川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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悪女 / AKUJO (チョン・ビョンギル監督 / 英題 : The Villainess)

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またまた超絶の韓国映画である。昨年のカンヌ映画祭で上映されて話題騒然であったと聞くが、いやはや、さもありなん。まず冒頭のシーンからして唖然。宣伝にも使われている Vanity 誌の「脳裏に焼き付く、冒頭 7分間のノンストップ・アクション」という評価をここで挙げておきたいが、詳細に触れるのはやめておこう。この驚愕の冒頭シーン、全く先入観なしに見るべきである。ただ、一言だけ述べるならば、殺戮の果てにカメラがくるっと回るその瞬間には、なんとも言葉で表現できない衝撃がある。ここで、数知れぬ屈強な男たちと、全くからだひとつで闘っている女性のその姿に、まずはペースをがっちりと掴まれるのだ。そして、疾走するストーリーをすべて経てからのラストシーン。正直、この「悪女」という題名には、本編を見ながら少し違和感があったのだが、最後のシーンには鳥肌立ちながら納得。なるほど、英語では Villainess、まさに悪女なのである。人間とは、なんと怖い存在なのだろう。そんな根源的なことをこんなに切実に感じさせてくれる映画は決して多くないが、お隣の韓国では、これまで作られてきた数々の呵責ない映画に加えて、またこのような驚くべき作品が世に問われるわけである。これは本当にすごいことである。もちろん、役者の中での最大の功労者は、主演のキム・オクビン。
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この極めてハードな映画のアクションシーンを、90%ほども自身でこなしたというから驚きだ。もともとテコンドーで黒帯という高い身体能力を持っていながら、そもそも韓国映画では女性が主人公としてハードなアクションを演じることが少ないので、その点への戸惑いを持ちながらの演技であったらしい彼女は、この映画について、「骨の髄までしびれるほどの苦痛を伴った作品なので、観るたびに痛みを思い出します」と語っている。いやはや、さもありなん。観客のひとりひとりが、その映像を見て、骨の髄までしびれるのである。ええっと、このイラストはちょっと違うかな (笑)。
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実際、このキム・オクビンが演じるヒロインは、自らの哀しい運命に身を委ねながらも、いざというときには頼る者は自分しかいない、そんな極めて厳しい環境で逞しく生き抜いてきた女性である。だがその一方で、愛する夫や娘との時間をこの上なく大事にする、極めて優しい心根を持った人であることが、この映画では巧みに描かれているのだ。これがその、素顔のキム・オクビンとその夫役、そして娘役。いい表情ですね。
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この映画では、二転三転するストーリーが面白いので、それだけで充分に楽しめるのであるが、ただ、殺戮シーンは極めて生々しいので、その点にはちょっと抵抗ある人もいるだろう。日本での公開は R15 であったのは、そういうことだと思う。だがこの残虐性にどこかユーモアがあったり、見て行くうちに、そこに描かれた人間そのものに気づくのが、いつもながらの韓国映画全般の特徴だ。そう、殺し屋は、自らの結婚式の当日ですら、式場のトイレでこのような任務を請け負うことになるのである。この長いドレスが、殺戮の運命と響き合って、なんとも哀しい。
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この映画は、過去の女性殺し屋もの、例えばリュック・ベッソンの「ニキータ」などの影響を受けているようだが、ひとつ面白いことに気がついた。それは、ヒロインが家で襲われ、男たちをなぎ倒すシーンで、巨漢を倒し、その首にロープを巻き付けて、自らは窓から外に飛び出すところ、その巨漢の死骸がバルコニーでの重しとなって墜落を免れるというもの。その、乱暴でいながら (笑) 独創的な発想には舌を巻いたが、実はこの映画を鑑賞したあとに飛行機の中で見た映画でも、全く同じシーンがあったのだ。それは、シャリーズ・セロン主演の「アトミック・ブロンド」なのだが、一体どちらが模倣したのであろうか。調べてみると、「アトミック・ブロンド」の米国公開は 2017年 7月。一方この「悪女」は、ほぼ同時期、2017年 5月にカンヌで上映されている。ということは、どちらかの脚本が事前に流出しない限り、模倣は無理なわけである。これは不思議な偶然か、あるいは、既に先立つ作品がほかにあったのだろうか。いずれにせよ、そのシーンはこの映画の驚天動地の映像のひとつに過ぎない。ここで繰り広げられる肉弾戦には、バイクに乗っての日本刀での斬りあいとか、爆裂感溢れるカーチェイスとか、それはそれは強烈なものばかり。おいおい、何もそこまでめちゃくちゃな設定にせんでもよいだろう!! と思うこと必定だ。だって、斬りあいをするなら、高速で走るバイクの上ではなく、ちゃんと地上に降りてからでよいではないか (笑)。
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ここでいつもの私の持論。こんな嘘っぽいシーンに観客が乗れるということは、映画のウソがさまになっていることで、それは取りも直さず、よい映画だということだ。この映画を撮った監督はチョン・ビョンギルという人。自身がもともとスタントマンという経歴の持ち主で、これまでの代表作は「殺人の告白」。これは日本でも「22年目の告白 - 私が殺人犯です」としてリメイクされ、このブログでも採り上げた映画のオリジナル。私はこの映画も飛行機の中で見たが、日本のリメイク版とは後半が異なっていて、よりエグい内容になっている。今年 38歳になる、こんな人懐っこい監督さんだ。ハードでエグい映画を撮るからといって、それは決して本人の素顔ではないことは、この世界にはよくあること。
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ここで繰り返そう。この映画において必見であるのは、冒頭とラストシーン。その間、観客はただ流れに身を任せればよい。実は、時間は前後するわ、信じていた人は裏切るわで、結構複雑なストーリーなのであるが、私としては、細部で理解できない点があっても、ただ気にせずに映画の流れに乗って行けば、ラストシーンで鳥肌立つ瞬間に出会えるものと思う。こんな映画、残念ながら日本では絶対にできないだろう。韓国映画は今後もきっと、ますます映画の地平を広げて行くに違いない。脱帽です!!

by yokohama7474 | 2018-03-17 22:18 | 映画 | Comments(0)
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