2018年 05月 04日
チョン・ミョンフン指揮 東京フィル 2018年 5月 3日 軽井沢大賀ホール
さてここでご紹介するコンサートは、ラ・フォル・ジュルネの代わりというわけでは決してないのだが、私としては是非に聴きたいと思ったものである。軽井沢にある大賀ホールにおける、チョン・ミョンフン指揮東京フィルハーモニー交響楽団 (通称「東フィル」) の演奏会だ。このホールは、ソニーの社長を務めた大賀典雄からの寄付をもとに 2005年にオープンしたもので、客席数は 800足らずと、中規模ホールである。実はこのホールではちょうど GW の頃に、春の音楽祭と称する一連の演奏会が開かれる。この収容人数だからせいぜい室内楽かと思いきや、例年フルオーケストラの演奏会があり、私はそれが好きで、時々聴きに来ている。なんといっても今や軽井沢は、新幹線で東京から 1時間ちょっとで来ることができる便利な場所。今回も日帰りで、昼間は勝手知ったる軽井沢の観光 (追って記事をアップしますが、それより前に書くべき旅行の記事がちょっと重量級)、夕方 16時からコンサートを楽しんだ。これが公園内に佇む大賀ホールの遠景。
ベートーヴェン : 序曲「コリオラン」作品62
ベートーヴェン : 歌劇「フィデリオ」作品72から
レチタティーヴォとアリア「悪者よ、どこに急ぐのだ」(レオノーラ)
序奏とアリア「神よ、何という暗さだ」(フロレスタン)
二重唱「ああ、えも言われぬ喜び!」(レオノーラとフロレスタン)
ベートーヴェン : 序曲「レオノーレ」第3番作品72b
ベートーヴェン : 交響曲第 5番ハ短調作品67
なんと、ベートーヴェンづくしである。しかも東京で「フィデリオ」全曲を聴く前に、その一部をここで聴くことができるのだ。注目の歌手は、レオノーラ役がソプラノのマヌエラ・ウール。そしてフロレスタン役はテノールの、おぉ、久しぶりにその名を耳にするペーター・ザイフェルトである。もちろんこの 2人は、東京での全曲演奏でも歌う人たち。彼らの歌唱については追って述べるとして、まずはこの曲目について思うところを書いておきたい。実は当初発表では、「コリオラン」序曲は予定されていなかった。つまりその場合には、前半が「フィデリオ」の音楽 (「レオノーレ」3番は、このオペラの副産物である)、後半が第 5交響曲というシンプルな構成になっていたわけである。だがそこに「コリオラン」が入ることで、プログラムに広がりができた。この選択は実に巧みなのである。ベートーヴェンのほかの序曲では、「エグモント」も有名だが、もし「エグモント」を冒頭に持ってくると、最初の曲でありながら、大いに盛り上がって終わる。その点、静かに終わる「コリオラン」なら、それに続く「フィデリオ」の劇的な世界に自然につながって行くのである。また、もし歌劇「フィデリオ」自体の序曲を冒頭に持ってくると、やはり前半「フィデリオ」、後半「運命」という単純図式になってしまう。なので、やはり「コリオラン」は巧みな選曲であるのだ。