川沿いのラプソディ


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メモ帳

上岡敏之指揮 新日本フィル (ピアノ : アンヌ・ケフェレック) 2018年 4月22日 横浜みなとみらいホール

新日本フィルハーモニー交響楽団 (通称「新日本フィル」) とその音楽監督、上岡 (かみおか) 敏之の演奏会は、このブログでも何度にも亘って採り上げ、素晴らしい演奏、課題の残る演奏、私なりにそれぞれ率直な思いを記してきている。このコンビは先週サントリーホールで定期演奏会を開いているが、私は所用があってそれには行けず、残念な思いをしていたところ、横浜みなとみらいホールで同じ内容の特別公演があると知って、そちらに出掛けることとした。ただ、私の手元にはこのコンサートのチラシはなく、直前までその存在を知らなかったのである。東京では、コンサートの度に大量のチラシが配られる。私のようにそれなりの頻度でコンサートに出かける人間にとっては、そのほとんどは既におなじみのものなのだが、一応一通り見て、見覚えのないチラシを数枚だけ抜き取って、あとは処分するのである。大量のカラー印刷であるから、あれは地球環境上はあまりよいことではない (それとも、回収したチラシは再利用されているのだろうか) と思いつつも、やはり信頼できる情報ソースとして重宝している。ところが今回のみなとみらいホールでの新日本フィルの演奏会は、チラシを見た記憶がなかったのである。そのせいであるか否かは分からないが、会場の入りは、このコンビの真価を知る者にとってはかなり淋しいもの。何か、宣伝をもう少し工夫した方がよかったのではないだろうか。
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ともあれ、今回の曲目は以下の通り。
 モーツァルト : ピアノ協奏曲第 24番ハ短調K.491 (ピアノ : アンヌ・ケフェレック)
 ブルックナー :交響曲第 6番イ長調

最初のモーツァルトの 24番のコンチェルトは、彼のピアノ協奏曲の中で、短調で書かれた 2曲のうちのひとつ。もうひとつの短調協奏曲である第 20番ニ短調K.466とともに、貴族を聴衆として想定していた当時の器楽曲としては異例の、悲劇的な音響を持つ。だがもちろん、最初から最後まで短調であるわけもなく、穏やかな長調の箇所もあって、その表情の変化こそが素晴らしい曲なのである。今回ピアノを弾いたのは、フランスの女流、アンヌ・ケフェレック。私が学生の頃から、随分と息の長い活躍をしている人で、日本でも、ラ・フォル・ジュルネに何度も出演していておなじみであろう。今年 70歳である。
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とにかくこのような曲目であるから、デリケートな曲想の変化を、その一瞬一瞬で美しく聴かせて欲しいのであるが、その点、このケフェレックと上岡 / 新日本フィルの伴奏は、ともにデリカシー溢れる美しい演奏であり、実に素晴らしいものであった。このピアノをフランス風のギャラントなものと呼んでよいものか否か分からないが、何よりも音色の美しさが際立っていて、悲劇性すらもその美しさのひとつのありようという印象であった。物語性や起承転結ではなく、瞬間瞬間の音の煌めきにこそ、この日のピアノの持ち味があったものと思う。何気ないようでいて、モーツァルトをこのように演奏するのは、なかなか簡単なことではないであろう。ケフェレックが息長い活動によって聴衆に愛される理由が分かるような気がした。また、新日本フィルはもともと木管の上手いオケであると私は思っているのだが、ピアノの音をよく聴いて反応していることが感じられた。終演後は客席からは (多分おひとりだけだったと思うが) 大きなブラヴォーもかかり、アンコールとして演奏されたのは、ヘンデルのメヌエット (ケンプ編)。この曲は、孤独感と繊細な美感を兼ね備えるという意味で、モーツァルトの 24番のコンチェルトと共通点もあり、もともとバロックということを感じさせないロマン的な演奏には、深い感情が込められていた。オケの面々も静かに聴き入っていたのが印象的であった。

そしてメインのブルックナー 6番も、上岡と新日本フィルらしい、隅々まで神経の行き届いた名演であった。冒頭の弦によるリズミカルな音型は、通常よりもさらに弱音で奏されていたと聴こえたし、そのあとでオケが壮大に鳴り響くところでは、楽員の力を最大限に引き出す上岡の指揮に勢いを感じた。この曲はブルックナーの交響曲としては必ずしも人気のある方ではないのだが、激的迫力に満ちたダイナミックな曲であり、私は結構好きである。だだもちろん、さすがに 7番以降の大傑作交響曲群に比べると、心の奥底にまでズシンと来るほどの感動までは覚えない作品であるとも言えるだろう。それゆえにこそ、演奏する側としては、面白く聴かせようとしてうまく行く場合と、そうでない場合が出てきてしまうのだと思う。ブルックナーを積極的に手掛ける指揮者でも、この曲を敬遠する傾向があるのは、そのあたりにも理由があるのかもしれない。上岡は、決してブルックナーのスペシャリストというわけではないが、新日本フィルと継続的にこの作曲家を採り上げてきており、その壮大な音響世界の描き方には、独自のものを感じさせる指揮者である。すなわち、自らの感性を信じて、時にそれがほかの指揮者たちと異なるテンポやバランスであっても、堂々と描き上げるのである。そんな指揮に対して、弦楽器はいつものように全身全霊で貢献し、ここでもまた木管楽器 (この曲でもやはり木管は重要である) がそれぞれの持ち場でうまく音楽の流れに乗っていて見事であった。金管も輝かしく、ティンパニ (こんなにティンパニが重要なブルックナーの交響曲はほかにあるだろうか!!) も十全の演奏ぶり。約 60分の大シンフォニーを、強い一体感を持って演奏し尽したのは、素晴らしいことだ。プログラムの解説によると、今回上岡が完全暗譜の指揮によって採り上げた版は、通常のハース版 (1937年) やノヴァーク版 (1951年) ではなく、それより前の時代 (1927年) に出版されたヨーゼフ・フォン・ヴェスという人の校訂による版であった。そもそもこの曲は、5番と同じく、作曲者自身による改訂がないので、原典版としてはこれらの楽譜の間には、それほど大きな違いがあるわけではないようだが、それでもこのヴェス版には、細部においては、速度指定や強弱などの表情づけに、かなりの独自性があるらしい。そう言われてみれば、つなぎの部分などにちょっと耳慣れない箇所があったように思う。いずれにせよ、確かに細部の表情づけには大変に神経を使った演奏であったと思ったら、版の選択に既にそれが表れていたわけである。これこそまさに、上で触れたような上岡のこだわりであろう。これは、このコンビの、このみなとみらいホールでの過去の演奏会から。
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終演後、ちょっと所用があったので早々に席を立って退出すると、ロビーに出たところで、ホール内のモニターから、モーツァルト 29番の終楽章が流れてきた。おっと、アンコールがあったのか。一旦出てしまうと客席には戻れないので、涙を呑んで会場を後にしたが、ブルックナーを演奏した編成 (コントラバス 8本) で、あの颯爽と駆け抜ける古典音楽を演奏したのだろうか。これは大変に惜しいことをした。そもそも、通常の定期公演ではアンコールは演奏されないもの。今回はみなとみらいホールでの特別演奏会であったがゆえのことであったのだろう。実はこのホールでのシリーズにはちゃんと名前がついていて、「サファイア」という。因みにこのオケの定期には 3種類あって、トパーズ、ジェイド、ルビーだ。そこに加えてこのサファイアシリーズが今シーズン (2017年 9月開始) から始まっているのである。このシリーズは、サントリーホールでのジェイドシリーズの一部の演奏会を、場所を変えて繰り返すもので、 上岡の説明によると、基本的にブルックナーとマーラーのシリーズをメインにしているという。なるほど、そういうことだったのか。昨年 9月にはマーラー 5番。今回はブルックナー 6番。そして今年 9月開始の新シーズンの予定を見ると、このサファイアは、ブルックナー 9番、マーラー 2番と続く。それ以外にも、既にツェムリンスキーの「人魚姫」が演奏されているし、新シーズンにはワーグナー特集もあって、なるほど、ブルックナーとマーラーの周辺まで含めて、充実の内容である。なので、是非楽団にはこのサファイアシリーズも、チラシを作成してもっと宣伝して欲しいものであります!! 尚、このオケの新シーズンのメインの 3通りの定期公演においても、注目の指揮者を多く含む多彩な曲目が予定されていて、目移りしてしまう。ちょっと指揮者陣に触れてみようか。上岡以外に、ペトル・アルトリヒテル、ハンヌ・リントゥ、ローレンス・フォスター、ヒュー・ウルフ、レオポルト・ハーガー、フィリップ・ヘレヴェヘ、ベルトラン・ド・ビリーといった具合。ちょっと渋いかもしれないが、いずれも期待できる名指揮者たちである。このようなパンフレットで、どのコンサートに出かけるか、じっくりと検討してみたい。
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by yokohama7474 | 2018-04-22 22:31 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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