作を読んでから映画を見た感想は、やはり少々物足りない。もちろん、一般的に小説の映画化の場合には、原作小説の方が映画よりも面白いということが通常であって、ここでもそのようなことになっていると言ってもよいだろう。登場人物の数を少し減らしていることや、一部人物の役柄を変更していること、いくつかの事件を飛ばしていること、それから、原作にはないアクションシーンを足していることなどは、別に映画だけ見て気にしなければよい話。だがそれらの点を除いても、この映画が見る人を熱狂させるかと言えば、ちょっと違うような気がして仕方がないのである。携帯電話もインターネットもない 1930年代、何かの事件についての情報を集めるのはなかなかに骨が折れ、また時間のかかること。そして、ある人の素性を解き明かすことも、現代では考えられないほど難しいことであったはず。それゆえ、この事件におけるポワロの独断的な推理が思わぬ真相を明らかにすることに、当時の人たちは感嘆したものであろう。だが残念ながら、もし現代において、ここでのポワロのように、飛躍した推理、と言って悪ければ、大胆な仮説によって捜査を進めるなら、必ずやどこかで行き当ってしまうだろう。つまりここでのトリックには、完全に外の世界での出来事が前提として必要であり、それなしには物語が成立しない。そして、あらゆる世界の出来事を瞬時にして知ってしまう我々としては、ここでの種明かしは、つまりは、あまりに少ない手がかりに基いてポワロが被害者の正体を見抜くことが、荒唐無稽に見えてしまうのである。その推理なくしては物語は成立しない。つまりはこの荒唐無稽な推理が物語の根幹にかかわっているわけなので、さすがのケネス・ブラナーもその設定を変えることはできなかった。まさかこれを現代に置き換えるというわけにもいかなかったろうし、せめて CG で現代風の映像を作るのが精一杯であったのかもしれない。そう考えると、並み居る名優たちも、やはりちょっともったいない。時代がかった演技の中で、窮屈に見える人もいた。12人の容疑者役の中で、私が最もよいと思ったのは、デイジー・リドリーである。ここでの彼女は、「スター・ウォーズ」での役と異なり、両大戦間のモダンな服装をして、喋る言葉も明確な英国アクセント。調べてみると彼女はロンドン生まれである。未だ 25歳という若さであるが、この映画で見ると、昔の女優のような気品を感じることができ、今後が楽しみなのである。
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ケネス・ブラナーの演出には特に奇をてらった部分はないのだが、上記の通り、ちょっとここでは彼の才気が発揮できることができなかったように思われてならない。ここで彼は、フランス語を母国語とするベルギー人のエルキュール・ポワロを演じて、英国人のくせに非常にリアルなフランス語アクセントの英語を披露するのみならず、かなり多くの場面でフランス語そのもの、そしてまたあるシーンではドイツ語まで喋っていて、その点には多才さの片鱗を見せているが、どうせ現代から遠く隔たった 1930年代のスタイルに則るのであれば、普通の英語で演じてもよかったような気がするのである。言ってみればそのようなことは映画の中の細部。だが細部が気になる映画とは、私の持論によれば、流れの悪い映画なのである。実はこの作品、ラストシーンでシリーズ化が示唆されており、そのことは既にこの作品の Wiki にも記されているので、ご興味おありの向きは、調べてみられてはいかが。次回作品でも同じようなポワロ像になるのだろうか。

さて最後に映画を離れて、この映画のヒントになった事件に少し触れてみたい。それは、あの空の英雄、チャールズ・リンドバーグに関するものである。
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単独で大西洋横断に成功した彼の後半生は必ずしも幸福なものでなく、特に戦争との関わりは、先に NHK で放送された「新・映像の世紀」のシリーズの中でも紹介されていたが、何とも悲壮感の漂うものであった。だが彼にとっての最大の悲劇は、1932年に息子が誘拐され、死体で発見されたことであった。実はアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」は、そのリンドバーグの息子の誘拐事件と、実際にオリエント急行が雪で立ち往生したことを結び付けて、1934年に書かれたものであるらしい。だが、このリンドバーグの息子の誘拐・殺人については、今日では諸説あるのである。陰謀論好きの私は、何冊かの本でそのような「諸説」の概要を読んだことがあって、その中には大きな説得力を感じるものもあるが、犯人として捕まった男が死刑にまでなっていることを思うと、冤罪説を興味本位で語るのは気がひける。今日ではネット検索でいくらでも情報が手に入るので、これもご興味おありの向きは、調べてみられることをお薦めしよう。そして、私自身も今回調べてみて知ったリンドバーグの言葉がある。それは、ニューヨークから大西洋横断に向けて旅立つ前のもの。

QUOTE
ヨーロッパ全航程に亘る完全無欠な好天候の確報なんか待っていられるもんか。今ことチャンスだ。よし、明け方に飛び出そう!
UNQUOTE

なるほど彼は、悪天候のリスクを取ってあの大冒険に出たわけである。そうするとこの映画でも、雪という悪天候を恐れていては何もできないことを知って、犯人 (日本語は単数と複数が明確でないのでこの言葉を使うが) は犯行を決意したものであろう。そう、春になるのを待っていては、この犯行のチャンスは絶対に巡って来なかったわけである。そうすると本当にこの作品には、リンドバーグの冒険者スピリッツが活きていることになる。来週東京でまた雪が降るときも、そのスピリッツ精神を標榜することとしよう。それを逃してはつかめないチャンスが、もしかすると屋外に待っているかもしれないではないか!! ただ、現実世界では、足元にくれぐれも気をつけたいものであります (笑)。
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by yokohama7474 | 2018-01-27 00:59 | 映画 | Comments(4)
Commented at 2018-01-28 18:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yokohama7474 at 2018-01-28 22:48
> カギコメさん
コメントありがとうございます。レンヌ=ル=シャトーですか。行ってみたいものですが、未だ行ったことはありません。ただ、もちろん「ダ・ヴィンチ・コード」の種本と言われる「レンヌ=ル=シャトーの謎」はじっくり読みましたですよ。このブログの過去の記事をお探しということですが、それでは是非、画面の右側にあるブログ内検索の機能をお使い下さい。「ターナー」と打って頂ければ、私が過去にターナーに言及した記事がすべて出てきます。実際私自身も、最近はこの機能に大変お世話になっている次第です (笑)。
Commented at 2018-01-30 00:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yokohama7474 at 2018-01-30 21:58
> カギコメさん
いえいえ、ただ気軽に書いているブログですので、そんな買いかぶって頂かず、また覗いてみて下さい。
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