川沿いのラプソディ


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謙=デイヴィッド・マズア指揮 読売日本交響楽団 (ヴァイオリン : アラベラ・美歩・シュタインバッハー) 2018年 3月10日 東京芸術劇場

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今回の読売日本交響楽団 (通称「読響」) の演奏会の出演者には、大変興味深い共通点がある。それは、指揮者、ソリストともドイツ人の父と日本人の母の間に生まれたということである。ここで面白い比較の対象は、先月東京都交響楽団 (通称「都響」) の指揮台に登場した準・メルクルである。彼もまた、ドイツ人の父と日本人の母の間に生まれた人。だがメルクルは 1959年生まれであるのに対し、今回の指揮者マズアは 1977年生まれ。ソリスト、シュタインバッハーは 1981年生まれと、一回り以上下である。だが彼らはそれぞれに国際的な活躍をしている音楽家であり、言ってみれば半分日本人の音楽家の世界レヴェルの演奏を、ここ東京で期待できることになる。まず指揮者のマズアは、もうその名前から明らかなように、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ロンドン・フィル、フランス国立管、そしてあのニューヨーク・フィルといった名だたるオケを率い、この読響においても名誉指揮者であった、あのクルト・マズアの息子なのである。このブログでは既に、昨年 10月 1日付の記事で、夏目漱石の小説を原作とする長田原作曲のオペラ「夢十夜」の指揮をご紹介したことがある。だがそこでは正直なところ、指揮者の力量が分かるほどの情報もなかったというのが正直なところ。それにひきかえ今回は、堂々たるドイツ・ロマン派プログラム。以下のようなものだ。
 ウェーバー : 歌劇「オイリアンテ」序曲
 メンデルスゾーン : ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64 (ヴァイオリン : アラベラ・美歩・シュタインバッハー)
 シューマン : 交響曲第 3番変ホ長調作品97「ライン」

なるほどこの、序曲、協奏曲、交響曲という伝統的な構成によるプログラムには、最近接したような気がする。そう、それは、上で名前を挙げた準・メルクルが都響にデビューした今年 2月10日、つまりこの演奏会よりもちょうど 1ヶ月前のコンサートである。ともに東京で充実の活動を繰り広げる読響と都響が、ともに日本とドイツのハイブリッドな血を持つ指揮者のもとで繰り広げたこれらの演奏会、しかもメインはともに同じシューマンの「ライン」というのも、たまたまの偶然なのか、どちらかの楽団がわざとぶつけて来たのか分からないが、聴き手としては興味津々である。これが今回の指揮者、今年 41歳になるマズア。読響との共演は今回が二度目で、それ以外の日本のオケでは、日本フィルと広島響と共演しているらしい。
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さて、以前も書いたことだが、私は彼の父クルト・マズアに関しては、それほど熱狂的な思いは持っていない。読響以外にも、ニューヨーク・フィルとの演奏を、東京及び現地ニューヨークで聴き、また、ロンドン・フィルとの演奏もロンドンで聴いたことがあるが、残念ながらそのもっさりした感じには、心から感動したことはないのが正直なところ (FM を含む放送では、手兵のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管とかボストン響との名演を聴いた記憶はある)。だが今回その指揮ぶりに接した息子、謙=デイヴィッドは、若々しくニュアンス溢れる音楽を奏でて、本当に素晴らしいと思ったのである。考えてみれば、父親が高名な指揮者だったからといって、その息子の奏でる音楽には父とは全く異なる要素があることは、むしろ当然のことなのである。最初の「オイリアンテ」序曲は、いかにもドイツロマン派の香り漂う名曲であるが、冒頭でオケの疾走感を全開にしておいて、ヴァイオリンが絶妙の呼吸で歌う次の主題も実に見事。このメリハリには当然オケの高い技量も大きく貢献しているが、マズアの瑞々しい感性がそれを主導したことであろう。そして 2曲目に大人気曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏したのは、今や現代を代表する女流ヴァイオリストのひとりであるアラベラ・美歩・シュタンバッハーである。
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彼女は録音も数多く、世界一流のオケや指揮者と共演しているが、今回調べて分かったことには、メジャーなコンクールの優勝歴はなさそうである。その点からも、幅広い聴衆から愛されていることが分かる。今回のメンデルスゾーンは、大変オーソドックスな演奏であったと思うが、その音色の美しさには魅了された。だがその一方で、終楽章のクライマックスではかなり大胆な表情づけを行っていて、型にはまらずに音楽の生命力を追求するヴァイオリニストなのだと実感することとなった。マズアの伴奏も大変丁寧で、ここにもやはりドイツ・ロマン派らしい香りが感じられて、大変好感を持つこととなったのである。シュタインバッハーはアンコールとして、定番であバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第 3番の第 3楽章ラルゴを演奏したが、これもまた、厳粛なだけのバッハではなく、スタイルをしっかりと持ちながらも人間性を感じさせるものであった。

さて、そしてメインの「ライン」であるが、ここでも、これまで述べてきた通りのロマン派の香りが、巧まずして立ち昇り流れて行くといった風情。すべての声部が晴朗さを伴って鳴っており、実に気持ちのよい演奏であったと言えるだろう。しっかりと楽譜を見ながら、また父と異なり指揮棒を持って、ヴァイオリンの左右対抗配置も取らないという、ある意味で保守的な指揮ぶりであったが、やはりこのようなロマン派の演奏には、そのスタイルが好ましいように思われた。よい演奏というものは、その演奏の個性をあれこれ語るよりも、「いい曲だなぁ」と思わせてくれるというのが私の持論なのであるが、今回はまさにそのような演奏であったと言えるだろう。オーケストラを聴く醍醐味がそこに感じられた点、大音響で聴衆を圧倒するような曲目ではなかったがゆえに、このマズアのまっすぐな音楽性を物語るものであったのではないか。今回の読響との共演は、このプログラムによる 2度の演奏会だけのようだが、是非またその清々しい音楽を聴かせて欲しいものである。
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by yokohama7474 | 2018-03-11 00:41 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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