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高松・丸亀旅行 その 2 神谷神社、丸亀城、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、中津万象園・丸亀美術館

前日の高松での歴史巡りの興奮もさめやらぬ第 2日、我々が向かったのは高松の西 20kmほどの位置にある丸亀市である。その目的は前回の記事の冒頭にも書いておいたが、私としてはその道中に、どうしても立ち寄りたい場所があったのである。それは坂出市にある神谷 (かんだに) 神社。
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大変にこじんまりした神社ではあるが、空海の叔父が開祖であるとされ、式内社 (927年にまとめられた延喜式に記載されている神社) という古い歴史と格式を持っている。そしてこの神社を訪れる価値があるのは、その本殿が、なんとなんとなんと、国宝であるからだ!! 1219年の造営で、建立年代が判明している神社建築の中では日本最古。これは是非とも見ておかねばならない。だが、その本殿の近くまで入れてもらうには、事前に連絡をする必要があるという。そんなわけで、前日に電話を何度もトライしたのであるが、残念ながらつながらず、やむなく当日の出たとこ勝負となってしまったのである。ところが、私たちが現地に着いてみると、なんともラッキーなことに、普段は閉ざされているとおぼしき朱塗りの門が開いているではないか!!
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見ると、ほかにも本殿に参拝している人たちがおられる。そして、タタタと飛び出してきたのは可愛らしいプードルで、私たちにしきりに愛想を振りまくのである。そして、たまたま門の横の小屋から出て来た男性に、中に入ってもよいかと尋ねると、その日は午後から儀式があるので、準備のために門を開けており、今なら本殿に参拝してもよいとのこと。やはり、日常生活で徳を積んでおくと、いざというときにはご利益があるねぇなどとうそぶき、でも大変厳粛な気持ちで門の中に入ると、見えてきたのが国宝の本殿である。
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このような、反った屋根が長くせり出す様式は流造 (ながれづくり) というらしく、その様式自体はさして神秘性を感じさせるものではないが、やはり間近で拝観すると、四国のこの地で 800年に亘って存在しているという迫力を実感するのである。やはり、ちょっとほかにない建物であり、さすが国宝と思わせるものがある。
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この神社の裏手には、興味深い場所がある。影向石 (ようごうせき) という巨石である。見上げるほどの巨大さではないが、その苔むした姿はなんとも神秘的。古代から信仰の対象となってきたとされる。周辺からは弥生土器も出土しているというから、古くから神聖な土地であったということだろう。尚、この神谷神社にはまた、重要文化財の神像も伝わっているが、今回は拝観は叶わなかった。
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このようなパワースポットを後にして我々が向かった先は、丸亀で最もメジャーな観光地である、丸亀城である。現存 12天守閣のひとつで、重要文化財に指定されている。もともと室町時代から城郭のあった場所に築城され、現在の天守閣は 1660年の造営。私は今回初めての訪問となったが、予備知識として知っていたのは、小さい天守閣ながら、城の入り口からの高低差が日本最大であるということだ。この写真の真ん中に小さく見えているのが天守閣。いかに地上から高いところにあるか分かろうというものだ。
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ちょっと近づいて正面に回っても、依然としてこんなに高い。
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この日も結構暑い日であったが、ここまで来てひるむわけにはいかない。エッチラオッチラ坂道を登り始めた。一息ついて振り返るとこんな感じ。実はこの坂、その名も見返り坂。そうそう、ここで見返りたくもなりますよ (笑)。
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ここから仰ぎ見る石垣がすごい。高さは 22mで、その曲線は実に美しい。
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だが、見とれてばかりもいられない。天守に辿り着くには、さらにこんな坂を登っていかねばならない。
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これは結構キツいのだが、やがてこのような見晴らしのよい場所に出る。このあたりが三の丸。
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そうすると天守閣はもう近い。確かにこじんまりとしたシンプルなものであり、防御は大丈夫だろうかとも思うが、こんな高いところまで敵が攻め込んでくれば、まぁ、あきらめもつこうかということか (笑)。それにしても眺望は素晴らしい。
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内部も江戸初期そのままの雰囲気。壁は上部まで厚く塗られ、防御を固めている。太鼓壁というらしい。
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また、やはり重要文化財の大手一ノ門が公開されていた。ここでは太鼓で時を知らせていたらしい。
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さて、丸亀城を辞して向かった先は、丸亀市でもうひとつのお目当てであった、猪熊弦一郎現代美術館。今年の 6月 2日付の記事で、この画家の描いた猫 (こう書いてみると、「描く」という字と「猫」という字は似ている) の展覧会を採り上げた。その展覧会の出展作は基本的にすべてこの美術館の所蔵品であったのである。洋画家、猪熊弦一郎 (1902 - 1993) は、ここ香川県丸亀市の生まれ。地元出身の偉大なる芸術家に敬意を表するということであろう、JR 丸亀市のすぐ近くに、彼の作品を集めたこのようなモダンな美術館が建っているのである。設計は日本を代表する建築家のひとり、谷口吉生。開館は 1991年である。愛称は MIMOCA というらしい。"I" の部分は「猪熊」なのだろうが、「弦一郎」の "G" を入れると、語呂のよい略号にならないということだろうか。
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この建物を写真で見たとき、奥に見える落書きのようなものが描かれた白い壁と、奇妙なオブジェの組み合わせが奇異であったが、近くで見ても奇異であることに違いはない (笑)。でも、なんだか楽しくなるではないか。また、私たちが訪れたときには、猪熊の弟子筋に当たる荒井茂雄という画家の展覧会の最終日であった。
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入り口を入ると、いきなり猪熊さんの等身大 (?) の写真が出迎えてくれる。いやそれにしても立派な美術館である。写真撮影も許されていたので、特別展の様子から、美術館の設備のよさを感じて頂けると思う。
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常設展の猪熊の作品展示では、様々なタイプの作品に接することができて、これも大変に楽しい。これは、面識のあった藤田嗣治と、自らの肖像。
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広い展示室には、訪問者たちが思い思いに作品を楽しんでいる。順路もなく、過度な解説のないこの自由な感じが、なかなかよい。
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猪熊が集めていたものなのか、すべて自作なのか、小物を並べたコーナーも、いかめしい美術館にはないものだし、あ、この紙袋には見覚えがあるぞ。そう、三越の紙袋は、猪熊のデザインだったのだ。
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このように念願の猪熊美術館を見学した後、丸亀で最後の目的地に向かうこととした。その場所は、中津万象園。丸亀美術館という施設が併設されている。
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この中津万象園は 5ヘクタールの敷地を誇る大規模な池泉回遊式庭園であり、1688年に時の丸亀藩主、京極高豊によって造営された。京極氏はもともと近江の出身ということらしく、近江八景になぞらえた景色を作り出している。その庭園の入り口にある丸亀美術館には、クールベ、コロー、ミレーらの作品を中心とした 19世紀フランス絵画が展示されている。小さいながらなかなか筋の通ったコレクションである。それに加え、陶器館には、古代オリエント (現在のイラン・イラク) 出土の彩色土器などが展示されていて、これも大変に興味深い。
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では、この広大な庭園を散策して楽しむことができる様々な景色をご紹介しよう。池を琵琶湖に模していて、数々の島があり、現存最古の煎茶席もあれば、赤い鳥居が立ち並ぶ稲荷神社もある。丸亀のお殿様は粋だったのですなぁ。
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また、讃岐富士と呼ばれる飯野山を借景にしているあたりも心憎い。それから、昔ここに存在していて、天保の頃に一度洪水で流された「石投げ地蔵尊」が復元されている。その名の通り、お地蔵さんの近くに石を投げて祈願するもの。但し、「地蔵尊に直接石を投げないで下さい」と注意書きがある。もちろん、そんな罰当たりなことをしてはいけませんぞ。
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そして、駆け足ながら香川の歴史を満喫した私たちは、帰路についたのであった。四国の歴史にはまだまだ奥深いものがあるので、また訪れてみたい。

by yokohama7474 | 2018-08-17 01:13 | 美術・旅行