川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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角川映画 シネマ・コンサート 2018年 4月13日 東京国際フォーラム ホールA

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この日、4/13 (金)。サントリーホールでは、シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団のコンサートが開かれていて、それは実に魅力的な曲目であり、普通なら私はそこに出掛けているのだが、だが今回は事情が違った。このコンサート、上のチラシで分かる通り、昔懐かしい 1970年代の角川映画の音楽を、生演奏するというもの。加えて、映画のダイジェスト版も上映されるという。カンブルランと読響の演奏会はこれまでもかなり聴いてきたし、今後も聴く機会はある。だがこれは、今回を逃すとあまりチャンスがないような種類のもの。そう思って私はカンブルランを捨て、このコンサートに出掛けたのである。そしてこのコンサート、期待通り大変充実したものであったのだが、19時開演で、終演は実に 22時40分。大変な長丁場であったのである。そしてその内容であるが、角川書店 (現 KADOKAWA) が映画製作を始めた当初の 3本の作品、つまり「犬神家の一族」(1976年)「人間の証明」(1977年)「野性の証明」(1978年) において音楽を担当した大野雄二その人が出演し、各映画のダイジェストを舞台奥の巨大スクリーンに投影しながら、生のオケ (もちろんアコースティック演奏ではなく PA 使用であるが) が実際に大野の手になる音楽を演奏するというもの。この 3作が公開された当時、私は 11歳から 13歳という年頃。当時そのいずれも劇場で映画を見ることはなかったが、怪奇なものには興味があった私は、「犬神家の一族」の宣伝で使われたイメージには子供心に心胆寒からしめられたものだ。当時は角川文庫で一連の横溝正史のシリーズが出ていて、その表紙の不気味さにも、怖いもの見たさを大いに感じたものである。以下、その映画と文庫のイメージ。
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だが私はまさに中学生の頃からこの「犬神家の一族」の「愛のテーマ」という曲が大好きで、映画音楽を特集した FM 番組からカセットテープに録音して、何度も何度も飽きもせず聴いていたものだ。映画を見たわけではないのに、この作品の根底にあるらしい日本の田舎における同族の骨肉の争いをテーマにしながら、かくも美しく哀しい音楽であることに、何か人間心理の底知れぬ神秘感を覚えていたのである。おどろおどろしい映画におどろおどろしい音楽であれば、これほど心に残らなかったに違いない。ある意味で、このようなタイプの曲に強く心惹かれる感性が、今でも私が音楽を聴くときには、ひとつの基本になっているような気がするのだ。そして、この音楽を作った人の名は、大野雄二。1941年生まれで、もうすぐ77歳になるが、現在でも活躍している作曲家・ジャズピアニストである。
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彼はこのブログでよく取り上げるような、いわゆる「現代音楽」の作曲家ではなく、テレビや映画への音楽の提供をメインの活動とする人だ。だが、今回演奏された角川映画の音楽や、アニメ「ルパン 3世」の音楽はよく知られているし、それから、例えば今でも NHK で放送している紀行番組「小さな旅」のテーマ、あのイングリッシュホルンの耽美的な旋律に、この作曲家の素晴らしい才能を聴くことができる。調べてみるとこの「犬神家の一族」は、彼にとっても最初の映画音楽であったらしい。そうそう、この映画のもうひとつ強烈なヴィジュアルは、犬神家の長男、佐清 (すけきよ) である。冒頭に掲げたこのコンサートのチラシにある通りの白いゴムの面をかぶっているが、これは戦争で顔に傷を負ったため、それを隠しているという設定で、なんとも背筋がぞっとするような、一度見たら絶対に忘れないキャラクターなのである。今回のコンサート会場には、このような等身大の佐清人形が置いてあり、人々は列をなしてここで写真を撮っていた。少年時代の恐怖が甦りますなぁ。これ、コンサートが終わったらどうするんだろう (笑)。
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会場ロビーにはほかにも、今回採り上げられた 3作に関する当時のポスターや小道具などが展示されていて、それらも興味深いものがあった。さて今回の演奏は、上記の通り PA を使った生オケ (ストリングスや女性ヴォーカル 3人を含むかなりの規模のもので、作曲者大野自身がシンセサイザーとピアノを弾く) が行ったが、このオケの名前はほかならぬ "Suke-Kiyo" オーケストラであるらしい。司会を務めた TBS のアナウンサーによると、個人としてかなり有名なミュージシャンもメンバーに含まれている由。前半に「犬神家の一族」、後半に「人間の証明」と「野性の証明」が上映・演奏されたが、実際の映画の中で使用されている音楽とは異なるものもあり、作曲者大野自身が今回のコンサートのためにスコアを仕上げたものらしい。3本とも、一部ナレーションでストーリー展開の説明があったが、ダイジェストとはいえ、冒頭からラストまでが通しで上映される。ここに音楽をつけるには大変なエネルギーが必要であったろう。それぞれに持ち味の全く異なる 3本であったが、時折、「小さな旅」の音楽と共通するイングリッシュ・ホルンの旋律が聴かれたり、かなりジャズ調に編曲してあったり、アクションシーンには迫力ある音楽が展開したりと、大野雄二ならではのサービス精神が随所に聴かれて楽しめた。それから、第 1部のあとには石坂浩二 (言うまでもなく「犬神家の一族」の主役、金田一耕助役である) が登場。実は石坂とこの大野とは、慶応の高校・大学と同級生であった由。若い頃にはあまり交流はなかったようだが、プロになってから、CM でともに仕事をしたり、この「犬神家の一族」のような映画での仕事もあって、個人的にも親しくなったという。
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この 2人へのインタビューは大変面白く、とてもここには書ききれないが、例えば、日本の映画の場合は、予算の関係もあって音楽があまり重視されていない。サントラ盤は最初に制作するが、映画本編でそのアルバムから実際に曲を使うか否かは、ひとえに監督次第。「犬神家」の監督の市川崑は、あまり音楽にはこだわらない方だったが、演技の指導は大変細かく、帽子が飛んだり鼻を掻いたりするシーンも、監督の演技指導だった。今回の音楽再現に当たっては、そもそも当時のスコアは残っていないので、大野は映画を見ながら採譜をしたが、セリフが入ると音楽の音量が小さくなってしまうので、困った。そんな話が興味深かった。それから、後半では、「人間の証明」のテーマ (あの西条八十の詩を英訳して歌詞にした曲で、オリジナルはジョー山中が歌った) をダイアモンド☆ユカイという歌手が、「野性の証明」のテーマ (これも懐かしい、町田義人が歌った「戦士の休息」) を松崎しげるが歌った。彼らは、劇中でワンコーラス歌っただけではなく、上映が終わったあとにも再登場して、今度はフルコーラスを歌っていた。この歌手たちと作曲者大野が、佐清さんと記念撮影。
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そうして、もう一度オケによる 3編のテーマのメドレーがあり、そこでオケのメンバーは全員退場。何か起こるのかと見ていれば、また大野が登場し、ちょっとふざけたことを言ってから、「しつこいようですが、また『犬神家の一族』」と述べて、件の「愛のテーマ」をピアノで弾いたのだが、これは見事なジャズになっていた。こうして 3時間40分に及ぶシネマ・コンサートは終了したのである。そうそう、ここで「人間の証明」と「野性の証明」のイメージも掲げておこう。
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このように懐かしくも興味深いイヴェントであったが、当時を知らない若い人も、昭和の香りに触れるよい機会だし、何よりも大野雄二という才能を知ることは、人生にとって何か意味があるはずだ。まだ今日、4/14 (土) 14:00 から 2度目の上演があるので、お薦めしておこう。

最後に、初期の角川映画についての感想を少し。「犬神家の一族」では復員兵がひとつのテーマになっているし、「人間の証明」も戦後の闇市での出来事が事件の鍵を握っている。「野性の証明」の場合は、自衛隊の特別訓練という設定で、少し毛色が変わっているが、やはり冷戦の時代の雰囲気を持っている。そう思うと、今から 40年ほども前のこれらの映画の時代、1970年代後半は、高度成長のあとで人々が戦後の貧しい時代からの復興を思い出し、世界に不安は存在しながらも、未だ未来を信じられる時代であったように思う。もし今から 40年後にこのような機会に採り上げられる映画があれば、それは何なのであろうかと、ふと考えてしまった。まぁそれはそれとして、実は今後、このような映画に合わせて生演奏を行うコンサートが、結構予定されている。今月だけでも、「砂の器」(これも懐かしいなぁ。「カメダ」ですな)、それから「007 カジノ・ロワイヤル」に、「ラ・ラ・ランド」、7月以降は「スター・ウォーズ」の最初の 3部作 (7/29 (日) には 3作一挙上映というクレージーな企画も)、8月には佐渡裕が指揮をする「ウエスト・サイド物語」といった具合だ。うーん。もしかすると、それらのいずれかに出掛けるかもしれない。まずはやっぱり「カメダ」かなぁ・・・。

by yokohama7474 | 2018-04-14 03:02 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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