川沿いのラプソディ


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メモ帳

ロレンツォ・ヴィオッティ指揮 東京フィル (ピアノ : 小山実稚恵) 2018年 7月19日 サントリーホール

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今月の東京フィルハーモニー交響楽団 (通称「東フィル」) の定期公演を振るのは、ロレンツォ・ヴィオッティという指揮者である。むむむ、ヴィオッティという指揮者には聞き覚えがある。実は最近の私は若干バタバタ気味で、このコンサートも、事前にあまり内容をよく確認もせずに現地に赴いてから、開演前の僅かな時間に、この指揮者について思いを巡らせていたのである。ちょっと待てよ、最近名前を聞かないが、マルチェッロ・ヴィオッティという、オペラを得意とする指揮者がいたはず・・・。何か関係があるのだろうか。それから、このロレンツォ・ヴィオッティは、今度東京交響楽団でもヴェルディのレクイエムを振ることになっていたはずだ。プログラムによると、東フィルとは今回が初顔合わせのようだが、東響は以前も指揮したことがあるらしい。だがそれにしても、上に掲げたチラシに「気鋭のサラブレッド」とあるので、やはり血筋のよい音楽家なのであろう。そんなことを考え、帰宅してから調べて判明したことには、今回の指揮者ロレンツォ・ヴィオッティは、やはりマルチェッロ・ヴィオッティという指揮者の息子なのである。だが、父マルチェッロの名前を最近聞かないのは道理である。2005年に 50歳の若さで脳卒中に倒れ、死去している。私は自らの不明を恥じ、ここに改めて、今は亡き偉大なる才能を偲びたい。これがマルチェッロ・ヴィオッティ。
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この指揮者、ヴィオッティという名前から当然イタリア人だと思っていたが、イタリア人の両親のもとにスイスに生まれたという。そしてその息子であり、今回の演奏会の指揮者であるロレンツォも、やはりスイス生まれと紹介されている。より正確にはローザンヌの生まれで、生年は 1990年。なんと、未だ今年 28歳という若さである。上記の東響には 2014年に代役で登場、2016年にも同楽団を指揮していて、次回の登場でヴェルディのレクイエムを振るのは、来年 1月である。彼は 2013年に 22歳でカダケス指揮者コンクールに優勝して以来、大躍進を続けており、コンセルトヘボウ管やウィーン・フィルの指揮台にも、代役ながら既に登場している。なるほど、20代にして既に世界の一線で活躍している指揮者なのだ。これは親が誰であろうと関係ない、彼自身の能力ゆえである。このような髭面なので、20代には見えないのだが。
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そんなロレンツォ・ヴィオッティが今回指揮したのは、以下のようなフランス音楽プログラム。
 ラヴェル : 道化師の朝の歌
 ラヴェル : ピアノ協奏曲ト長調 (ピアノ : 小山実稚恵)
 ドビュッシー : 牧神の午後への前奏曲
 ドビュッシー : 交響詩「海」

フランス音楽にも様々あるが、近代を代表するドビュッシーとラヴェルの、それぞれの代表作を並べたプログラムは、この炎暑の東京で聴くにはちょうどよい、涼やかな内容だ。特に後半のドビュッシーは、今年が没後 100年ということもあり、この 2曲の代表作をコンサートの後半に続けて演奏する例は、つい先ごろもアシュケナージと NHK 響でもあった。聴きごたえ充分の曲目である。そして演奏も、概して流れのよい、充実したものであったと思う。このヴィオッティは今回、いずれも譜面を見ながらの指揮であったが、「牧神」だけは指揮棒を持つことなく素手での指揮。しかも冒頭部分は指揮をせずに、フルート奏者がソロを吹き出すタイミングはお任せであった。つまり彼は、自らの強い指導力でオケを引っ張ろうというタイプではなく、あくまでも自然な流れを尊重して、楽員を乗せて行くタイプなのであろう。その一方で、最初の「道化師の朝の歌」では、この短い曲に様々に現れる多彩な音を、大変丁寧に描き出していたし、「海」においても、静かな部分から息長く盛り上がって行く部分には、設計の巧みさを感じさせるものがあった。なるほど、これはただならぬ 28歳だ。このような指揮者が若い頃から日本で演奏活動を展開してくれれば、私たちはもしかすると、彼がどんどん高みに達するところを目の当たりにすることになるかもしれない。考えてみれば、東フィルの首席指揮者アンドレア・バッティストーニは、このヴィオッティよりも 3歳上であるだけの、今年弱冠 31歳という、やはり俊英である。今回のヴィオッティの演奏を聴いて、さらに力強いレパートリーを聴いてみたいものだと思ったが、考えてみれば東フィルでは、そのバッティストーニが既に力強いレパートリー (ブルックナーやマーラーはないものの) をかなり採り上げている。なので、そのような対照も、年間のプログラミングの観点からは興味深い (バッティストーニが今回のようなプログラムを振るとは考えにくい)。これは 3年前、25歳のヴィオッティが、ザルツブルク音楽祭で、ネスレをスポンサーとしてのヤング・コンダクター賞を受賞したときの写真。若いなぁ。
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それから、今回のソリスト小山実稚恵は、言うまでもなく日本を代表するピアニスト。
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私は彼女のピアノは常々素晴らしいとは思っているものの、やはり抒情的な音楽に、その美感が最大限に発揮されるものと思っている。それゆえ今回のラヴェルのような、切れ味と、ある種の踏み外しが必要な曲では、その持ち味の最良な部分を聴けたかというと、正直なところ少し疑問。もちろん、タッチは澄んでいて、第 2楽章冒頭のソロのような部分では充分に美しかったのであるが、耽美性はあまりないし、全体にもっとヤンチャなピアノの方が、この曲には合っていると感じた。そういう意味では、彼女がアンコールで弾いたドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」の方が、小山独自の抒情性が感動的に響いたと言えると思う。これはある意味では、ラヴェルとドビュッシーの音楽の持ち味の違いとも言えるかもしれない。ラヴェルにも美しいピアノ曲は沢山あるが、そう、例えば、「海原の小舟」とか「悲しい鳥たち」(おっと、いずれも今回の演奏会の冒頭で演奏された「道化師の朝の歌」の原曲と同じ、ピアノ曲集「鏡」の中の曲だ。だって、「夜のガスパール」よりは抒情的ですから。笑) とか、あるいは「水の戯れ」でもいい。そこにある美しさには、華麗なる繊細さが伴っていて、ドビュッシーのような、単純そうでいて実は複雑な情緒とは少し異なる。似て非なるもの。その差を自由に感じるのが音楽の面白さのひとつだろう。

今回の東フィルの演奏を聴いて思ったのは、とても素晴らしい部分と、若干の不安定さを感じさせる部分が同居していること。弦楽器の素晴らしい音が、ふとした瞬間に、何かちょっと響き切っていないかなと思う時もあったり、木管や金管のソロには極上の瞬間もあれば、細かいミスも散見されたように思う。考えてみれば、爆裂系のバッティストーニや、カリスマで音楽を高みに運んで行くチョン・ミョンフン、ちょっと変化球で攻めるプレトニョフというこのオケの指揮者陣は素晴らしいものの、一方では、きっちり細部を締めるタイプの指揮者も迎えた方がよいのではないか。オペラの比重も重いこのオケとしては、ある種の現場主義も大事だと思うが、シンフォニーのレパートリーで鍛えられると、オペラ演奏もさらに高い水準に達するものと思う。その意味では、このヴィオッティなどは、もしかするとこのオケがもっと共演を必要とするタイプであるかもしれない。一方のロレンツォ・ヴィオッティは、ネットで検索すると、自分は父とは違うタイプの指揮者であると語っている英語のインタビューなども見つかるが、でもやはり私としては、この写真を掲載することをお許し頂きたい。これは、父マルチェッロ・ヴィオッティ 50歳の誕生日、ということは 2005年 6月の、家族揃っての写真。マルチェッロの死の 8ヶ月ほど前ということになる。もちろんロレンツォは、右から 2番目だ。母とおぼしき女性に肩を抱かれている。未だ 15歳の頃の、未来のマエストロである。家族の歴史とはまた異なる音楽の歴史に、彼がこれから名を刻まんことを。
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by yokohama7474 | 2018-07-20 00:25 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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