川沿いのラプソディ


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メモ帳

クリスティアン・ティーレマン指揮 シュターツカペレ・ドレスデン 2018年10月31日 サントリーホール

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10月31日の夜、私には行きたいところがあった。それはもちろん、ハロウィンで何やら異常な騒ぎになっている渋谷ではない。私の行きたかった場所は、池袋である。その場所にある東京芸術劇場ではその日、作曲家藤倉大の歌劇「ソラリス」の日本初演が行われたからだ。この作品については、以前このブログの記事でも触れたことがあって、2015年のパリ、シャンゼリゼ劇場での世界初演では、私の崇拝する勅使川原三郎が振付を担当したこともあり、日本で上演される時には是非見てみたいと思っていたからだ。ということで、随分悩んだ。悩んだのではあるが、もともと購入してあったチケットを優先することとした。なぜなら、この日のコンサートは翌日のコンサートと連続で聴いて意味のあるものであるからだ。4曲あるシューマンのシンフォニーの全曲演奏会。もしかすると、9曲からなるベートーヴェンや、あるいは同じ 4曲のブラームスと比べても、これは少し地味な催しだと思われる向きもあるかもしれない。だが、これはやはり聴くべきコンサート。なぜなら、演奏するのはあのシュターツカペレ・ドレスデン。指揮はその首席指揮者であるクリスティアン・ティーレマンであるからだ。現在 59歳。今や名実ともに世界指揮界に君臨するドイツの指揮者である。
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このティーレマンが首席指揮者を務めるシュターツカペレ・ドレスデンは、クラシックファンにはもちろんおなじみの名門オケで、ザクセン州のドレスデン国立歌劇場のオーケストラである。上のポスターにある通り、今回の宣伝における呼称はその「ドレスデン国立歌劇場管弦楽団」であり、前回の「シュターツカペレ・ドレスデン」ではない。2年前のこのコンビの来日時の記事に書いた通り、その時の意欲的な曲目、リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲をメインにしたコンサートは、衝撃的な集客力の低さであったが、「シュターツカペレ」では一般的に通りが悪いために、今回は、より分かりやすい名称を使用したのであろうか。このオーケストラの起源は 1548年。今年は実に設立 470年ということになる。今回の会場であるサントリーホールにはそれを記念するこのようなのぼりが出ていて、何を売っていたかというと、ネクタイ、タイピン、カフス、ポロシャツ。私は今回はパスさせて頂きました (笑)。
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さて、期待のティーレマンとドレスデンによる 2日連続のコンサートで演奏されるのは、上記の通り、シューマンの交響曲 4曲である。このオケによるシューマンの録音と言えば、首席指揮者在任中に急逝したジュゼッペ・シノポリによるもの (1992 - 93年録音) も面白いが、それに 20年先立つ、1972年のウォルフガンク・サヴァリッシュ指揮による録音も、今や歴史的名盤と評価されている。一方シューマンのシンフォニーと言えば、とかく発想がピアノ的で鳴りが悪いだの、オーケストレーションに不備があるだのと取り沙汰されることが多い。実際に私も過去、名のある指揮者とオーケストラの顔合わせでも、あまり楽しめないシューマン演奏に何度か遭遇したことがある。そんなレパートリーであるから、今回も集客が多少心配であったのであるが、この記事で採り上げる初日は 8割ほどの入り、2日目はほぼ満席で、心配は杞憂であったことになる。そして初日の曲目は、シューマンの交響曲の最初の 2曲、つまりは以下の通り。
 交響曲第 1番変ロ長調作品38「春」
 交響曲第 2番ハ長調作品61

この 2曲の演奏、私としては少々複雑な気持ちで聴くこととなった。もちろんドレスデンであるから、その音に温かみと深みがあることは間違いない。ドイツ的という表現が合っているか否か分からないが、楽団の長い歴史に裏打ちされた重厚さも、そこには充分に感じられた。だがその一方で、これは果たしてティーレマンの指揮で聴くべき曲なのであろうか、という思いを禁じられなかったのも事実。私がこれまで体験した彼の演奏においては、ベートーヴェンも面白かったが、やはりワーグナー、ブルックナー、シュトラウスといった厚い響きのする作曲家の作品が、何と言っても素晴らしかった。それらの作品に比べると、最初から分かっていたこととはいえ、シューマンはいかにも地味だ。だが、ここで私は考えてしまう。決して地味ではない素晴らしいシューマン演奏も、世の中には沢山ある。例えば上記のサヴァリッシュによる録音など、晴朗な音が張っていて、聴いていて実に楽しいと思うのだが、それと比較して今回のティーレマンの演奏では、楽しいという印象はあまりなかった。一例として「春」の冒頭のファンファーレを採り上げると、この部分にはさまざまな演奏パターンがあって、パァーッと鳴り渡る、いかにもファンファーレという風情の演奏もあれば、途中で音を切りながらの、何かどこかに影のある演奏もある。今回の演奏はどちらかというと後者であったろう。それが悪いわけでは決してないのだが、ずっと聴き進めて行っても、どこか響き全体が均一すぎて、起伏に乏しいように感じたのである。決して器用なタイプではないティーレマンは、しばしば指揮棒の動きを小さくしたり、両手を同時に下から前に突き出して、あえて流れを悪くしたり、あるいは急にテンポを揺らしてタメを作ったりすることで、実直でありながら刺激的な音響を作り出すことが多いのであるが、正直、シューマンのシンフォニーではこの演出はあまり通用しなかったのではないだろうか。いや、それも多分比較の問題で、「春」よりも先鋭的な感覚が含まれる 2番においては、ティーレマンの持つ癖の強い表現力が生きる箇所が幾つもあったような気がする。つまりは、何かのコンサートのメインにシューマン 2番を置いたならば、もっと印象に残ったのかもしれないところ、1番と 2番を連続して演奏することで、返って面白みが減ってしまったのかもしれない。オレのシンフォニーってそんなに地味か? と考え込むシューマン (笑)。
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このような演奏会であったがゆえに、演奏終了後の客席も、大熱狂ということには、残念ながらならなかった。だがそれは、演奏内容自体もさることながら、今回のコンサートの演奏時間の短さも関係していたのかもしれない。この 2曲は合計しても正味 70分ほどであるから、もしかしたらアンコールに「マンフレッド」序曲か、あるいはオペラ「ゲノフェーファ」「メッシーナの花嫁」の序曲あたりを演奏してくれるのではないか、あるいは、「序曲、スケルツォとフィナーレ」のスケルツォだけでもいい、と期待していたのだが、アンコールはなく、コンサートは早々に終了してしまった。聴衆に媚びを売ることのないティーレマンであるが、今回は少し、聴衆の方に欲求不満が残ったような気がしてならないのである。

翌日の演奏会については、また次の記事で感想を綴りたいと思います。

by yokohama7474 | 2018-11-02 00:16 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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