川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
by Crop Stock
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
> 非公開さん 貴重な..
by yokohama7474 at 22:16
> usomototsu..
by yokohama7474 at 22:13
明日(12月16日)この..
by usomototsuta at 16:39
> カギコメさん 合唱..
by yokohama7474 at 23:14
> エマスケさん おっ..
by yokohama7474 at 23:11
こんにちは。 またお邪..
by エマスケ at 14:33
> どれみどりさん 朝..
by yokohama7474 at 23:30
またまた、おじゃまします..
by どれみどり at 17:04
> カギコメさん 海外..
by yokohama7474 at 20:53
> 吉村さん そうでし..
by yokohama7474 at 23:51
メモ帳

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 NHK 交響楽団 2018年 4月15日 NHK ホール

e0345320_23325931.jpg
NHK 交響楽団 (通称「N 響」) の定期公演である。あれ、そういえば先月は N 響の定期って聴いたっけな、と疑問に思って調べてみると、やはり 3月には定期公演はなく、月のはじめには、このブログでも採り上げた、パーヴォ・ヤルヴィ指揮による「ウェストサイド・ストーリー」の演奏会形式上演を済ませ、月の半ばと後半には、中国地方と東北地方に演奏旅行に出かけている。前者では、なんと先日読響を代役として指揮したステファン・ブルニエが 4公演で指揮を採り (N 響との地方公演終演後にちょうど読響の演奏会があるというグッドタイミングであった模様)、後者の指揮は尾高忠明であった。そうして N 響は、東京・春・音楽祭でワーグナーの「ローエングリン」を 2回演奏。定期公演はなくとも、充分すぎるほど多忙な日々であったわけである。どうやら近年の N 響の 3月は、毎年そのように、定期公演のない活動ぶりであるようだ。そして今月、2ヶ月ぶりの定期公演の指揮台に立つのは、桂冠名誉指揮者のヘルベルト・ブロムシュテット。あと 3ヶ月で実に 91歳 (!!) になる、文字通り現代指揮界の最長老である。
e0345320_23523453.jpg
このブログでは過去何度も彼の演奏会を採り上げてきたが、今回もこうして元気な姿を東京の聴衆の前に現してくれて、本当に嬉しいことである。今でも彼は、ステージの袖から指揮台まで何度も往復するし、何より、終始立ったまま精力的に指揮するのである。これは実に驚異的なこと。だが私は、演奏家の年が何歳であれ、よい音楽を聴かせてくれるかのみが、その演奏家を聴きたいと思う唯一絶対の理由なのだ。私がブロムシュテットのコンサートに行きたいと思うのは、そこでは素晴らしい音楽を聴くことができるだろうという期待があるからにほかならない。今回の N 響定期の 3つのプログラムは、指揮者いわく、ベートーヴェンをテーマにしたものらしい。だが待て。ほかの 2つのプログラムは文字通りベートーヴェンの曲ばかりだが、今回はそうではなく、以下のようなもの。
 ベルワルド : 交響曲第 3番ハ長調「風変わりな交響曲」
 ベルリオーズ : 幻想交響曲作品14a

もちろん後者はフランス・ロマン主義を代表する破天荒な作曲家の破天荒な曲で、かつ大人気のシンフォニー。今年に入ってからの東京でも、既に何度も熱演、名演、爆演が鳴り響いている曲である。そして前者、フランツ・アドルフ・ベルワルドは、もしかすると一般にはなじみのない名前かもしれないが、ブロムシュテットの祖国スウェーデンの作曲家 (1796 - 1868)。いわゆる初期ロマン派に属する作曲家で、ベルリオーズの 7歳上。つまりこの 2人は、国や作風は異なれど、ベートーヴェン (1770 - 1827) の影響下に創作活動を展開した人たちなのである。ベルリオーズもそうだが、ベルワルドも写真での肖像を残している。
e0345320_00162799.jpg
ベルワルドのシンフォニーは 4曲あるのだが、私は学生時代に、ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団による 2枚組の全集で、ある程度親しんだものだ。「ある程度」と書いたのは、特に夢中になって入れ込んだということでもなかったからであるが (笑)、それでも、この第 3番 (今回は「風変わりな交響曲」となっているが、この CD では原題をカタカナで表記した「サンギュリエール」になっている) は、最初に収録されているので、何度かは聴いたものだ。それから、鬼才イーゴリ・マルケヴィチがベルリン・フィルと録音した 3番・4番もその後聴いているが、それが私の知っているベルワルドのすべてである。N・ヤルヴィの録音は、こんなジャケットだった。
e0345320_00222556.jpg
今回の第 3番の演奏は、ブロムシュテット自身が校訂した版による演奏であり、祖国の作曲家への彼の尊敬の念がよく分かる。今回の演奏では、後半の「幻想」も同じであったが、譜面台に小さなスコア (だと思う。まさかバイブルではないだろう 笑) を置いてありながら、全くそこに手をつけることもなく全曲暗譜で指揮した。そしてその音楽のなんと活き活きしていること!! 冒頭のウネウネする主題は、耳には残るがそれほど魅力あるものではない。だがブロムシュテットは、その冒頭部分から極めて真摯に音楽を解きほぐし始め、すがすがしい規律とでも言える流れを、巧まずして生み出していた。先日の「ローエングリン」に続いてライナー・キュッヒルをコンサートマスターに迎えた N 響は、今回も力強さと美しさを兼ね備えた素晴らしい演奏で、ブロムシュテットの期待に応えた。この曲の第 2楽章ではアダージョとスケルツォを組み合わせるというユニークな方法が取られているが、慣れない曲とは思われないような堂に入った進み方である。そして、終楽章である第 3楽章の、冒頭の力強さには驚かされた。そうそう、初期ロマン派の曲なのに、コントラバス 8本を使い、存分にオケを鳴らしているのである。ティンパニの打ち込みも強烈。このような演奏で聴くと、曲そのものが偉大に響く。これは得難い経験であった。

後半の「幻想」は、ブロムシュテットのレパートリーの中核をなすものとは思えないが、既にシュターツカペレ・ドレスデンを指揮したライヴ盤もあり、それは1978年と、40年も前の録音だし、2014年にベルリン・フィルでも指揮している (ちなみにベルリン・フィルとは、ベルワルドの 3番も、2016年に演奏している)。上記の通り暗譜で振り通したブロムシュテットの「幻想」、決して爆演ではなく、あえて言えば古典的な交響曲の様相を呈した、折り目正しい演奏であったと言えようか。そのひとつの証左は、第 1楽章はもちろん、第 4楽章でも、反復を励行していたことである。ここでの第 4楽章の反復とは、断頭台への行進曲が二度あるということだ (笑)。この曲のおどろおどろしい標題性を重視するなら、ここの反復は省略するであろうし、そのような演奏が多い。だが、この破天荒な曲にも古典派からロマン派への移行を読むとすると、楽譜の指定通り、反復を行うことに根拠はあるわけだ。このようなブロムシュテットの手にかかると、異端の作品である「幻想」ですら、純粋な音のドラマとなる。もちろん迫力に不足することもなく、聴いていて胸がスカッとするようであった。ここでもオケは大健闘。第 1楽章のラスト手前で木管にほんの少し乱れがあった以外は、自信に満ち、老巨匠の音楽の忠実なしもべたらんとする演奏態度に終始して、感動的であった。素晴らしい充実感であったのである。

そんなブロムシュテットは、動きを見ていると体調は全く万全であろうから、残る 2つのベートーヴェン・プログラムも楽しみなのである。さてここで、ひとつオマケネタ。今回の演奏を聴いているときに、何やら私の記憶の中で、以前ブロムシュテットが N 響でベルワルドの曲を指揮したことがあるのではないか、という思いが疼き出した。そこで帰宅して手元のアーカイブを調べて判明したことには、やはりあった。演奏したのは第 4番変ホ長調であり、1991年 3月20日の演奏が、当時生放送された。以下がその映像である。
e0345320_00554758.jpg
e0345320_00555825.jpg
e0345320_00560864.jpg
e0345320_00562078.jpg
なるほど、ブロムシュテットは今でも異様に若いと思うが、これを見ると、27年前はやはり、もっと若い!! それから、今と違うのは、ヴァイオリンの左右対抗配置を取っていないことと、指揮棒を使っていること。そして、上の写真で明らかな通り、この時も暗譜による指揮であるが、今回と違って譜面台すら置いていない!! あ、それから、これは 3月に行われた定期公演だから、当時の N 響は 3月にも定期を行っていたことも分かりますな。うーん、東京の音楽シーンが侮れないのは、今に始まったことではないと、改めて感じる次第であります。

by yokohama7474 | 2018-04-16 01:00 | 音楽 (Live) | Comments(0)
<< マリア・ジョアン・ピリス ピア... ジョナサン・ノット指揮 東京交... >>


最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧