川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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メモ帳

小林研一郎指揮 フィルハーモニックアンサンブル管弦楽団 2018年 2月12日 サントリーホール

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日本を代表する指揮者のひとり、小林研一郎 (通称「コバケン」) は、77歳となった今日でも、非常に盛んな活動を行っていることは驚くばかり。ポピュラーな名曲を中心に、日フィル、東フィル、読響などと頻繁に共演しているのである。もちろんそれ以外にも、N 響、東響、都響、新日本フィルとも近年共演しているから、楽団による多少の頻度の違いはあれど、実に東京のメジャー 7楽団のすべての指揮台に立っているわけだ。日本に指揮者は数々あれど、そんなことができるのは唯一、彼だけではないか。かくいう私自身も、彼の音楽は大変好きで、このブログでも過去何度か彼のコンサートを採り上げてきたものである。だがこのところ、ある場合には出張で都合がつかなかったり、ある場合には思い立ってチケットを調べると売り切れだったりして、彼のコンサートに接する機会がなく、残念な思いをしていた。そんなところにこの演奏会である。実はこの演奏会、私は結構最近までその存在を認識していなかった。というのも、よくコンサート会場で配られる大量のチラシにもこのコンサートのものは含まれていなかったし、また、それ以外でも宣伝を見かけることはなかったからだ。だが何かのコンサートに出掛けた際、たまたまサントリーホールの 2階に貼ってある今後の演奏会のチラシの中にこれがあるのが目が留まったのであった。「フィルハーモニックアンサンブル管弦楽団」という聞き慣れない名称と、S 席 3,000円という価格設定から、きっとアマチュア・オケだろうと察しはついたが、知らないオケこそ聴いてみたい。しかも曲目が極めて意欲的だ。
 ベートーヴェン : 交響曲第 7番イ長調作品92
 ストラヴィンスキー : バレエ音楽「春の祭典」
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今日はちょうど 3連休の 3日目。ほかに予定もなく、朝のうちはピョンチャン・オリンピックを見るともなしに見て、ふらりと気楽に美術館などを覗いてから会場のサントリーホールに到着し、配布されたプログラムを見て知ったことには、このオケは 1976年に立教大学交響楽団 OB によって結成されたというから、既に 40年以上の歴史を持つのである。1979年に初の主催公演を開き、それ以来、一般の社会人オーケストラとして活動を展開してきているとのこと。今回の演奏会は 63回目のもの (特別公演や海外公演を除く) で、プログラムには過去の演奏会の内容がすべて掲載されていて興味深い。アマチュア・オケであるゆえ、年に数回だけの演奏会活動であるが、何度も海外公演を行っているのが注意を引く。しかも、ニューヨークのカーネギーホールや、ウィーンの楽友協会大ホール、ベルリン・フィルハーモニーホール、アムステルダムのコンセルトヘボウ、プラハのドヴォルザークホールなど、欧米の超一流ホールで演奏しているというから、驚くではないか。指揮者としては、故・小松一彦、大友直人、矢崎彦太郎らが頻繁に指揮台に立っているほか、このコバケンは、実は首席客演指揮者の地位にあり、海外公演を含めて何度も指揮している。これは 2009年にコバケンがマーラーの「復活」を指揮した演奏会の写真。音楽ファンなら誰でもすぐに判る通り、これは世界有数の名ホール、アムステルダム・コンセルトヘボウだ。
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会場はほぼ満席の盛況だが、一目見渡して気づくのは、外国人の姿がちらほら見えることだ。プログラムには、「今回も、2011年 3月の震災の影響で故郷を離れて東京周辺にお住まいの方々と共に、母国を離れて海外から留学されている皆様を招待させていただいております」とあって、いかなるルートによってか分からないが、特別招待を受けた人たちが、それなりにおられたようである。これは素晴らしいことではないか。プログラムを見る限り、企業のスポンサーがあるようには見えないので、このような意義深い活動を続けるスタッフや楽員の方々の苦労が偲ばれる。ステージに並んだメンバーを見渡すと、多分設立初期からのメンバーかとお見受けするかなりのベテランも数名おられたが、平均年齢は結構若く、男女のバランスもよいように思われた。コンサートマスターを、もと N 響の永峰高志が務めるほか、いくつかのパートでは、プロの指導を受けているようだ。ベートーヴェン 7番と「春の祭典」という、大変なリズムとエネルギーを必要とする 2曲が、コバケンのタクトの下でどう鳴り響くのか、楽しみであった。これがコンマスの永峰さん。
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最初のベートーヴェン 7番は、コントラバス 8本、ヴァイオリンの左右対抗配置なしで、管楽器は、木管がフルート 4本でほかは 3本ずつ、金管はトランペット 4、ホルン 6という、今どき珍しい大編成で、指揮者も暗譜での指揮。冒頭にまずドォーンと鳴り出す和音からして、迫力充分のコバケン風だ。序奏で聴かれるオーボエ、そしてフルートは、昨今の東京のプロのオケのレヴェルを思うと、緊密度においてさすがに若干の分の悪さを感じないでもなかったが、音楽が進むにつれ、指揮者の思い入れをがっしり受け止めての演奏であることが伝わってきて、期待が高まる。遅めのテンポでえぐりを効かせた誠実なコバケンの指揮ぶりには、好き嫌いを超えた説得力があるのはいつものこと。両端楽章での提示部の反復がない点も、昨今の原点主義の傾向からすると異例であるとも言えるが、それでも、鳴っている音の流れに説得力があればよいと思う。コバケンの堂々たる芸術を聴くことができるという体験は、プロのオケであろうとアマチュアのオケであろうと、同様に感動的なのである。その点においてやはりこの演奏、最初から最後まで素直に楽しめるものであったのがよい。第 3楽章スケルツォの中間部での粘りなどは、オケにとって決して楽ではなかったと思うし、余裕しゃくしゃくという感じでもなかったが、指揮者を信じての渾身の演奏は素晴らしいもので、その充実感がそのまま、終楽章の熱狂につながったのである。

一方、後半の「春の祭典」となると、これは技術面において、ただ気合だけで乗り越えられるような曲ではないので、オケの負担もさぞやと思うのだが、ここではきっちりスコアを見ながら指揮をするコバケンの要求に対して、オケの反応は非常に集中力の高いものであり、曲の持つ異様な迫力の表現という点では、これもまた記憶に残る名演奏となった。もちろん、世界最高クラスのオケによるこの曲の録音や実演の数々を楽しんで来た身としては、今回の演奏には、時折音質や楽器間のバランスの点で課題を認識することにもなったが、上にも書いた通り、音楽の面白さは、指揮者との共同作業の中でどこまで説得力を持って演奏できるかによっている。それゆえ、スリルに満ちたこの曲のスリルに満ちた演奏は、充分に音楽の面白さを教えてくれるものであったのだ。さらに言うならば、ルーティーンのないアマチュア・オケならではの真剣勝負は、何か特別なものを聴く人たちに届けてくれるものなのだ、と思い知ったのである。ティンパニのメインパートは若い女性が担っており、非常に切れ味鋭い演奏で感心したが、もうひとりのティンパニは、もしかすると、都響の久一忠之さんではなかったか。メンバー表にもその名前がなく、ネットで検索してもなんらの情報もないが、もし人違いだとすると、大変に似た人も、しかも同じティンパニ奏者でいるものだと不思議になってくる (笑)。ともあれ、全員一丸となっての熱演、お疲れ様でした。

いつものようにコバケンは、終演後に客席に向かって話しかけた。私の席はステージ奥に近い方だったので、はっきりとは聞こえなかったのだが、どうやら、西洋音楽史に燦然と輝くこの 2曲の演奏を、聴衆の後押しもあって立派に演奏し終えた。特に「春の祭典」は、昔はリハーサルに何日もかかる難曲であり、自分もなかなかスケジュールがタイトで、本番前のリハーサルをそう何度もできなかったが、このオケはその難曲を易々とこなしていた。どうぞフィルハーモニックアンサンブル管弦楽団をこれからもよろしく、という内容であった。一聴衆の感想として申し上げると、オケの頑張りはもちろん素晴らしいことだが、一回の演奏会の流れの多くは、指揮者に負っているものと思う。それゆえ、コバケンがこのように元気で指揮活動を続けてくれる限り、東京ではポピュラー名曲が常に熱いヴォルテージで鳴り響き、それは、この街のクラシック音楽ファンの裾野を広げるものであると思うのである。会場では、このコンビが 2012年にプラハで演奏したチャイコフスキー 5番 (コバケン得意のレパートリーだ) をメインとした演奏会のライヴ録音が売られていたので、購入した。
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この CD も楽しみであるが、実はこのオケ、矢崎彦太郎の指揮で、今年の 9月にまたプラハで演奏するらしい。前回がルドルフィヌムの中にあるドヴォルザークホールでの演奏であったのに対し、今回は市民会館の中にあるスメタナホールでの演奏であるようだ。アマチュアだからこそ表現できる音楽の素晴らしさを、音楽好きのプラハの人たちと、是非分かち合って欲しいものだと思います。

by yokohama7474 | 2018-02-12 21:37 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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