川沿いのラプソディ


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フランツ・ウェルザー=メスト指揮 クリーヴランド管弦楽団 ベートーヴェン・ツィクルス 第 2回 2018年 6月 3日 サントリーホール

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フランツ・ウェルザー=メスト指揮クリーヴランド管弦楽団によるベートーヴェン・ツィクルス第 2回である。今回の曲目は以下の通り。
 「エグモント」作品84序曲
 交響曲第 4番変ロ長調作品60
 交響曲第 7番イ長調作品92

なるほど、前日に引き続いて、序曲のあとに交響曲 2曲である。さて、そうなると、前日のあの、前半と後半における編成の大きな違いがまたあるのか否かが気になるところ。私がこのシリーズの第 1回、天覧コンサートで思ったのは、この W=メストはなかなかの硬骨漢で、自らの信じる音響を追求してやまない指揮者であるということだ。案の定、この第 2回でも、彼の音響に対するこだわりを知ることができた。ひとつのこだわりは、コンサートの前半と後半のそれぞれにおいては、基本的に編成を変えないこと。前日の「プロメテウスの創造物」序曲はコントラバス 4本であったのに対し、今回の「エグモント」序曲はコントラバス 6本。まあ確かに、この「エグモント」序曲の方が「プロメテウスの創造物」序曲よりも後に書かれていて、劇的な度合いはこちらの方が高いだろう。だが私の思うところ、この編成は冒頭に置かれた序曲よりもむしろ、2曲目に演奏される交響曲の曲想によるのではないか。木管の規模をオリジナル通り各 2本とするなら、弦楽器はこの編成が上限であろうかと思われる。そんなわけで、前日の交響曲第 1番はコントラバス 4本で、この日の交響曲第 4番はコントラバス 6本で演奏されたのである。まずは密度の濃い音で、闇から光への展開を聴かせてくれた「エグモント」序曲が見事。
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前半 2曲目、ベートーヴェンの 4番は、なかなかに難しい性格の曲である。シューマンの言葉にある「2人の北欧神話の巨人 (3番と 5番) の間に挟まれたギリシャの乙女」というこの曲の位置づけは、確かに言い得て妙であるが、あのカルロス・クライバーの演奏以来であろうか、今ではこの 4番も、充実の内容を持った大交響曲であるとみなされている。W=メストの解釈もそれに乗った部分はありながら、やはりこの曲には古典的な均整があることも思い出させるものであった。前日の演奏が既にそうであったように、ここでの W=メストは、決して走り過ぎることなく、速めでありながら着実なテンポで、恣意性のない音楽を聴かせてくれた。曲を通した自然な緊張感が素晴らしく、決して情熱が前のめりになることはない。そう、そして私は目撃した。この第 4番の終楽章で、普段はおよそ演奏中に笑いを見せることのない W=メストが、満面の笑みを見せたことを。これだけ充実した音が出れば、指揮者としては嬉しい限りであろう。既に音楽監督に就任して 15年を経過した W=メストとクリーヴランドが達成しているレヴェルの高さには、完全に脱帽だ。

そして演奏会後半、さらなる驚きが私を待っていた。ベートーヴェン 7番は、もちろん古今東西屈指の名曲シンフォニーであるが、ここで W=メストが組んだ編成は、昨日の「エロイカ」と同じく、コントラバス 8本、木管は倍管という大規模なもの。金管は、ホルンが 3本で、トランペットは前日に続き、オリジナル通りの 2本である。そして、よくよく見てみると、コントラバス 8本の場合は通常チェロは 10本であるところ、今回は 11本。さらに驚くべきことに、ヴィオラも同じ 11本であったのである。なるほどこれによって、中音域がずしりと安定する。W=メストは曲に応じてその編成を変えるのである。つまりはやはり、自らの信念に忠実に音響を作り出しているということだろう。そしてこの日の 7番は、そうそう巡り合うことのないほど燃焼度の高い名演となった。W=メストの指揮は基本的にイン・テンポで、恣意的なテンポの揺れはない。この 7番では、「エロイカ」と異なり、きっちりと反復も実行しながら、密度の濃い音でずんずんドラマを作り出していた点、最大限の賛辞を捧げたいと思う。そしてまた、老練なコンサートマスターをはじめとする各奏者の、なんと大人であることよ。聴いているうちに本当に鳥肌が立って来るような出来であり、これぞ、長年共同作業を続けて来た指揮者とオケの相乗効果でなくてなんであろう。この規模のオーケストラが一丸となってうねり上がるさまは、現代オーケストラのひとつの究極のかたちではないかと思う。うーん、それにしても地元クリーヴランドの聴衆は、こんなスーパーオケをしょっちゅう聴けるわけで、それは本当にすごいことだと思うのである。これが彼らの本拠地、セヴェランス・ホール。一度行ってみたいものだ。
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この演奏会は、あの普段はクールな W=メストの笑顔を見ることができ、混濁することなく大編成オケを導く彼の指揮ぶりを見ることができただけで、それはそれは大変な充実感であったのである。7番が終わった瞬間は、まるでバブルの時期の演奏会のように、間髪を入れずブラヴォーがかかっていたのも、ゆえなきことではない。W=メストの信念が、オケを動かし、聴衆を動かす。東京では優れたオーケストラ演奏が多いとはいえ、この次元のものはちょっとない。実に素晴らしいと思った。残り 3回も、曲目編成とともにその内容が、極めて独自性の高いものになることを確信している私であった。

by yokohama7474 | 2018-06-03 22:43 | 音楽 (Live) | Comments(4)
Commented at 2018-06-04 17:12 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 通りすがり at 2018-06-04 17:20 x
こんにちは。通りすがりです。私も聴いてきました。聴きごたえがありました。クリーヴランドは、大きな音の時にはアンサンブルが乱れたりするものの、弱音の美しさは本当にさすがです。特に4番ではこの楽団の魅力が存分に発揮されていたと思っています。ウェルザーメストの解釈も正攻法でしたね。もう少し軽快にテンポ早く演奏されるかとも思っていましたが…。
Commented by yokohama7474 at 2018-06-04 22:38
> カギコメさん
コメントありがとうございます。是非コンサートをお楽しみ下さい。私はいつもバタバタしておりますので、申し訳ありませんが、また改めてご挨拶させて頂ければと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。
Commented by yokohama7474 at 2018-06-04 22:39
> 通りすがりさん
コメントありがとうございます。まさに正攻法の堂々たる演奏だと思います。これは残りも楽しみです。また是非お立ち寄り下さい。
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