名古屋の古寺 その 2 金龍寺、建中寺、桃厳寺、龍泉寺、甚目寺

前回に引き続き、名古屋の奥深さを実感するような古寺の数々をご紹介したい。尚、前回も今回も、すべての寺院を一日で回っているわけではなく、何日かに分けての訪問であることを申し添えておこう。まず最初は金龍寺。
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相当なお寺好きでも、この寺を知っている人は少ないかもしれない。かく申す私も、東海地方の珍しいスポットを紹介する本で見るまで、全くその存在を知らなかった。上の写真に「大観音」とあるが、一体どのようなお寺なのだろうか。境内は非常に狭く、このようなお堂と、その前に立つ僧侶の肖像彫刻がほぼすべてである。
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実はこの寺は 1940年に創設された、比較的新しい寺院。戦災で焼けてしまったため、場所を移転しているが、この寺を開いた僧侶の名は、近藤堯常。そう、上の彫像の人である。彼は奈良の長谷寺で修業し、1956年に、その長谷寺の本尊をモデルに、巨大な十一面観音を制作した。これは借りてきた写真であるが、その大迫力は実感して頂けるものと思う。高さは実に 7m!!
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この巨大な観音様を前にして、私は痛く感動してしまった。昭和の世にこれだけの巨像を造立することは、並大抵のことではない。古いものではないので、文化財指定はないものの、時間の経過とともに、いずれは文化財という認定を受けることは間違いないだろう。是非多くの方にご縁を持って頂きたいと思う。

さて次は、名古屋屈指の名刹、建中寺である。
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この寺は、天下の徳川御三家のひとつ、尾張徳川家の菩提寺である。このような立派な門に、葵のご紋が。尾張徳川家からは結局将軍は出なかったし、その歴代藩主の墓所は普段は公開していないようだが、その誇りは、この寺に行けば今でも感じることができる。
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興味深いのは、明治に入って、名古屋商工会議所ができたときに、この建中寺にその建物が置かれたのである。その名も徳興殿。1896年の建造で、国の有形登録文化財に指定されている。内部は公開されておらず、現在でもなんらかの公的施設として使われているようだ。名古屋の人たちの、尾張徳川家に対する尊敬の念がよく分かる。
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さて、次にご紹介したかったのは、千種区にある太龍寺というお寺なのであるが、この寺には車のナビでもなかなか辿り着かないし、境内の裏側から入ろうにも、門に鎖がかかっていて、入れない。この寺には、両翼のある城郭風の建物に、五百羅漢が安置されているらしく、是非見たいと思ったのであるが、寺の方針で一切の観光客を排除しているらしい。ネット検索すると幾つかのこの寺に関する記事 (中には、忍び込んで寺の人に怒られたというものもある) にヒットするのだが、これは大変に残念なこと。文化財はその寺だけのものではなく、広く歴史を愛する人たちに公開されるべきというのが私の持論だが、一方で、信仰の場である以上は、物見遊山で有象無象がやって来られても困るという考えも理解はできる。ただ、ここは地元の名古屋市なり千種区が、文化財保存に乗り出すべきではないだろうか。

そんなわけで、大龍寺拝観を果たせなかった私は、通りすがりの面白そうなお寺に詣でることにした。その名は桃厳寺。
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たまたま見つけた表示によると、この寺にも大仏があるという。境内を進んで行くと、このような厳めしい看板があって、ちょっと気持ちが引き締まる。もちろん、仏様との無言の対話をするために、ここまでやってきたのである。
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そして見えてきたのは、このような緑の大仏で、その存在感には圧倒されるものがある。たまたま天気のよい日であったので、大変印象的なショットを何枚も撮ることができた。たまたま通りかかった寺とはいえ、私はここを訪れたことを、一生忘れないと思う。
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そして興味深かったのは、前回の記事でご紹介した織田信長の父、信秀の廟所がここにもあることだ。五輪塔に歴史の重みを感じる。
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さて、次にご紹介するのは、龍泉寺。ここは、名古屋城を鎮守する尾張四観音のひとつ。このような立派な門と多宝塔が見える。この仁王門は重要文化財である。
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実はこの寺にある有名な文化財は、円空仏である。城のような建物が宝物館になっている。小さな千体仏と、高さ 112cmの馬頭観音など、いかにも円空らしい荒々しい彫りの仏像がどっしりとおわします。大変貴重なものである。
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最後にご紹介するのは、甚目寺 (じもくじ) である。実はここも尾張四観音のひとつ。因みに残りの 2ヶ所は、荒子観音と笠寺観音である。前者には私も行ったことがあり、凄まじい数の円空仏で知られていて、それらは毎月第 2土曜日にのみ公開される。それはそれで、実際に見に行くと大変圧巻であるのだが、今回の取材対象に入れることはできなかった。またいつかご縁があればご紹介したい。というわけで、甚目寺である。597年!! の創設と伝えられる、大変に古い名刹。
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大変立派な門構えの寺であり、この南大門も重要文化財である。だがこの寺で有名なのは、なんといっても三重塔である。1623年の建立で、やはり重要文化財なのであるが、高さ28mと、三重塔としては日本有数の高さを誇る。その姿は大変に美しい。
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またこの寺の簡素な東門も、やはり江戸時代初期の建築で、重要文化財である。
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面白かったのは十王堂。鶏が入るので扉を閉めるようにとの注意書きも微笑ましいが、閻魔大王をはじめとする十王たち (と、それから奪衣婆) の存在感が不気味。
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そして真ん中のその閻魔大王と地蔵菩薩の前には、なにやら秤のようなものが。
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これ、よく見ると、測られているのはどうやら、亡くなった人の罪の重さであるようだ。あーあ、地獄行きかな、この人は (笑)。
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これで、2回に亘る名古屋の古寺のご紹介は尾張、じゃないや終わりであるが、それぞれに個性的な寺が多く存在していることを、少しでも認識して頂ければと思う。名古屋は、手羽先やひつまぶしを楽しむだけの場所ではなく、歴史探訪の面白さがぎゅっと詰まった地域なのである。

by yokohama7474 | 2018-06-15 01:23 | 美術・旅行 | Comments(0)  

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