川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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メモ帳

京都 宇治 平等院、萬福寺、三室戸寺、宇治上神社、旧白川金色院、白山神社、地蔵院

今回採り上げるのは、京都府南部の宇治市の寺社である。私は年明けに京都に滞在し、実はこの地の代表的な観光地である平等院を訪れたことは、既に記事にした。今回の訪問は、今年の 3月18日。つまり、今から 1ヶ月半も前である。ちょうどその日私は、ロームシアター京都で行われた小澤征爾音楽塾の「子どもと魔法」「ジャンニ・スキッキ」の公演を見たのであるが、公演開始の 15時までの時間を有効活動すべく、京都のどこかを訪ねたいと考えたものである。それがなぜに宇治であったのかについてはこれから述べようと思うが、たまたま今日 (5/5)、NHK の「ブラタモリ」は宇治特集であった。うーん、こういうことも何かの巡りあわせかと勝手に考えて、いつもの通り多摩川沿いの自宅から、宇治川沿いの土地を思い出し、徒然なるままに紀行文を綴って行きたい。

さてここで突然話題が変わるのだが、私の好きな英語のフレーズに、"ring a bell" というものがある。文字通り「鐘を鳴らす」ということなのだが、この使い方が面白い。例えば誰かの名前を引き合いに出して、その人を知っているかと問うと、"That name rings a bell." などという返事をもらうことがある。頭の奥でリンリンとベルが鳴っている、つまり、何か聞き覚えがあるのだけれどはっきり思い出せない状態を指して言うのである。私のように 50を超えてしまうと、昨日の出来事ですら "ring a bell" 状態で思い出ないこともしばしばであるが (笑)、でも、遠い昔の記憶が ring a bell という状態は、結構日常の中にあるのではないか。実は私は正月に宇治平等院を訪れたとき、そのような感覚を持ったものであった。そのときの紀行文は今年 2月 4日付の記事に書いていて、平等院のあとに橋寺放生院を訪れたのだが、実はその間、ring a bell 状態だったのである。確か小学生の頃、つまりは 40年ほども前のことだが、平等院からそれほど遠くない小さな寺を訪ねたことがある。そしてそのとき、舗装された道に古い門が残されていて、そこは何か姫にまつわる逸話があったはず・・・。だが 1月の時点では、既に夕刻に近づいていたこともあって、それ以上思い出したり、その場でネット検索できなかったのだ。そこで今回私が宇治に出掛けたのは、その ring a bell 状態の解消がひとつの目的であったのだ。それについては追って述べることとしよう。というのも、もちろんもうひとつの宇治訪問の目的は、1月に果たせなかった、平等院鳳凰堂の内部の拝観であったからだ。
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東京を朝出て、京都駅近辺でレンタカーを借りて、この平等院に着いたのは 9時15分くらいであろうか。昔と違って平等院鳳凰堂は、保存のため、一日に堂内に入れる人数を制限している。前回は夕方の訪問であったので、久しぶりに内部に入る機会を逸したのだが、今回は大丈夫。このような時刻指定のチケットを無事ゲット。
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定刻の 10分前に集合がかかっているが、それまで時間を持て余すことなどありえない。何度見ても惚れ惚れする鳳凰堂の姿を愛で、宝物館である鳳翔館を見、それ以外にも境内の古い建物や歴史的遺物を見ることで、すぐに時間は経ってしまう。たとえばこれは、源頼政 (1104 - 1180) の墓。
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頼政は平安時代の武将・歌人であり、頼朝の家系とは親戚筋であって直系ではないが、鵺 (ぬえ) 退治の伝説でも知られる人である。ここ宇治で、平氏打倒の戦いの中で命を落とした (が、当時としては充分長生きな人であったわけだ)。これが、歌川国芳描くところの、頼政の鵺退治。
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それから鳳凰堂自体も、時間帯や季節による日差しの加減はあると思うが、このときには対岸から、壁にかけられた雲中供養菩薩像の一群や、本尊阿弥陀如来の姿を遠目に見ることができて、なんとも感動的であった。
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そして待望の 9時50分が来て、堂内へ。もちろん撮影禁止なので、私がそこで撮った写真はないのだが、借りてきた写真でご紹介すると、これが内部の様子。1053年に作られてから 950年間、色は褪せてしまったものの、その姿がまるごと現代に伝えられた奇跡の造形だ。
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鳳凰堂の内部では係の人の説明があったのだが、大変興味深かったのは、阿弥陀如来の額に埋まった石 (白毫、びゃくごう、と呼ぶ) が、堂内では黒く見えたのに、正面から堂を出ようとして振り返ると、白く見えるということ。光の加減とはいえ、こういう現象に出会うことで、人々の信仰心は深まるのだろうと思う。
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さて、宇治と言えば、平等院と並んで有名なのは、黄檗山萬福寺 (おうばくさん まんぷくじ) である。名僧隠元 (インゲン豆で有名なあのインゲンさんだ) が 1661年に開いた禅寺であり、その最たる特色は、建物や仏像の造形が著しく中国的であるということだ。私はこのお寺の独特の雰囲気が好きで、子供の頃から何度となく訪れているが、近隣の平等院と異なり、今でもそれほど観光客でごった返さない点に、好感が持てる (たまたま観光バスが来ていないタイミングだったからかもしれないが)。
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設立当初からの伽藍が残っており、そのことごとくが重要文化財。またこの寺は、ほかの京都の多くの禅寺同様、今でも僧たちが修行に励んでいるのである。建物同様、仏像も独特で面白いのだが、これらは最初に目にはいる天王殿という建物の本尊、布袋と、堂内に安置された堂々たる四天王。太鼓腹の布袋さんは、禅では弥勒如来の化身とされる。そのあたりのシュール感が禅らしくていいですねぇ!!
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さて、一般の寺院で言う本堂にあたる大雄宝殿には、釈迦三尊像と、それから大変ユニークな等身大の十八羅漢がおわします。中でも、胸を割いて仏の顔を出している羅怙羅尊者像のユニークさは、格別である。「仏はここにあり」と唱えておられるのだろうか。
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さて、萬福寺を辞して向かった先は、三室戸寺 (みむろとじ)。770年の創建という伝承を持つ古刹で、西国三十三か所の第 10番札所である。
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実は私はこの寺とは今まであまり縁がなく、多分今回が人生で 2度目の訪問ではないだろうか。それというのも、所蔵する仏像を通常は拝観できないからである。だが、ちょうど今頃 (5月) はツツジがきれいであろうし、私が訪れた 3月でも、境内の雰囲気はなかなかに清々しいものであった。これが本堂と三重塔。いずれも江戸時代の建築である。
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そして、重要文化財の仏像をいくつも収めた収蔵庫があるのだが、ご覧の通り、毎月 17日にのみ公開される。うーん、今度また 17日に参拝するしかないか。
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さぁそして、次に訪れたのが、私にとっての ring a bell の場所であったのだが、それは一旦飛ばして、少しメジャーな場所のご紹介をしよう。これは恥ずかしながら私も今回初めて訪れたのだが、宇治上 (うじがみ) 神社である。下の写真にある通り、ここは世界遺産の指定を受けているのだ。
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より正確には、1994年に世界遺産に認定された「古都京都の文化財」に含まれる 17件のうちのひとつがこの神社なのである。宇治市内では平等院とここ宇治上神社だけであり、また 17件のうち、神社は、ほかには上賀茂神社と下鴨神社しかない。そのように、この神社が大変貴重な文化財と認定されている理由としては、国宝に指定された 2つの建築が挙げられよう。拝殿 (鎌倉時代前期)、そして本殿 (平安時代末期!!) である。まさに神韻縹渺たる建物と言えるだろう。
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隣接した宇治神社にもまた重要文化財があり、この土地の古い歴史に思いを馳せるには、最適の場所なのである。・・・さてここで、一般的な宇治観光からちょっと離れ、ここでひとつの写真をお目にかけよう。
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この可愛らしい白鳳時代の小金銅仏こそ、正月に宇治に出掛けたときの私の ring a bell 現象の正体である。そう、今から 40年前、私は平等院から足を延ばして (多分徒歩で)、この仏像を見に行ったのである。これは、地蔵院というお寺が所蔵する重要文化財、阿閦 (あしゅく) 如来立像。もともとこの地にあった白川金色院 (しらかわこんじきいん) という大寺院の遺物であると言われている。この金色院、藤原道長 (もちろん摂関政治の頂点に立った人で、平等院は、もともとこの人の別荘を息子の頼道が寺にしたもの) の孫である寛子 (かんし、後冷泉天皇の皇后) が 1102年に建立したもの。そうだ、私の遥かな記憶は、ここでつながった。輝く七堂伽藍を誇りながら、今では全くこの世から消えてしまった金色院の痕跡は唯一、小さな門に残っているはずだ。その記憶を辿り、今度は便利なインターネットでの検索を駆使して、とうとう辿り着いた。これである。
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これは旧金色院の惣門であるが、大変簡素な造り。文化財指定を受けていないようで、ご覧の通り、道路の途中にその姿をとどめていて、その存在は唐突でありながらも極めて地味。近くに寄ってみると、かなり傷みが目立つ。40年ぶりの再会には、なんとも淋しい思いが伴った。が、しかし一方では、この門が未だここにこうして存在してくれているだけで、勇気づけられるようにも思われるのである。
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この金色院の発掘調査は、ようやく 1993年に入ってから始められたようで、近辺にはいくつか石碑や案内板も設置されてはいる。だが、まさにここに漂うのは「つわものどもの夢のあと」という無情感である。金色院の輝かしい伽藍は、一体どのようなものであったのだろうか。
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この金色院とゆかりの白山神社は、今でも小規模ながら存続している。苔むした石段を登って行くと、珍しい茅葺の拝殿が見える。なんと鎌倉時代の建築で、重要文化財。神秘的な佇まいである。
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そう、そして地蔵院である。この寺には、上記の阿閦如来をはじめ、数体の金色院の仏像が伝来している。だが、その場所を見つけるのに一苦労し、ようやく辿り着いたのだが、その非常に狭い境内は、全く森閑として人の気配もない。
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実は事前に分かっていたことなのだが、私が 40年前に対面することのできた上記の阿閦如来像を含む 3体の重要文化財の仏像は、1991年にこの寺から盗み出されていて、以来その行方が分かっていないらしい。・・・なんと痛ましいことであろうか。確かに一時期、各地の寺から仏像が盗まれる事態が相次いだが、この阿閦如来のように小ぶりな仏像は、卑劣な窃盗犯の手によって、どこかに持ち去られてしまったわけである。40年前の思い出が ring a bell した結果がこれだったか。本当にやるせない思いに囚われてしまう。実は私が上記の阿閦如来の写真を拝借したのは、とある古い本からなのであるが、その本におけるこの仏像の紹介記事には、お寺の人は収蔵庫を開けて、訪問客を残したまま庫裏に戻ってしまったとある。私も経験があるが、のどかな時代には、それが当たり前であった。そこに窃盗犯がつけ込むことになろうとは、人を疑うことのない善意に満ちた寺の人たちは、全く予想しなかったに違いない。現在は堅く扉を閉ざしたこの寺の小さな収蔵庫の前で、なんとかこの貴重な仏像が無事返還される日が来ますようにと、祈りを捧げることしかできなかった。

このように宇治の地には、平等院以外にも様々な歴史的な場所があって、興味は尽きない。宇治川の流れはこのように、まるでこの土地名産のお茶のような色である。今後宇治茶を飲むときには、その土地の歴史に思いを馳せることとしようではないか。
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by yokohama7474 | 2018-05-05 23:57 | 美術・旅行 | Comments(0)
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