川沿いのラプソディ


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メモ帳

セイジ・オザワ松本フェスティバル 秋山和慶指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ 2018年 8月31日 キッセイ文化ホール

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今年もセイジ・オザワ松本フェスティバルの時期がやってきた。但し、御大小澤征爾自身は、当初はベートーヴェン 5番の指揮が予定されていたが、健康問題による降板がその後発表された。それはチケット発売前であったので、かつてあった直前のタイミングでの小澤降板と違って、大きな混乱は生じなかったものの、やはり若干淋しい感じは否めない。チラシには小澤本人のこんなコメントが掲載されている。

QUOTE
今年は、僕の体調のことでいろんな人に心配をかけてしまって、指揮も降板することになってしまい楽しみにしてくれていた皆様には、ほんとうに申し訳ない気持ちでいっぱいです。この夏の指揮は秋山くんやディエゴに任せることにしましたが、僕も総監督として松本に行って、リハーサルや本番に顔を出して、サイトウ・キネン・オーケストラのみんなと一緒にフェスティバルを創っていくつもりです。
UNQUOTE

つまり、自分が実際に指揮をすることはなくとも、音楽祭のクオリティは、総監督である自らの責任として引き受けるということだ。小澤自身の活動としては、去る 7月28日、自ら主催する奥志賀での室内楽アカデミーのコンサートで、事前の予告なくベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番の第 3楽章を指揮したことが話題になった。これは、今年の 3月に大動脈狭窄症で入院して以来、初の指揮であった。
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上の小澤の言葉にある「秋山くん」とはもちろん、この記事で採り上げるコンサートを指揮した秋山和慶。ディエゴとは、ヴェネズエラ出身の俊英ディエゴ・マテウスのことである。今回のフェスティヴァルではそれ以外にも、ケンショウ・ワタナベという若い指揮者が日本デビューを果たす。彼は両親ともに日本人だが、5歳で渡米しており、米国で生活しているとのこと。ヤニック・ネゼ=セガンの弟子で、彼が音楽監督を務める名門フィラデルフィア管でアシスタントをしている由。昨年まで 4年連続で登場したイタリアの名指揮者ファビオ・ルイージは今年は指揮しないが、それでも音楽祭の内容自体は充実したものとなっている。その中で、私としてはやはり、敬愛する秋山のコンサートに出掛けないわけにはいかない。
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サイトウ・キネン・オーケストラはもともと小澤征爾の恩師であり桐朋学園の創立者のひとりである齋藤秀雄の名前を冠しているのであるが、上で小澤が「秋山くん」と親し気に呼ぶのも無理はない。秋山自身も齋藤の弟子であり、また、このオーケストラの活動の出発点となった、19984年の桐朋学園メモリアルオーケストラの演奏会では、小澤と秋山で指揮を分け合ったのである。つまり秋山はこのオケの誕生の頃からの功労者であるわけだ。初期の頃には海外公演も指揮しているが、2004年以降は共演の機会がなかったようだ。だが今回、6歳上の総監督小澤の穴を埋めるには、最高の人選であろう。以下は、学生時代だろうか、師匠齋藤と並ぶ秋山、そして 1984年の桐朋学園メモリアルコンサートでのリハーサル風景。
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このブログでは何度もご紹介してきたように、秋山はどんなレパートリーもこなすことのできる万能の指揮者であるが、今回はオール・フランス音楽プロ。小澤から、「これまでサイトウ・キネンでやっていないのをやってみてよ」と言われ、秋山が提案したのが以下のようなプログラム。
 イベール : 祝典序曲
 ドビュッシー : 牧神の午後への前奏曲
 ラヴェル : ボレロ
 サン=サーンス : 交響曲第 3番ハ短調作品 78「オルガン付き」

なるほどこれはゴージャスだ。最初のイベールの曲は、先にアシュケナージと N 響による演奏の記事で書いた通り、1940年に日本政府が皇紀 2600年を祝して海外の作曲家たちに委嘱した曲のひとつ。「牧神」とボレロは、言うまでもなく近代フランス音楽を代表する 2作であり、後者に関しては、つい最近も秋山が洗足学園のオケを指揮したバレエ付公演を鑑賞したばかり。メインのサン=サーンスは、高貴さや敬虔さとドラマ性を兼ね備えた人気曲であり、大いに盛り上げるシンフォニーだ。開演前から期待感が高まっていたのだが、最初のイベールが鳴り出した瞬間、その中身がずっしり詰まった音に圧倒された。もちろん秋山のことであるから、奇をてらった要素は一切なく、ひたすら曲の持ち味を引き出すことに専念した演奏であるが、それにしても個々の音楽的情景におけるオケの反応は驚異的で、海千山千の秋山ですら、音の運動性を持続させるために自らを奮い立たせているようにすら思われた。いわば指揮者とオケの真剣勝負の醍醐味を、そこに聴くことができたと思う。「牧神」のたゆたい、ボレロの明滅する各楽器の妙技 (ただ、トロンボーンは少しばかり勇み足だったが)、そしてサン=サーンスの千変万化の音色の面白さと言ったら!! 音と音がが交響して次の段階に進む際に、さらに一段ギアアップし、それを受けた指揮者は「お、やるな」とばかり、気合を入れて棒を振り、それに応じてオケもまた乗って行く、そんな音楽であったと思う。興味深いことに、(前半・後半ということではなく) 4曲それぞれにコンサートマスターが交代したこと。イベールは田中直子 (ジュリアード音楽院教授で、オルフェウス室内管のコンマスも務めた)、ドビュッシーは小森谷巧 (読響コンマス)、ラヴェルは矢部達哉 (都響コンマス)、サン=サーンスは豊嶋泰嗣 (新日本フィルコンマス)。それから、例えばチェロ・セクションでは、原田禎夫や木越洋といった実績ある人たちに混じって、若手のホープである宮田大や、都響の首席古川展生、日フィルの首席辻本玲、ニューヨーク・フィルに所属する工藤すみれなどが一緒に演奏しているのを見るのは、なんとも刺激的だ (名前を挙げなかったほかの 4名のチェロ奏者の方々に申し訳ないほどだが、いずれも素晴らしいキャリアをお持ちである)。このオケでの活動が、それぞれの奏者のメインの活動に大きく活きて来ることは間違いないだろうし、何より、その場で鳴っている音のクオリティが、日本の音楽シーンに影響を与えるものになりうる。その意味では、本当に今後このオケの活動が夏の松本だけになるのか、都市圏も、あるいはまた海外でも展開されるのか、大いに興味のあるところだ。それから、弦楽器の充実に比べて、管楽器 (日本人の比率はかなり低い) が少し圧倒されていたように思われたのは、ホールの響きも関係しているのかもしれないが、やはり今後の課題のようにも思われた。ともあれ、小澤の登場がなくともホールは一杯になり、しかも終演後の聴衆の熱狂は相当なもので、オケのメンバーも指揮者も、一旦引き上げてから再度舞台に戻って来て、喝采を浴びていたのは素晴らしいことだと思った。

最後に、プログラムに載っている小澤の言葉を引用しよう。この人らしいシンプルな物言いに、真実がこもっていると思う。

QUOTE
今回、秋山くんが戻ってきてくれて、サイトウ・キネンの仲間たちと一緒にできることが、とても嬉しいです。「嬉しい」というひとことではあらわせないくらい、本当に心の底から嬉しい気持ちが沸き起こってきて、松本が待ち遠しいです。
UNQUOTE

1984年、この二人の呼びかけで、日本の音楽史にひとつの画期的なことが始まったことは間違いない。その成果は、まだまだこれからも大きなものになって行くだろう。34年前の兄弟弟子の姿である。
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by yokohama7474 | 2018-09-01 11:03 | 音楽 (Live) | Comments(2)
Commented at 2018-09-03 18:22 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yokohama7474 at 2018-09-04 00:11
> カギコメさん
コメントありがとうございます。音楽祭の今後の方向性は、確かに気になるところですね。自治体の支援やボランティア、教育プログラムとの連動など、いろいろ課題はあるでしょう。ただ、音楽ファンとしては、よい音楽が松本で聴けること、それこそが最も重要なことだと思います。まずは来年、また期待したいと思います。
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