川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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メモ帳

くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質 東京ステーションギャラリー

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隈 研吾 (くま けんご) は 1951年生まれの、現代日本を代表する建築家である。最近では、2020年の東京オリンピックのための新国立競技場の設計に関わることで、一気に知名度を上げた感がある。この展覧会は、去る GW まで東京ステーションギャラリーで開かれていた彼の回顧展。私が訪れたのは会期終盤だったが、会場はかなりの混雑で、隈人気を伺わせるに充分なものであった。展覧会の題名が一風変わっていて、「くまのもの」とある。このひらがなに独特な印象があるが、「くま」さんが手掛ける「もの」という意味であろうが、「もの」とはつまり物質。この展覧会の副題にある通り、物質がささやいたり、かたったり (ここもひらがなだが、これは「語ったり」であって、「騙ったり」ではないと思う。笑)、そんな対話を楽しむものであろうか。今回の展覧会では、写真は撮影し放題。きっと SNS をやっている人たちにとっては、恰好のヴィジュアルを提供した場所になったのではないか。以下も、すべて私が現場でスマホ撮影した写真を使います。まずは、建築家自身の言葉から。
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なかなか面白い言葉ではあるが、建築にも一通りの興味を持つ私には、以前から気になることがある。それは、現代の建築家は誰も皆、極めて雄弁だということだ。公共性を持つ建築という芸術分野には、その公共性ゆえに、なぜそのような建物を設計したかという説明が、社会に対して義務付けられているという感覚があるのかもしれない。だが、ある建築を見て、「何かよく分からないけど、これって面白い」と思うことも、やはり大切なのではないだろうか。この展覧会においては、隈の過去 30年間に亘る様々な仕事の模型や設計図や、ある場合には素材を見ることで、その建築美学の神髄に迫る試みがなされている。それは取りも直さず、彼の建築を見て、「これって面白い」と改めて思うきっかけになったろうと思う。実はかく言う私も、彼の設計した夥しい数の施設のうち、実際に知っている例はさほど多くない。だが、例えばサントリー美術館と根津美術館がともに彼の設計であると知ると、なるほどなるほど、と思うのである。確かにそこは、スタイリッシュではあっても無機的な空間ではなく、木のイメージがある。木という物質のささやくことやかたることに、耳を澄ますことのできる建築と言えばよいだろうか。そして展覧会の入り口がいきなりこんな感じだと、それは写真を撮るでしょう (笑)。
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木がささやき、かたっていますよ!! 下の写真では、手前に見えるのはスターバックス大宰府天満宮表参道店の模型、奥は梼原 (ゆすはら) 木橋ミュージアムの模型。後者の所在地は高知県であるらしい。
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会場には模型だけでなく、何やらインスタレーションのようなものも展示されている。これはロンドンのロイヤル・アカデミーの依頼によって作られたもので、竹ヒゴを編んで上から吊るしてあるのだが、その竹ヒゴは床下から香料 (畳とヒノキの香り) を吸い込んで、空間をそのような日本的な香りで満たすようになっている。これは、日本人ならではの繊細な美意識を、世界のどこででも再構成してみせる技である。
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そして、話題の新国立競技場の模型もある。先日 NHK の「探検バクモン」で、現在建築中のこの施設を上から見下ろせる喫茶店を紹介していたが、実は私はそこに行ったことがある。確かにそこに行けば、ちゃんと工事が進んでいるのか否かをつぶさに見ることができるのである。2年後、ここで熱狂のスポーツの祭典が行われることを思うと、心躍ることを禁じ得ない。
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展覧会では、隈が様々な素材を使ったユニークな建造物に触れることができるが、これなども本当に面白いものである。鎌倉の名刹、建長寺にある、虫を供養するためのモニュメント。虫好きの養老孟司の発案で、ステンレスを組み合わせた上に、ガラス繊維と現地の砂と接着剤を混ぜて吹き付けてあるそうである。
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これは Water Branch House という名前がついていて、ポリタンクからヒントを得たレゴのようなもの。自由に組み合わせることで、災害時にも強い、外部インフラを必要としない自立システムになるという発想。展覧会では、これを自由に触ってよいことになっていた。ま、触ってもポリタンクなんですけどね (笑)。
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様々な隈の作品を体感したあとに、観客はこのような巨大な樹形図を見ることになる。何やらクラゲのようにも見えるが、これは材質別に彼の設定した建造物の系譜を示したもの。各材質は上部に記載されていて、下部は、今度は各建築の機能で括られている。「包む」「編む」「支えあう」等々。なるほど、物質もかたちによって、様々に関係性を持つのである。
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さて、展覧会の最後の方にはこのような模型が展示されているが、これは一体何だろうか。
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実はこれ、品川と田町の間にこれから建造される新駅の模型。現時点では品川新駅という仮称呼ばれているが、つい先ごろ、JR 東日本が名称募集であるこことを発表した。今月いっぱいが受付期間であるので、ちょっと何か考えてみようかしらん。「くまのもの」駅ではダメだろうなぁ。この駅は 2020年春、ということはつまり東京オリンピック前に暫定開場するらしい。この駅だけでなく、現在丸の内・大手町エリアで進む数多くの再開発事業は、すべてこのタイミングまでに完了予定と聞く。建造物は東京の顔であり、都市の文化度を示すもの。これからの 2年、いかにして我々は新たなランドスケープを作り出すことができるのであろうか。この駅に実際に人々がこのようにやってくるのは、もうすぐなのである。
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この展覧会での展示物は非常に多かったので、ここでご紹介できたのはごく一部である。もし隈研吾のこれまでの業績にご興味をお持ちの向きは、JA (the Japan Architect) という建築雑誌の 109号、題して "Kengo Kuma : a LAB for materials" (英文、日本文併記) が一般書として手に入るので、お薦めである。私も会場でこの雑誌を購入し、パラパラとめくっては、様々な物質のささやきやかたりに、耳を傾けているのである。
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by yokohama7474 | 2018-06-11 23:39 | 美術・旅行 | Comments(0)
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