川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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メモ帳

エリック・ハイドシェック (ピアノ) 田部井剛指揮 カメラータ・ジオン 2018年 7月 8日 東京文化会館小ホール

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フランスのピアニスト、エリック・ハイドシェックは 1936年生まれで、来月 82歳になる。シャンパーニュ出身で、実家はなんと、有名なシャンパン、シャルル・エドシックの醸造家であるらしい。
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彼は 20世紀を代表するフランスの大ピアニスト、アルフレッド・コルトー (1877 - 1962) の愛弟子のひとりであり、60年以上に亘る演奏歴を持っている。その活動はもちろん国際的ではあるが、いわゆる世界トップクラスの超人気ピアニストというよりは、一部のファンに深く愛されるという印象がある。特に日本では、宇和島でのライヴ録音などを通してファンが多いようだが、そのひとつの理由は、個性的な音楽評論家であった故・宇野功芳が彼の演奏をいつも激賞していたことだろう。私も多少はその影響を受けて、彼の CD を何枚か聴いたことがあるが、明るく人間的なタッチのピアノは、確かになかなか素晴らしい。だが、実演で接する機会はこれまでになく、今回が初めてになる。遅きに失した感はあるが、80を超えてもこのように日本にやってきてくれることに感謝して、その音楽に虚心に耳を傾けたい。これは以前の来日のときの様子だが、今回もこのような衣装で登場した。
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今回の演奏会は、プログラムが面白い。オール・モーツァルトで、以下の通り。
 ピアノ協奏曲第 14番変ホ長調K.449 より第 2楽章
 ピアノ協奏曲第 16番ニ長調K.451 より第 2楽章
 交響曲第 29番イ長調K.201 より第 2楽章
 ピアノ協奏曲第 12番イ長調K.414 より第 2楽章
 交響曲第 41番ハ長調「ジュピター」K.551 より第 2楽章
 ピアノ協奏曲第 21番ハ長調K.467 より第 2楽章
 他、巨匠選りすぐりの独奏を予定しております

最後の一文は、プログラムに掲載されている通り。つまり、アンコールとしてピアノ・ソロが聴かれるということだろう。休憩は、ピアノ協奏曲 12番と「ジュピター」の間に入る。いやしかしそれにしても、モーツァルトのピアノ協奏曲と交響曲の第 2楽章ばかりとは、なんともゆったりとした曲目構成であることか。実際にこれらはいずれも例外なく、ゆったりとした音楽であるが、緩徐楽章というには少し速めのテンポで、大抵はアンダンテ (= 歩く速さで) の指示がある。この日の東京は晴れたり曇ったりの暑い日で、日曜の午後、優雅な音楽に耳を傾けるとは豪奢なことではないか (ただ、西日本での豪雨による甚大な被害の痛ましさを、忘れることはできないが・・・)。オーケストラは、田部井剛 (たべい つよし) 指揮のカメラータ・ジオン。この室内オケは群馬に本拠地を持ち、ジオンとは「慈音」から来ているという。田部井自らが 2003年に結成したもので、コントラバス 1本の極小編成。これが田部井。
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ハイドシェックの音は想像通り、美しいものではあったが、かなり音量もある。極限の繊細さを感じさせるよりは、まさに歩くような速さの音楽から、人間の春夏秋冬の営みを連想させるようなものであった。呼吸は自然だし、音の流れもよい。そこには滋味があるとは言えるが、それは決して後ろ向きのものではなく、しっかりと前に向かって進んで行くような音楽であったと思う。技術的に破綻はないが、それ以前に、技術のことすらあまり感じさせないほどの自然さがあるので、誰もが安心してモーツァルトの世界に身を委ねることができた。オケの伴奏も、きっちりと仕上げていて過不足ない出来。心が温かくなるような演奏会であった。

だが、さすがに第 2楽章だけを集める内容であれば、これだけ曲数があっても、すぐに終わってしまう。15時開始、途中 20分間の休憩を挟んでも、16時15分にはプログラムを終了してしまった。さて、その後は「巨匠選りすぐりの独奏」である。演奏されたのは以下のような曲。
 
 バッハ : フランス組曲第 6番からサラバンド
 ドビュッシー : 「子供の領分」から「小さな羊飼い」
 ヘンデル : 組曲第 3番からアリア
 ハイドシェック : プレリュード

なるほど、バロック物と自作を交えたフランス物を交互に弾いたわけである。彼は演奏の前に曲目の紹介を英語で行っていたようだが、ピアノに向かいながら喋るので、ほとんど聞き取れなかった。自作のプレリュードについては、フランス語ではなんとか、英語では LOVE なんとか、と言っていたようだが・・・。まあ、言葉はともかく、バロックもフランス物も、雄弁な音楽であり、ハイドシェックの個性が表れていたと思う。実は私はこれらのアンコールを聴いて、うーん、モーツァルトのアンダンテばかりでなく、少しはこのような音楽をメインのプログラムに入れてくれた方が、変化があってよかったのに・・・と思ってしまった。その点は少し残念な気がした。ともあれ、上記の曲のあと、最後に彼は数秒ピアノを弾いたが、早々に切り上げた。そしてユーモラスに腕をさすって見せることで、16時30分にコンサートは終了した。

終演後のサイン会も和やかな雰囲気であった。よく主催者側から、ひとり一点という制限がつくことがあるが、今回はそれもなく、熱狂的なファンの人は沢山サインをもらって満足げであった。中には、ショパンの第 2コンチェルトのスコアにサインをもらっている人もいて、ハイドシェックはその冒頭のオケの部分を朗々と口ずさみ、「アルフレッド・コルトーの前でこの曲を演奏したものだよ」と懐かしそうに呟いていた。それにしても、おしゃれな人である。
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言い忘れたが、今回は彼の初来日から 50周年を記念しての演奏会。その人間味あふれるピアノを、これからも日本の聴衆に聴かせ続けて欲しいものである。

by yokohama7474 | 2018-07-08 22:31 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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