川沿いのラプソディ


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ピエタリ・インキネン指揮 日本フィル 2018年10月12日 サントリーホール

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今年 38歳の若さでありながら、日本フィルハーモニー交響楽団 (通称「日フィル」) の首席指揮者をはじめ、世界で活躍するフィンランド人指揮者、ピエタリ・インキネンが、6月に続いて日フィルの指揮台に登場した。以前にも触れたが、このオケのシーズンは 9月に始まり、その 9月の定期公演は正指揮者の山田和樹が指揮したのは例年通り。だが、やはり新シーズンが始まって早めのタイミングで首席指揮者が登場するのはやはり望ましい。その意味で、今回インキネンが、ひとつのプログラムを振るためだけに来日したことは、多忙なスケジュールを縫って、どんどん激化する東京のオーケストラ界に、このコンビの存在意義を見せようという意欲の表れであったのかもしれない。
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その演奏会、曲目は以下の通りであった。
 シューベルト : 交響曲第 5番変ロ長調
 ブルックナー : 交響曲第 9番ニ短調

東京における過密なコンサートスケジュールにおいて、偶然なのかあるいは関係者に何かの意図があってのことなのか、同じ曲目を、近いタイミングで違った顔合わせによって体験するというケースがよく見られる。実は今月はブルックナー 9番の当たり月 (?) で、このインキネン / 日フィルに続き、ブロムシュテット / N 響、そして上岡敏之 / 新日本フィルも演奏するのである。ブルックナーがその生涯の最後に作曲し、3楽章まで作曲したところで天に召されてしまったため、絶美のアダージョで終わるというこの曲は、演奏する側も生半可な気持ちでも取り組めないものであろう。そんな重い曲を、東京の聴衆は立て続けに聴くこととなる。これは老年のブルックナー。生涯独身であったこの作曲家の内面で、神への賛美がどのように鳴り響いていたのであろうか。
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さて、私は過去もこのブログでインキネンと日フィルの演奏を何度か採り上げ、その時々で率直な感想を記してきたが、ワーグナーやブルックナーという、最近このコンビが積極的に採り上げている後期ロマン派のレパートリーの演奏に関しては、高く評価することを何度か保留してきている。それは、これまで接してきたインキネンの指揮ぶりは、決して豪快とか壮絶というタイプではなく、どちらかと言えばすっきりとした清澄なタイプであると見受けるからである。もちろん、そのようなスタイルでワーグナーやブルックナーがうまくいかないと決めつける必要はないので、その度に期待を込めて会場に足を運んでいるのである。そして今回も、優れた面も理解できる一方で、課題も認識する演奏会となった。

まず最初のシューベルト 5番は、実に可愛らしく気の利いた曲で、私も大好きなのであるが、今回のインキネンと日フィルの演奏では、弦楽器の豊かな表情を堪能することができた一方で、もう第 1楽章の冒頭が響いた瞬間から、管楽器の緊密性が今一歩欲しいと思ってしまったのである。管楽器と言ってもこの曲の場合、フルート 1本、オーボエ、ファゴット、ホルンが各 2という大変に小さなもの。そうであるがゆえに、愉悦感の表現のためには、本当に絶妙の管楽器のバランスと呼吸が欲しいところである。指揮棒を持たずに指揮をしたインキネンは、その点に当然留意はしていたとは思うものの、音の線と線の間に、なんというか、ごくわずかな隙間が感じられる瞬間が一度ならずあったと聴いた。もちろん、凡庸な演奏と言うつもりはなく、流れのよい演奏であったと思うし、終楽章で弦がそれなりに盛り上がる箇所などは、高い集中力で耳を惹きつける響きが実現していた。それゆえにこそ、さらなる音の緊密さを期待したくなってしまったのである。

その思いは、メインのブルックナーでも時に感じることとなった。この曲の冒頭は、ブルックナーのほかのシンフォニーにもしばしば聞かれる通り、静寂から神秘的な音が動き始め、頂点に達してその壮大な全容が見えるという作りになっているが、その冒頭の神秘性に、やはりさらなる緊張感があれば・・・と思ったのである。弦楽器は概して素晴らしかったものの、冒頭すぐのヴァイオリンに、意外にもごくわずかな不安定さを感じることとなったのは、オケの中の、ある種の連鎖反応であったのかもしれない。だがその後弦楽器は立ち直って多様な曲想を情感豊かに歌い上げ、また金管楽器は強い音でブルックナーらしさを作り出したし、全曲を通じてティンパニがかなりの熱演で盛り立てることで、音楽にメリハリが生まれているとは思ったが、残念ながら木管楽器には、やはりところどころにおいて引き続き課題が残ったような気がする。この作曲家の特異性ゆえであろうか、全体のうねりの中から本当に感動的なものが立ち上がってくるには、錯綜する音の線たちがさらにさらに緊密に絡み合わないといけないと思う。もっとも、全曲が終わる頃には、そのようなことを忘れて清澄な音楽に身を委ねたいという思いに囚われることにはなったものだが、この曲はかつて東京で数々の老巨匠たるブルックナー指揮者たちが超絶的な演奏を繰り広げてきたことを思うと、今回の演奏にはやはり、まだ課題が残るなぁ、というのが私の率直な印象である。

ただ、このように書いてはいても、やはりインキネンと日フィルは、東京を代表するコンビのひとつである。是非これからも意欲的な取組を期待したい。ところで今回の会場では、インキネンの前任者であるロシア人のアレクサンドル・ラザレフとおぼしき人物も姿を見せていた。これが私の見間違えでないとすると、大変興味深い。というのもこのラザレフが日フィルを振る次回のコンサートは 11月初旬。今からまだ 1ヶ月近くもあるのである。ラザレフは日本にそんなに長く滞在するのであろうか。それから、日フィルの今後の予定を見ると、そのラザレフとの演奏会の前、11/1、2 の 2日に亘って、ソウルで大植英次の指揮で演奏会を開く。そして来年の 4月には、インキネンとともにヨーロッパへ演奏旅行に出かけるのである。健闘を祈ります!! インキネンとはその前に、年明けのブラハ響との演奏会でも日本で再会するのを楽しみにしよう。
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by yokohama7474 | 2018-10-13 01:57 | 音楽 (Live) | Comments(2)
Commented by usomototsuta at 2018-10-13 13:21 x
ご無沙汰しております。私は2年前にブルックナーに目覚め(それはクラシックに深入りするきっかけになりました)、そのような意味で今ではその最後の3つの交響曲は私にとって特別な物です。9番は来月末福岡で初めて実演に接することができます。この2年で5,7,8番(7番は2回)実演を聴きました。
 今回のブログでは木管楽器を中心にいくつかの注文がありました。興味深く読むと同時に、どんな聴き方でどれくらいの量を聴けばこのようなことに気づき、書けるのか? それはより深く音楽を楽しむことができるだろう。一音楽ファンの感想と言うよりは評論に近いと思いました。
 最近SNSで音楽評論家不要論みたいなものを見ました。私は反対意見でその理由もあるつもりですが、正に今回のブログもそういう意味で勉強になるとともに楽しく読ませて頂きました。ブロムシュテット&N響のTV放送、福岡でのゲルギエフ&ミュンヘンフィルが楽しみです。
Commented by yokohama7474 at 2018-10-13 18:02
> usomototsutaさん
コメントありがとうございます。評論ですか・・・。いわゆる音楽評論というものの在り方について語ると長くなってしまうのでやめますが、こういう時代になると、誰でも個人の意見を発信できるわけで、どんな分野でも評論家の在り方自体が変わってくる状況でしょうね。もちろん音楽は、聴く人それぞれに受け取り方が違って当然です。例えば「レコード芸術」誌 (最近では読者も減っているかもしれませんが) の月評などを眺めても、2人の評者が同じ演奏に対して全く異なる見解を示していることも多いですよね。音楽評論を生業にしている人たちでそうですから、一般のファンが様々な感想を持つのは自然なことだと思います。自然体で音楽を楽しみたいものです。
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