川沿いのラプソディ


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メモ帳

山田和樹指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 (ピアノ : 萩原麻未) 2018年 9月 7日 サントリーホール

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日本フィルハーモニー交響楽団 (通称「日フィル」) の 9月定期にはこのところ毎年、この楽団の正指揮者である山田和樹が立っている。このブログでも、2016年、2017年と連続で採り上げた日フィルの 9月定期。今年もなんとか聴くことができた。但し、演奏前に山田自身が行ったプレトークには間に合わなかったので、彼が今回の曲目に対していかなるコメントをしたのかは、残念ながら分からない。だが少なくとも言えることは、今回も彼が組んだプログラムは大変に意欲的なものであるということだ。
 プーランク : シンフォニエッタ
 三善晃 : ピアノ協奏曲 (ピアノ : 萩原麻未)
 デュカス : 交響詩「魔法使いの弟子」(ストコフスキー版)
 デュティユー : 交響曲第 2番「ル・ドゥーブル」

なるほどこれは、一見して明らかな通り、フランス物によるプログラムである。もちろん三善は日本人であるが、フランスで学んだ人であり、その点が当然勘案されてのプログラムであろう。実は当初の発表では、前半の 2曲は順番が異なっていて、三善 - プーランクの順であったが、いやいや、それは絶対この順番の方がよい。このプログラムであれば、前半・後半ともに、1曲目は軽妙さ、2曲目は深刻さがメインとなっていて、見事なバランスである。しかも、後半はいずれも「デュ」で始まる作曲家ということで、語呂もよい (笑)。実はこのプログラムは、前半も後半も、曲間のステージの配置換えがかなりの手間であったのだが、その価値のある内容だろう。飄々として侮り難い企画力を持つ、山田という指揮者。
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最初のプーランクは、よく知られているように、いかにもフランス風の洒脱な曲を書いた人。いや、もちろん、彼のオペラや、後半生で書いた宗教曲の数々には、洒脱という印象とは程遠いものが数々あることは知っているつもりだが、なんといってもあのフランス 6人組の一人であり、1963年という前衛音楽全盛時代まで生きた割りには、古くよき時代の洒脱さを終生失わなかった人だと思う。私の場合は、学生時代に 2台のピアノのための協奏曲を毎日毎日飽かずに聴いてから、室内楽全集に聴き入ったという経緯もあって、大変に興味のある作曲家なのである。彼の管弦楽曲はあまり多くないが、このシンフォニエッタ (小交響曲という意味) は 1947年の作。悲惨な戦争を経てから書かれたとは思えない愉悦感を持ち、ハイドンの時代の交響曲に範を取ったらしい。私の手元にある、アンリ・エルという人によるプーランクの評伝には、「そこには、同質の透明さと、旋律線の明快さと、形式の調和がある」とある。なるほどそれはそうだろう。但し、若干の保留をつけるとするなら、両大戦間のパリの華やかさ (バレエ音楽「雌鹿」にはそれがあると思う) からは若干離れてしまったようにも思う。山田と日フィルの演奏は丁寧であったがゆえに、返って曲の味わいの淡泊さを露呈してしまったような気がしないでもない。一般に思われているよりも複雑な内面を持っていたかもしれないこの作曲家、あの「肉体の悪魔」を書いた夭逝の大天才レイモン・ラディゲと「恋仲」であったというから、ジャン・コクトーとはライヴァルだったのか。・・・というか、このようなツーショットを見ると、この 2人の間も??? (笑)
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2曲目は、日本を代表する作曲家であった三善晃 (1933 - 2013) の 1962年の作品、ピアノ協奏曲である。三善は東京大学仏文科卒、フランスで学び、日本では桐朋学園大学の学長も務めた。このような、永遠の文学青年のような人であった。
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日本の作曲家によるピアノ協奏曲というと、パリ高等音楽院で三善の先輩にあたる矢代秋雄の作品が有名であるが、そちらが 1967年の作であるのに対し、三善のこの曲はそれより 5年前に作曲されている。私の手元には、初演者である本荘玲子と若杉弘指揮読売日本交響楽団による 1970年の録音があり、今回は久しぶりにその CD を引っ張り出して予習して行ったのだが、やはり実演で聴くと音の生々しさが違う。たった 13分ほどの曲であるが、その倍はあるような聴きごたえのある内容であり、鮮烈な音響も、陶酔的な音響も、メシアンを想起させる部分があった。だがメシアンの創作の基礎になったカトリシズムは日本では希薄であるので、この三善の音楽は、飽くまで人間が呻吟する音楽として響くのである。今回ソロを弾いた萩原麻未は、2010年のジュネーヴ国際コンクールで優勝することで活躍を始めた人だが、彼女のピアノの表現力には以前から感嘆している私は、今回もその強い集中力に大いに感銘を受けた。アンコールがなかったのも当然と思われる凄演であった。私生活では、今年 6月にヴァイオリニスト成田達輝と結婚されたとのこと。おめでとうございます!!
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さて、多彩なプログラムの後半は、デュカスの「魔法使いの弟子」で始まった。デュカスは自分に厳しい作曲家であったらしく、残された作品は多くないが、この曲は文句なしに、彼の作品の中では最もよく知られたものであろう。今回の演奏はストコフスキー版というから、もちろんこれである。
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1940年という制作年がとても信じられないディズニー映画、「ファンタジア」の中のエピソード。実はこの曲のもとになっているのは、あの文豪ゲーテのバラードで、魔法使いの弟子が、師匠の留守の間に魔法を使って箒に水汲みをさせるが、その止め方を知らずにひどい目に遭うという内容。この映画の中では、ミッキーマウスがその魔法使いの弟子を演じていて、音楽を担当したレオポルド・ストコフスキーと映画の中で握手を交わしたのである。思い出すだけでもワクワクする映画であった。
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今回の演奏で用いられたストコフスキー版は、チューバが追加されていたり、ほんの数ヶ所で原曲より少し音が厚くなっていたという程度で、原曲との大きな差異はない。山田と日フィルはここでも音楽の情景をうまく描いていて面白かった。日フィルの弦が重すぎない点は、このような曲には有利に働くだろう。

最後に演奏されたのは、アンリ・デュティユー (1916 - 2013) の 1959年の作で、交響曲第 2番「ル・ドゥーブル」。うーむ。そう来たか。前日のアントニ・ヴィト指揮の東京都交響楽団によるルトスワフスキの 3番もそうであったが、20世紀後半のシンフォニーでも、それなりに演奏頻度のある曲が、現代の東京に響き渡ることの価値は大変に大きい。このデュティユーは、概してシビアな内容の曲を書いた人で、間違いなく 20世紀後半のフランス音楽を代表する作曲家のひとり。私も彼の作品の CD をあれこれ持っているが、特にこの交響曲第 2番は、シャルル・ミュンシュがコンセール・ラムルー管やフランス国立管を振った録音で親しんできたものだ。それから、セミヨン・ビシュコフとパリ管の 1993年の来日公演でも聴いたことがある。だが調べてみて分かったことは、この曲は当時ミュンシュが音楽監督を務めていたボストン交響楽団の創立 75周年 (今回のプログラムには「50周年」とあるのは誤り・・・50周年の際の委嘱作品は、ルーセル 3番、プロコフィエフ 4番、ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」などがある) を記念して委嘱されたもの。題名の「ル・ドゥーブル」とは、いわゆる「ダブル」の意味で、オーケストラが二重構成 (小編成のものと通常のもの) からなることによっている。実はこのデュティユーは、上記の三善晃がパリで私淑した作曲家であり、その意味でも今回のプログラムには強い一貫性があるのだ。今回の演奏はこれも見事なもので、山田の的確な指揮は、大変よく考えられたとおぼしきこの曲の面白みを浮き彫りにしてみせた。これも実演で聴かないと分からない面白みである。この写真は、初老の頃の作曲者デュティユー。
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さて、こんなに凝った曲目を採り上げて、客席もそこそこ埋まっている演奏会は、実に意義深いもの。山田和樹のさらなる躍進を期待せずにはいられないのである。

by yokohama7474 | 2018-09-08 23:58 | 音楽 (Live) | Comments(2)
Commented by usomototsuta at 2018-09-12 12:04 x
こんにちは。毎年2月に欠かさず九州に来てくれる大変ありがたい日フィルさん。九州公演はどうしてもいわゆる名曲プログラムになりますが(私にはそれで十分有難い)、定期などではこのような意欲的なプログラムで腕を磨いてる(適当な言葉が見つかりません)のは興味深いです。来年も期待できそうです🎵 山田和樹さんはプログラムを見ても最近意欲的な活躍が目立つようで出来れば九州にもおいで願いたいですが、約2週間のスケジュール調整は難しいのでしょうね。
Commented by yokohama7474 at 2018-09-13 00:24
> usomototsutaさん
そうですね。山田和樹は世界的に見ても有望な若手指揮者ですから、充分多忙なはずです。ただ、超人的な活躍をしている彼のこと、もしかすると、そのうち九州の聴衆の方々に大サービス!! ということもあるかもしれませんから、期待して待ってみられてはいかがでしょうか。
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