川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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ヴァレリアン 千の惑星の救世主 (リュック・ベッソン監督 / 原題 : Valerian and the City of a Thousand of Planets)

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フランス人映画監督リュック・ベッソンは、私に複雑な感情を抱かせる監督である。カッコよい「ニキータ」(1990) あたりで注目され、文句なしの傑作「レオン」(1994) を撮りながら、その次の「フィフス・エレメント」(1997) ではガクッとその映画的高揚感を下げてしまい、続く「ジャンヌ・ダルク」(1999) も決して万人を感動させる内容ではなかったと記憶する。それから私にとっては彼の作品から疎遠な日々が続き、ようやく「LUCY/ルーシー」(2014) で久しぶりに再会したのだが、広げた風呂敷をどうやって畳もうかともがいている作品のように見えた。そして今回の「ヴァレリアン」である。一時期劇場ではこの作品の予告編が頻繁に流れていたが、緩やかに流れる音楽をバックにしたその映像はなかなかゴージャスであることは分かったし、ピーター・ジャクソンらの賛辞の言葉も興味深いものであった。やはり彼は、未だに注目すべき監督のひとり。この作品は見ておいた方がよいと考えた。ベッソンは 1959年生まれの 59歳。随分と恰幅よくなったものだ。
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さて、この作品の感想を一言で述べるなら、映像の情報量にクラクラするものの、なかなかに楽しめる映画であり、一見の価値はある。映像美はもちろんこの映画の大きな特色で、子供の頃「スター・ウォーズ」の 1作目を見たときに感じたような映像の魔術性が、21世紀の今日に甦った感すらある。その意味するところは、宇宙船やコロニーの壮大なリアリティと、それと対照をなす手作り感満載のクリーチャーたちの両立と言えばよいだろうか。もちろん、「スター・ウォーズ エピソード IV」の時代には影も形もなかった CG がふんだんに使われているわけであろうが、ポイントは、その CG に依拠し過ぎない姿勢ではないか。見ている人たちが共感できるヴィジュアルには、必ず人間的なものが必要であり、この映画の成功はまずその点にあると思う。そう、その点に関して是非言っておきたいのは、主人公たち、若い男女のヴァレリアンとローレリーヌが最初に登場するシーンが象徴的であるということだ。この 2人は連邦捜査官なのであるが、コンビを組んで活動しており、既に恋仲、いや、映画の冒頭では未だそうでないかもしれないが、数々の冒険を通じて恋仲になっていく男女である。冒頭でこの 2人は、仮想の砂浜でくつろいでいるのである。というよりまぁ、ヴァレリアンがローレリーヌを頑張って口説いていて、スルリとかわされているのだが (笑)。
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このシーンがなぜに象徴的であるかというと、この 2人の使命は、広大な宇宙の平和を守ることであり、そこでの極めて危険な任務の数々においては、生命体としてはなんともちっぽけな存在。そんな彼らのちっぽけな肉体にこそ、広大な宇宙においても限りない重みを持つ「いのち」が宿っていることを実感できるからだ。実際、彼らの任務はこんな格好で遂行されるのが通常だ。ここでは生身の肉体はほとんど感じることができない。
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ここでごく自然に描かれた「いのち」という存在が、この映画のテーマになって行くことは、おいおい分かって行くのだが、考えてみれば、私がかつて全く評価できないと思った「フィフス・エレメント」も、実は同様のテーマであったのかもしれない。そうであれば、過去 20年の間に、リュック・ベッソンの手腕は上達したと誉めてやってもよいのではないか (笑)。もちろんそのような感慨を抱くことができるのも、主役の 2人、つまりはヴァレリアン役の米国人デイン・デハーン (1986年生まれ。過去の出演作には「アメイジング・スパイダーマン 2」のグリーン・ゴブリンが含まれるが、全く覚えていない) と、ローレリーヌ役の英国人カーラ・デルヴィーニュ (1992年生まれ。もともとモデルであるらしいが、「アンナ・カレーニナ」「スーサイド・スクワッド」などで映画出演歴を持つ) が、大変に好感を持てる役者たちだからだろうと思う。ヴァレリアンは精悍ではあっても、どこか憎めない三の線も持ち合わせ、ローレリーヌはじゃじゃ馬ながら、その意志の強さが美しさに直結している。よくこんな素晴らしいコンビを発掘してきたものだと感心する。尚このカーラ・デルヴィーニュ、ロンドンでふなっしーとも共演 (?) している。
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この映画のもうひとつの美点は、テンポのよいこと。導入部で時の経過を表し、舞台設定を説明する箇所で、ルトガー・ハウガーが政府役人として語っているシーンがあるのも嬉しい。また、ジャズの巨人ハービー・ハンコックが嬉しそうに国防長官を演じているし、クライヴ・オーウェンやイーサン・ホークもいい味出しており、また、これは、ジャバ・ザ・ハットならぬアイゴン・サイラスというクリーチャーだが、見ての通り (?) 声を演じているのはジョン・グッドマンだ。
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それから、中国資本も入っているので中国人が登場しているのも理由があるし、予告編でもナース姿への変身が鮮やかだったこのバブルという役は、リアーナという歌手が演じている。
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このような多士済々の顔ぶれが生きてくるのは、繰り返しだがその鮮やかなヴィジュアル性によってである。これも予告編で印象的であったミュールという惑星のシーンは、極めて美しいし、そこに住むパール人たちは、頭の形や目と目の間の距離など、実際の人間の姿に手を加えているのであろうが、大変よくできている。
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ほかにもこのようなクリーチャーたちが出てきて、さながら現代のヒエロニムス・ボスかと思われるような想像力である。
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登場キャラクターに命を吹き込むのはクリエーターの仕事であり、この映画でリュック・ベッソンは見事にその責務を果たしたと言えると思う。尚この作品、原作はフランスのコミックであるらしい。題名は「ヴァレリアンとローレリーヌ」というらしく、なんと 1967年の作品であるそうだ。実は「スター・ウォーズ」のヴィジュアルにはこのコミックからの影響があるというから、面白い。今回の映画のイメージが「スター・ウォーズ」に似ているのは、ある意味では至極当たり前であったわけである。
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このコミックは、ピエール・クリスタンという人が物語を作り、ジャン=クロード・メジエールという人が絵を描いているという (上の写真の上部左右に、彼らの苗字が記されている)。この 2人、なんと未だ健在で、撮影中にリュック・ベッソンを訪れている。楽しそうですなぁ。
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このように様々な要素が一体となって、大変に見ごたえのある映画に結実している。これもフランス文化の豊かさの一端であろうから、それに触れることのできたのは幸運であったと思う。こうなると、リュック・ベッソンの次回作も楽しみになろうというものだ。その期待を込めて、劇場に展示してあったポスターに書かれた彼のサインを撮影しましたよ。
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by yokohama7474 | 2018-04-24 00:34 | 映画 | Comments(0)
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