川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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ピエタリ・インキネン指揮 日本フィル (ピアノ : サリーム・アシュカール) 2018年 6月15日 サントリーホール

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日本フィルハーモニー交響楽団 (通称「日フィル」) とその首席指揮者、フィンランド出身のピエタリ・インキネンの、4月に続く定期演奏会での共演である。今回のプログラムは、上のチラシにある通り、イタリアの「歌」がテーマであるらしい。しばらく前に、ダニエーレ・ルスティオーニ指揮東京都交響楽団の演奏会でも、ドイツ・オーストリア圏の作曲家とイタリアとの関わりがテーマになっていたが、コンセプトとしては少し近いものがある。今回のプログラムは以下の通り。
 シューベルト : イタリア風序曲第 2番ハ長調D.591
 メンデルスゾーン : ピアノ協奏曲第 2番ニ短調作品 40 (ピアノ : サリーム・アシュカール)
 メンデルスゾーン : 交響曲第 4番イ長調作品 90「イタリア」

私はこのブログでこれまで、インキネンが繰り返し取り上げてきているワーグナーやブルックナーの演奏に対し、どうしても迫力不足のきらいがあるという率直な感想を述べてきたが、今回のプログラムを聴いて、この指揮者の素晴らしい才能を実感することができた。前期ロマン派の音楽をこれだけニュアンス豊かに演奏できるのに、あえて分厚い音の後期ロマン派にあえて向かっていることには、何か意図があるのかもしれないと、初めて考えた次第。最初のシューベルトの作品は、決して頻繁に演奏される曲ではないが、私はたまたま先週、イシュトヴァン・ケルテス指揮ウィーン・フィルによるシューベルト全集の CD 4枚組を一気に聴いていて、その中にこの曲が含まれていたので、耳には多少馴染みがあった。これはロッシーニの影響のある演奏会用序曲で、「イタリア風序曲」には第 1番と第 2番があるようだ。今回のインキネンと日フィルの演奏は、冒頭はそれなりに重々しくはあったものの、全体的には流れがよく、目のつんだ音が聴かれる演奏で、素晴らしかった。また、2曲目のメンデルスゾーンのピアノ協奏曲 2番も、さほど演奏頻度は多くないにも関わらず、ピアノのアシュカールともども、なんとも美しい演奏で、惚れ惚れしてしまった。このアシュカールという人、私も今回初めて聴いたのだが、ピュアなタッチが素晴らしく、きっとモーツァルトなどもよいと思う。リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管 (もちろん、メンデルスゾーン自身が音楽監督であったオケだ) とともに、このメンデルスゾーンのピアノ協奏曲 2曲を録音しているという事実からも、メンデルスゾーンに定評があり、抒情的な音楽性の高さが分かろうというもの。
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因みにこのアシュカール、数々の名オーケストラや名指揮者との共演実績についてはプログラムに記載あるのだが、生年や国籍の記載はない。音楽自体の評価とは全く関係ないが、実演に触れた音楽家のバックグランドについて知りたいと思うのが人情だ。そこで帰宅後調べてみると、1976年生まれ。生地はナザレで、なんとなんと!!「パレスチナ系ユダヤ人」とのこと。我々日本人にはこのあたりの感覚はどうしても鈍くなってしまうのだが、一般的な理解では「パレスチナ」と「ユダヤ」は完全に対立項であり、しかもナザレとは、あのキリストの出身地である。なるほど、対立の構図の中の愛から生まれた音楽家であるがゆえに、我を捨てて純粋に音楽に貢献しようとしているのであろうか。彼の履歴の最後に、戦争地域や途上国の音楽家及び音楽団体をサポートする非営利団体「ミュージック・ファンド」の大使を務めるとあるのは、そういう背景あってのことだったのだ。ドイツにおけるユダヤ人であったメンデルスゾーンの協奏曲のあと、彼の友人であった、こちらは生粋のドイツ人、シューマンの「トロイメライ」を、アンコールとして実に感情豊かに弾いたのも、そう思うと感慨深い。

そして休憩後、メインの「イタリア」は、私も大好きな曲なのだが、インキネンと日フィルが爽快感を持って駆け抜けたことに、本当に心が洗われた気分となった。弦楽器の多彩な表現力はもちろん、ここではフルートをはじめとする木管も極めて重要だし、第 3楽章では、のどかなホルンの二重奏が曲の流れを作り、そして狂乱の第 4楽章に入って行くのだが、そのあたりも大変にニュアンス豊かで素晴らしかった。やはりインキネンにはこのタイプの音楽が似合う。是非今後は、ハイドン、モーツァルトあたりを沢山演奏して欲しい。そこには、音楽の醍醐味がたっぷり詰まっているのだから。
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このインキネン、今回のコンサートで配布された資料によると、もともと 2019年 9月で首席指揮者の任期が切れる契約であったところ、この度 2年延長し、2021年 9月までになったとのこと。もちろんその間に東京オリンピックもあるし、実はこのコンビは来年 4月、このオケとして 13年ぶりのヨーロッパ演奏旅行に出かけるらしい。インキネンの故国フィンランドと日本の国交 100周年、そして、日フィルの創立者で、母親がフィンランド人であった渡邊暁雄の生誕 100年を記念するもので、首都ヘルシンキを含むフィンランドや、ドイツの地方都市、ウィーン、そしてロンドンを含む英国の、合計 10都市での公演で、メインにはシベリウス 2番とチャイコフスキー 4番、その他ラウタヴァーラや武満徹の弦楽のためのレクイエムなどを演奏する。これは是非頑張って欲しいものだ。

さて、終演後にはサイン会があったので参加した。背景に東京タワーをあしらった、なかなかおしゃれな写真をバックに「アリガトウ」を連発し、和やかな雰囲気であった。
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ただ、サインはちょっとシンプルすぎませんかね (笑)。ま、では、これからインキネンと日フィルには、シンプリシティの音楽を期待することとしましょう。
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by yokohama7474 | 2018-06-16 00:45 | 音楽 (Live) | Comments(2)
Commented by michelangelo at 2018-06-17 15:02 x
yokohama7474_Crop Stock様

これまでの日本フィル&インキネン指揮(特にワーグナーとブルックナー)公演との違い、大変興味深く拝読しました。又、アシュカール氏のバックグラウンドまでレポートして下さり、ありがとうございます。

インキネンさん、2021年9月まで延期とは驚きました。幾つも兼任されて、お写真より幾分スリムになられた印象を受けますが本当にタフですね。

サインの書体は、大勢に対応しなければならないサイン会と数人で終了した日と変わりないように思います。

音楽家の殆どが「ミュージシャン(音楽家)」であり、アーティスト(芸術家)は少数派だと私は感じます。後者の場合、スペース(プログラムやCDなど)に配置されるサインのセンスは極めて美しく、完成された美を思わせます。繰り返し見て、飽きない絵画や書道のようです。
Commented by yokohama7474 at 2018-06-17 18:19
> michelangeloさん
指揮者のレパートリーに関して先入観を持つことはよくないと思いますが、私のこれまでのインキネン体験においては、今回のプログラムの説得力は心に残るものでした。そしてもちろん、その説得力はまた今後も変わって行くことでしょう。面白いのは、昨今の日本のオケでは、昔のように偉い巨匠が時々振りに来るというだけではなく、このインキネンのような世界的に見ても有望な若手が、日フィルとともに、さらに高い地点を目指しているということですね。彼らの演奏に継続的に立ち会うことができる東京の聴衆は恵まれていると、私は思います。
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