川沿いのラプソディ


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メモ帳

ウラディーミル・アシュケナージ指揮 NHK 交響楽団 (ピアノ : ジャン・エフラム・バヴゼ) 2018年 6月 9日 NHK ホール

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NHK 交響楽団 (通称「N 響」) の今月の定期演奏会には、2人の指揮者が登場する。ひとりは尾高忠明。もうひとりは、このオケの桂冠指揮者であるウラディーミル・アシュケナージである。この記事で採り上げるのは、アシュケナージが指揮する 2種類のプログラムのうちの最初のもの。クロード・ドビュッシー (1862 - 1918) の没後 100年を記念するものであるらしいが、曲目は以下の通り。
 イベール : 祝典序曲
 ドビュッシー : ピアノと管弦楽のための幻想曲 (ピアノ : ジャン・エフラム・バヴゼ)
 ドビュッシー : 牧神の午後への前奏曲
 ドビュッシー : 交響詩「海」

先日、ミシェル・プラッソン指揮新日本フィルによるフランス音楽プログラムで、ドビュッシーの代表作である牧神の午後への前奏曲と「海」が演奏されたら、もっと聴衆が入っただろうか、と皮肉まじりに書いてみたのだが、なんとこのプログラムでは、休憩後の後半に、そのご馳走 2曲が連続して演奏される。さすが、偉大なる作曲家ドビュッシーの没後 100年を記念する演奏会である。

さて、アシュケナージは言うまでもなく、ピアニストとして、その音楽家としてのキャリアを始めた人であるが、もちろん指揮者としても輝かしい実績を積み重ねていて、この N 響とは、2004年から 3年間音楽監督を務めたあと、桂冠指揮者としての関係が続いている。そんな彼も、ふと気づいてみると、今年 81歳!! これはちょっと信じられない思いだ。というのも、もともと彼は大変小柄で、チョコマカと忙しく体を動かして指揮をする人であり、昔の 80歳の巨匠のように悠然たる指揮姿を見せるわけではないし、未だにステージの袖から走って舞台に出て来るような人なのである。
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実はここで明らかにしておきたいのは、私はピアニスト・アシュケナージの偉大さには、すぐにその場にひれ伏したいほどの最大限の尊敬を覚えているが、もう長年録音と実演で聴いてきている指揮者・アシュケナージには、残念ながら未だに、魂の震えるような経験をしたことがない。上記の通り彼の指揮は年齢を感じさせないもので、その意味では若々しいとは当然言えようが、もしそれを悪く表現するなら、円熟していないということになるのかもしれない。だがそれでも、人間性を含めた音楽家としての彼の偉大さを知る人間として、やはり彼のコンサートには極力足を運びたいと思っているのである。

今回の最初の曲目は、フランスの作曲家ジャック・イベール (1890 - 1962) の祝典序曲。この曲だけは今回のプログラムにおいて、ドビュッシーとは関係がないのだが、実はこの曲、日本とは大変因縁の深い曲である。というのもこれは、1940年、当時既に日中戦争に入っていた日本が、皇紀 2600年を祝して諸外国に委嘱した作品のうちのひとつであるからだ。ほかの曲は、ドイツのリヒャルト・シュトラウスの「皇紀 2600年奉祝音楽」、イタリアのピツェッティの「交響曲」、ハンガリーのヴェレシュの「交響曲」である。実はこれらに加えて、英国のブリテンが「鎮魂交響曲」を書いたが、おめでたい機会に鎮魂とは何事かという日本政府の怒りに触れて却下されたという話は有名だ (その事情についてはなかなか簡単ではないらしく、Wiki でも面白い情報を得ることができる)。ところで、この時皇紀 2600年を記念して初演された 4曲の初演時の演奏が CD で手に入るのはご存じだろうか。Altus レーベルから、その道の権威である片山杜秀による詳しい解説付で出ている。いずれも演奏は皇紀二千六百年奉祝交響楽団で、指揮者はそれぞれ異なるが、このイベールの曲を指揮したのは、山田耕筰である。
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その名の通り祝典的な曲で、今回のアシュケナージと N 響の演奏にも、祝祭的な華やかさがあってその点はよかったのだが、いかんせん、いつも思うことだが、アシュケナージの指揮には、なぜか流れのよさがない。もっとリズミカルに、もっと前に進む力のある演奏なら、もっとよかったのにと思う。

2曲目に演奏された、ドビュッシーのピアノと管弦楽のための幻想曲は、かなり珍しい曲で、私も今回初めて耳にするもの。1889年から 1890年にかけて作曲された若書きの作品だが、フランスの芸術家にとって重要な意味を持っていたローマ賞 (1884年、カンタータ「放蕩息子」で受賞) の受賞後の提出作であるらしい。25分くらいのそれなりの長さを持つ作品で、聴いてみると実に親しみやすい。五音音階で東洋的に響く点もドビュッシーらしいし、我々日本人にもノスタルジックに響くのである。演奏もなかなか洒脱で、ソロを弾いたジャン・エフラム・バヴゼというフランスのピアニストのことも私は知らなかったが、さすが、自身この上なく偉大なピアニストであるアシュケナージのお眼鏡に叶うだけのことはある。シャンドス・レーベルからは、この作品を含むドビュッシーの全ピアノ作品や、ベートーヴェンのソナタ、モーツァルトの協奏曲などの録音が出ているらしい。アンコールで演奏したやはりドビュッシーの「前奏曲第 2巻」からの「花火」も、実に見事な演奏であった。
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そして、休憩後に演奏されたドビュッシーの代表作 2作である。私はこれらの曲、とりわけ「牧神」では、遅めのテンポで音楽の実在感を丁寧に表そうというアシュケナージの姿勢には好感を持った。彼の指揮をよく知る N 響であるから、くっきりとした音像を提供しつつ、指揮者の求めるテンポに従いながら、密度の濃い音で、きめ細かい表情を表出していたと思う。その結果、まさにアシュケナージという善良なる音楽家の姿がそのまま現れたような音楽になっていることには、感動した。だが、これが音楽の面白くも難しいところだが、その音楽が世界で最も説得力のあるドビュッシー演奏であったかと言えば、正直なところ、少し違うような気がしてならないのである。これまで聴いてきた演奏も、そして今回も、アシュケナージは自らの信じる指揮をしたものと思う。だが、ピアニストとして彼が実現してきた次元をどうしても思い出してしまうので、何を聴いても期待感と現実にギャップがあるのを否定することができないのである。これは正しい彼の音楽への接し方ではないかもしれない。だが、同じような思いを抱いているファンの方も、それなりにおられるのではないかと思う。繰り返しだが、これだけ指揮者としての実績を誇るアシュケナージに対して、今さらそのような評価を下すのは適当ではないかと思いつつ、彼が 80を超えた今、例えばまたソロでピアノの前に向かってくれれば、聴衆はまさに魂を動かされる体験ができるのでは・・・と勝手に思ってしまっているのであります。だが、また来週も次のプログラムを聴くことができる予定で、とりあえず私はそれを楽しみにしているのである。

by yokohama7474 | 2018-06-10 22:27 | 音楽 (Live) | Comments(2)
Commented by usomototsuta at 2018-06-14 00:52 x
こんばんは。少し珍しくやや辛口の評価でしたね。私はアシュケナージが監督の頃のN響を殆ど聴いておりません。もとより自分でハッキリと意見を持つほどの耳ではありませんが、仰るように他のところでも「指揮者アシュケナージ」に対するあまり肯定的でない評価を読んだ記憶があります。
 彼の弾くピアノ版「展覧会の絵」と彼自身の編曲によるオケ版同曲のCDを持ってます。ピアニストのプライドが覗くアレンジで面白いですが、やはりピアノ版に比べるとそれほど多くは聴きません(笑)。ピアニストとしてのステージを楽しみにする方が多いんでしょうね。
Commented by yokohama7474 at 2018-06-15 00:16
> usomototsutaさん
これはなかなか難しい問題で、指揮者アシュケナージとピアニストアシュケナージの間には、共通点と相違点が様々あると思います。きっと彼自身は、音楽家アシュケナージという感覚で活動してきているのだろうと思います。ともあれ、偉大な音楽家という意味では、誰しもが認める存在なので、これからも心して彼の音楽を聴いて行きたいとは思っております。
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