川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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メモ帳

クリスティアン・ティーレマン指揮 シュターツカペレ・ドレスデン 2018年11月 1日 サントリーホール

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前日、10/31 (水) に続く、クリスティアン・ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンによるシューマン・ツィクルス第 2弾。今回の曲目は以下の通りである。
 交響曲第 3番変ホ長調作品97「ライン」
 交響曲第 4番ニ短調作品120

ロマン派の芸術家たちにはそれぞれ独特の個性があるのは当然なのだが、このシューマンという作曲家の作品にはどれも夢幻性が横溢していて、ドイツにおけるロマン派のイメージそのものと言ってもよい。またそこには音楽史上の系譜もあり、シューマンはシューベルトの死後、あの「ザ・グレイト」と呼ばれる交響曲第 8番ハ長調の遺稿を発見した人であるし、また、後輩作曲家ブラームスを世に出したのも彼である (そしてそこには、妻クララの存在が避けがたく関与している)。面白いのは、そのシューベルトの 8番を指揮者として初演したのは、シューマン自身ではなく、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管を率いていた友人のメンデルスゾーン (シューマンより 1歳だけ年上) だ。そしてそのメンデルスゾーンは、シューマンの交響曲のうち、1番「春」と 2番の初演を指揮。一方、3番「ライン」と 4番 (この曲は本来 2番目に書かれていたが、改訂されて 4番のナンバリングがなされた) の初演を指揮したのは、作曲者シューマンその人なのである。それには、2番の初演 1846年と 3番の初演 1851年の間、1847年にメンデルスゾーンが 38歳の若さで死んでしまったという事情もあるだろう。そうしてシューマンその人も、改訂版 4番の初演の 3年後、1856年に 46歳で没している。そのシューマン、1844年から 1850年までは、ドレスデンに住んでいた。そのような音楽史的な事情を思い浮かべると、21世紀の現代、そのドレスデンの由緒あるオーケストラが、その首席指揮者のもとでシューマンを演奏するというのは、なかなかに大変なことなのだと思われてくるのである。2012年からこのシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者を務めるティーレマン。
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前日の 1番・2番の演奏会については、実際に私の感じた若干の戸惑いを率直に書いた。そしてその感想は、残念ながら、この 2日目の 3番・4番の演奏についても繰り返さざるを得ないのだ。オケの音の深さに伝統を感じながらも、この指揮者の持ち味とシューマンの音楽の適性について、私は最後まで完全に納得できなかった。「ライン」などは、英雄的に音が鳴るはずの変ホ長調で書かれていて、滔々と流れるライン川を思わせる雄大な音の流れに始まり、様々な音楽的な情景を経て、マーラー「巨人」のラストの先駆とも言われる終結部に至る名曲であり、ティーレマンなら、その壮大でいてかつ夢幻性を持つ複雑な情緒を、骨太に描き出してくれるかと期待したのだが、オケの響きがどうにも地味で、なぜか広がって行かないのである。喩えてみれば、箱庭の中で完結している小さな木々のよう、とでも言えようか。そうであればこそ、そこにさらに室内楽的な緊密さを聴きたかったと思うのである。もちろん、決して低レヴェルの演奏ということではなく、随所にさすがと思わせる音も聴くことはできたと思う。コントラバス 6本の編成でヴァイオリンを左右に対抗配置し、完全暗譜で指揮棒を持って指揮するティーレマンとしては、このスタイルが彼のシューマン演奏なのだろう。実際 4番は、もともとシューマンのシンフォニーの中では最もデモーニッシュな音楽であり、今回の 4曲の演奏では、私としては最も成功していたと思うし、冒頭の重い和音からして、ぐっとくる点はあった。それなのにと言うべきか、あるいはそれゆえにと言うべきなのだろうか、夢幻性を支える緻密さには課題があった点は、本当に残念である。同じコンサートを聴いていた私の会社の先輩は、4番の第 2楽章で、オーボエとソロ・チェロがユニゾン (違う楽器が同じ旋律を奏すること) で歌う箇所が 3回ともずれていたと憤慨していた。私の席からは、分離のよい響きと視覚的情報が得にくかったので、あまり明確に意識はできなかったものの、この箇所の美感は、確かに非常に重要だ。きっちりとした密度を保った音の流れに課題があったということだろうか。ここで音楽ファンなら誰しも思い浮かべるのは、カラヤンがウィーン交響楽団と 1965年にモノクロで撮影したこの曲の映像 (監督は、あの「恐怖の報酬」で有名なフランスのアンリ=ジョルジュ・クルーゾー) であろう。ここでは第 2楽章の最初にいきなり画面が暗くなり、まずはオーボエが浮かび上がり、その後チェロが浮かび上がるという、意表を突く凝った映像になっていた。このカラヤンの映像作品を私は必ずしも好きではないものの、この音楽の本質を突いている面もあると思う。
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今回もアンコールはなく、前日よりも 10分早い、20時40分頃の演奏会終了となった。そういえば今回は 2公演とも、テレビカメラの撮影が入っていた。テレビ放送されるのか、それとも映像作品が制作されるのか分からないが、改めて映像で見てみると、また新たな発見があるかもしれない。今回はこのように残念な思いを抱くに至ったティーレマンとドレスデンの演奏会であるが、私のこのコンビへの期待は、決して揺らいではおらず、今後また違ったレパートリーを楽しみにしたい。それから、今思い出したことには、ティーレマンは以前、フィルハーモニア管とシューマンの 4曲のシンフォニーを録音していた。その録音は確か聴いたはずで、それほど地味だった印象はないので、どこかで時間を見つけて再度聴いてみたい。

さて最後に、「川沿いのラプソディ」お得意の脱線と行こう。今回の来日公演プログラムでメンバー表をつらつら見ていると、なんと第 1ヴァイオリンの最後の方に、Franz Schubert という人の名前が見えるではないか!!
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これはもちろん、大作曲家シューベルトと同姓同名なのであるが、ここで私の勝手な想像力が羽ばたき始める。シューベルトという苗字のドイツの家族は、それなりにいるのかもしれない。だが、男の子が生まれたときに、フランツという名前を付ける両親は、よほど熱心な音楽好きか、最初から子供を音楽家に育てようという人たちに違いない。そしてそのような家庭に育ったフランツさんが、長じて名門シュターツカペレ・ドレスデンの楽員となるとは、本当に素晴らしいことではないか。ふと思い立って、手元にある過去のこの楽団の来日メンバー表を調べてみると、ティーレマンと前回来た 2015年、その前の 2012年にも名前があり、ファビオ・ルイージとの 2009年の来日時にもちゃんと名前が載っている。2004年のベルナルト・ハイティンクとの来日時には、第 2ヴァイオリン奏者として載っているので、もともとセカンドからファーストに「出世」したのであろうか。その前、1995年のジュゼッペ・シノポリとの来日時には名前がない。一応、1992年のコリン・デイヴィスとの来日、1989年の若杉弘との来日も調べてみたが、やはり名前はなかった。この、顔も分からないドレスデンのフランツ・シューベルトさんは、既に楽団所属歴は 15年ほどということだろうか。私の妄想の中の、幸せな音楽一家のフランツさんの活躍を祈りつつ、次回の来日時にもその名前を探そうと思う。

by yokohama7474 | 2018-11-03 01:15 | 音楽 (Live) | Comments(6)
Commented by 名無しさん at 2018-11-03 01:52 x
コンサート後、二夜とも、夜遅くまで DVD用の修正撮りがあったそうです。オーボエとソロ・チェロのユニゾンの所も
撮り直し したかもしれませんね。
Commented by yokohama7474 at 2018-11-03 10:15
> 名無しさんさん
貴重な情報ありがとうございます。映像作品になってみると、また違った印象になるかもしれませんね。
Commented by 吉村 at 2018-11-03 20:55 x
結局、2番の出来が一番良かった感じですね。
Commented by yokohama7474 at 2018-11-03 23:06
> 吉村さん
そうですね、私も、初日なら 2番、2日目なら 4番がよかったと思います。では、2番と 4番はどちらがよかったかというと、私の好みなら 4番です。この曲にはやはりデモーニッシュなものがあり、独墺系の指揮者では、例えばベームもカラヤンも、晩年にともにウィーン・フィルと、この曲を録音しましたね (前者はシューベルト 5番、後者はドヴォルザーク 8番とのカップリングで)。その独墺系の系譜を継ぐティーレマンですから、是非これからもシューマン 4番を指揮して行って欲しいものです。
Commented by michelangelo at 2018-11-04 17:19 x
yokohama7474様

こんばんは。

私も、第2番と第4番を選びたいと思います。例のユニゾンですが、あれはライヴ用に練ったアイデアではないかと想像します。各セクションの巧さを聴けば、普通にビシッと揃えられます。貴殿の御席は、S席(LCかRC)もしくは1階席10列目以降でしょうか。録音は特別な理由がない限り、恐らく終演後に再び演奏したヴァージョンが採用されるかもしれません。ティーレマン氏にとってシューマンと言う作曲家は、ワーグナーやブルックナー、ブラームスやR・シュトラウス、そしてベートーヴェンとは違う接し方を若い頃からしている気がします。嬉しかったこととしては、ドレスデンを皮切りにアジアを巡り、体調を万全に整えキャンセルすることなく終着駅である東京にて大仕事を終えられたことです。腰の激痛で本番中に倒れたり食中毒になったり、便が遅れて気が動転し気絶したりドアにぶつかり脳震盪を起こした指揮者達とは違い、ティーレマン氏は生真面目で責任感が強いです。ちょっと疲れた表情も僅かに見えましたが元気でしたね。
Commented by yokohama7474 at 2018-11-04 22:06
> michelangeloさん
コメントありがとうございます。今回はアジアツアーの最後だったのですね。ティーレマンとドレスデンは、早くも次の来日でどんな演奏を聴かせてくれるのか、楽しみですね。
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