川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
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メモ帳

ニコライ・アレクセーエフ指揮 サンクトペテルブルク・フィル (ヴァオイリン : 庄司紗矢香) 2018年11月12日 サントリーホール

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前日に続くロシアの名門、サンクトペテルブルク・フィルの来日公演である。前回の文京シビックホールでの演奏会の記事で採り上げた通り、残念なことに、今回このオケを指揮することとなっていた音楽監督の巨匠ユーリ・テミルカーノフは直前になって来日中止が発表され、このオケの副芸術監督であるニコライ・アレクセーエフが急遽代役を務めることとなった。本当に直前の発表であったから、プログラム冊子は既にテミルカーノフ指揮という内容で印刷されているし、きっとチラシやポスターを刷り直す時間は、なかったのではないだろうか。アレクセーエフ指揮というチラシ・ポスター類を見掛けることはなかった。唯一の例外は、前回の記事の冒頭に掲げた、会場の文京シビックホールに貼ってあったポスターだが、はてこれは、一体何枚作られたものであったろうか (もしかして、会場用の 1枚???)。この日のコンサートの会場はサントリーホールであり、いつも入り口に向かって左側の電光パネルにその日の演奏会のポスターが貼られているのが、今回は指揮者変更のお知らせが貼られていたのみであった。なのでここでは、残念ながら来日中止となったテミルカーノフをあしらったチラシの写真を、記念として掲げておこう。今回指揮をしたのは、このアレクセーエフ 62歳。2000年からこのオケの指揮者を務めているというから、既に長い付き合いなのである。
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サントリーホールでの最初のコンサートの今回、曲目は以下の通り。
 シベリウス : ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47 (ヴァイオリン : 庄司紗矢香)
 ラフマニノフ : 交響曲第 2番ホ短調作品27

私はこのブログで過去に何度か、ちょっとユニークなレパートリーのコンチェルトを弾くヴァイオリニストに対して、「チャイコスフキーやシベリウスでない」曲を弾くこと自体を称賛の対象にして来たことがある。だが、誤解を避けるために書いておくと、私は何もこれらの協奏曲をけなすつもりはないし、それどころかこの 2曲は大好きである。ただ、聴き手としては、あまりにポピュラー過ぎて若干食傷気味のときがあるというだけで、曲はもちろん、その曲を演奏する奏者にケチをつけるつもりは全くない。このブログで何度もその演奏を称賛してきた庄司紗矢香であれば、この手慣れたコンチェルトを演奏して、その本来あるべき魅力を引き出してくれるだろう。
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彼女はテミルカーノフとは大変頻繁に共演していて、日本でも何度か顔合わせをしている以外に、私はロンドンでもプロコフィエフを聴いたことがあるし、また特筆すべきは、5年前のテミルカーノフ 75歳記念がサンクトペテルブルクで開催されたとき、なんとロシア系以外で唯一招待された演奏家は彼女だけであったらしい。今調べて分かったことには、その演奏会の指揮をマリス・ヤンソンスと分け合ったのが、今回来日したニコライ・アレクセーエフで、その時庄司も、アレクセーエフ指揮でチャイコフスキーのワルツ・スケルツォを演奏している。それから、今回の来日に合わせたものであろうか、同じテミルカーノフ / サンクトペテルブルク・フィルの伴奏で、このシベリウスと、組み合わせとしてはかなり珍しいベートーヴェンの協奏曲の録音が、最近発売されている。
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今回の庄司のシベリウス、いつもの通りの高い集中力と、疲れ知らずの強い表現力には感嘆したのであるが、一方で、今後彼女の芸術がさらに高いところに到達して行くのではないかと思わせるような、そんな凄みも感じることとなった。つまり、情熱に任せて弾き飛ばすことがなく、シベリウス若書きのこのロマン性溢れる協奏曲から、絞り出すような痛切な音楽を聴かせてくれたと思うのである。庄司は常々、この曲の歴史的名盤であるジネット・ヌヴー (1949年に 30歳の若さで航空事故で死去) の 1945年の録音を絶賛していて、レコード芸術誌の 10月号のインタビューでもそのことに触れている。私ももちろんその演奏の CD は持っているが、実は前日、SP からの復刻版という CD も改めて購入し、今回帰宅してから聴いてみた。すると、その情念の表出において今回の庄司の演奏と似ている部分もあるものの、時に聴かれる時代がかったテンポ設定においては、やはり今の時代にそのまま真似をする意味はないと思ったものである。そしてもちろん、庄司の演奏は、飽くまでも現代を生きる我々に訴えかける音楽なのだ。ここでヌヴーについて語ることは避けるが、芸術家たるもの、先人から学んで、それを自分で咀嚼して表現するものであろう。凡人には知り得ない一流の芸術家の感性は、いかに尊敬する先人であれ、その単なる模倣を賢明に回避するものだと思う。また今回のシベリウスではオケも非常にきめ細やかで、例えば第 1楽章のカデンツァ手前で低弦がしばらく唸る箇所には地味ながら彩りがあったし、第 2楽章の冒頭の木管楽器もニュアンス抜群だ。アレクセーエフの職人性も大変活きていたと思う。そして最近の庄司のアンコールと言えば、ありきたりのバッハやイザイではない、何かユニークなものが期待される。演奏され始めた何やらノスタルジックで素朴な、民謡のようなメロディに、オケの人たちもクスクス笑っている。あとで掲示を見てびっくり。これは「チェブラーシカ」の「誕生日の歌」という曲。チェブラーシカはロシアの有名な絵本で、アニメにもなっているらしい。YouTube ではこの「誕生日の歌」を、人形アニメ画像つきで見ることができる。こんな曲をアンコールに選ぶ庄司紗矢香は、やはり並のヴァイオリニストではない。
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後半のラフマニノフ 2番は、つい先日のアシュケナージ / アイスランド響とノット / 東響の連続鑑賞に続いてということになるが、今回はコントラバス 10本を並べての、ロシア風ド迫力演奏と言えばよいだろうか。このオケの持つ高い演奏能力が随所に聴きどころを作り出していたと思う。だが、ここで私が若干の保留をつけたいと思うのは、前日のチャイコフスキー 5番が、もともと作曲の時点で聴衆を飽きさせないためのあれこれの工夫に満ちていたのに比べると、この 60分になろうかという大作シンフォニーは、それほどには気の利いた出来になっていないということである。以前から何度か書いている通り、私はこの憂愁に満ちた交響曲が大好きで、その滔々と流れるメロディは、急に口ずさみたくなることもあるほどだ。だがその一方で、ここには作曲者のロマン性と情熱はふんだんに込められてはいても、そこに見られる感性は、実はかなり素朴なもの。演奏家の手練手管によって、聴かせどころが変わる要素があるように思う。以前同日に聴いた 2種の演奏の特色は記事に書いた通りだが、それらに比べるとこのアレクセーエフとサンクトペテルブルク・フィルの演奏は、粗野とは言わないまでも、若干ストレート過ぎて、聴いているうちにやや冗長さが感じられたようにも思う。もちろん、凡庸な演奏ではなく、全体としては楽しめたのだが、音楽とはなかなかに厄介なものである。そして今回のアンコールは、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」から「トレパーク」。これも私が大好きな曲で、低弦がノリノリで舞い上がって行くところや、タンバリンのリズム、大詰めでのトランペットの騒ぎなど、まさにチャイコフスキーのあれこれの工夫が聴衆を楽しませる。キレこそあまりないものの、実に楽しい演奏であった。

このコンビの演奏会、サントリーホールではもう 1回、11/13 (火) のプロコフィエフの「イワン雷帝」が残っている。未だに宣伝をよく見かけることから、もしかするとチケットの売れ行きがもうひとつなのかもしれない。だがかく言う私も、それを聴きに行くことはできないので、せめてコンサートの成功を祈るばかりである。

さて最後に、前回の記事に引き続いて、1958年、当時レニングラード・フィルという名称であったこのオケが初めて来日したときのプログラム冊子から、興味深い話題を紹介しよう。このときには 8種類の演目が組まれていて、ロシア音楽が中心ではあるのだが、驚くような意欲的な内容になっている。例えばチャイコフスキーの管弦楽曲でも、「フランチェスカ・ダ・リミニ」とか「ハムレット」とか、若干の変化球もあるし、モーツァルト 33番、39番、ブラームス 4番、「新世界」など、ロシア物以外もある。興味深いのは、ラフマニノフ 3番 (ザンデルリンク指揮) とか、プロコフィエフの「チェロ協奏曲」(これは現在「交響的協奏曲」と呼ばれるもの。作品献呈を受けたロストロポーヴィチの独奏、ザンデルリンクの指揮)、同じプロコフィエフの 7番 (アルヴィド・ヤンソンス指揮)、そしてショスタコーヴィチの 5番 (ガウク指揮) などが含まれる。現在の観点からすればそれほど意外な曲目でもないが、時代は 1958年である。ラフマニノフが没してから 15年後。プロコフィエフは没後わずか 5年で、このとき演奏された彼の作品 2曲はいずれも晩年の作だから、当時作曲後ほんの数年という「現代音楽」である。ショスタコーヴィチに至っては、当時未だ健在で、交響曲は 11番まで書いていたところ。そのように思うと、なんとも先鋭的な曲目だったわけである。因みにラフマニノフ 3番は、唯一名古屋でだけ演奏された。いやー、それを聴いた名古屋の人たち、どう思ったでしょうか (笑)。この時の来日公演は 4月21日から開始であったが、彼らが日本に着いたのは 4月12日。そのとき羽田で撮影された写真が早くもプログラム冊子に掲載されているので、お目にかけよう。ここで着物の女性から花束を受け取っているのが指揮者とソリストであろうから、赤い矢印で示しておいた。左から、アルヴィド・ヤンソンス、ザンデルリンク、ガウク、ロストロポーヴィチであろう。・・・と〆ようとしたのだが、以下のコメントにある通り、事はそう単純ではない。上で私は「〇〇であろうから△△であろう」と断定を避けたのだが、そのように書いたのはもちろん、ガウク (名前はよく知っているが顔は分からない) とザンデルリンク (もちろん顔はよく知っている、但し若い頃はほかの写真からの類推しかない) は、どうやら本人ではないかも、と思ったからだ。60年前の写真とはいえ、ネット社会では厳しい目のもとにさらされているわけですな (笑)。失礼致しました。
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冷戦時代に、ソ連としての誇りをかけた文化使節として来日した彼らは、時代は変われど、やはりロシア音楽の素晴らしさを世界に訴える役割を担っている。だが、私がいつも思うのは、そうであるからこそ、ロシア人によるモーツァルトやブラームスも、聴いてみたいのである。60年前の聴衆が、その意味ではちょっと羨ましい。

by yokohama7474 | 2018-11-13 01:34 | 音楽 (Live) | Comments(4)
Commented by マッキー at 2018-11-13 07:11 x
あなたがザンデルリンクとして赤矢印を付けてる人物はザンデルリンクではないですよ。
当時まだ46歳のザンデルリンクがこんなジイさんなわけがないですよ。
あなたが神田で買った1958年のそのプログラムのレコードの広告にザンデルリンクの写真があるでしょ、
それがその当時のザンデルリンクですよ。(前回の書き込みでその写真をあなたはupしてるんだけど)
あなたが赤矢印を付けた人物は誰なのか私は知りませんがザンデルリンクではないことは確かです。
ザンデルリンクはもっと目線がキツイ人です。
この写真だとロストロポーヴィチの隣にいる女性の後ろにいる黒髪で黒いコートを着ているのがザンデルリンクではないかと思います。
ザンデルリンクは東ドイツ国籍のドイツ人ですから、いくら指揮者であってもソ連の代表者としては最前列に並んでいないのは当然の事です。
この1958年のレニングラードフィル来日公演は単なる来日公演ではなくソ連と日本の国家友好の意味合いがあった公演だったので前面にでるのはソ連代表者だけのはずです。
私はザンデルリンクの生を聴いてますし直接サインもいただいた事があるので目の前でザンデルリンクを見た事があります。ですから年月が違ってもあなたが赤矢印を付けた人物がザンデルリンクではないとスグわかりました。

また、あなたがガウクだと赤矢印を付けた人物はガウクではなく団長のポノマリョフという人です。
Commented by 吉村 at 2018-11-13 18:43 x
今晩は、イワン雷帝聴きに来てます。
昨晩のコンサート、弦も菅も、ロシア的で堪能しました。また、アンコールの趣味も良かったです。
何しろこのオケは高校時代、鹿児島で聴いたオケなんで愛着があります。その時はマリスの方のヤンソンスでしたし。
今晩も楽しみです。
Commented by yokohama7474 at 2018-11-13 22:01
> マッキーさん
貴重なコメントありがとうございます。近日中に記事を修正しておきます。
Commented by yokohama7474 at 2018-11-13 22:03
> 吉村さん
音楽の楽しみを分かち合える、いつもながらの前向きコメント、誠にありがとうございます。伝説の鹿児島公演ですね (笑)。また「イワン雷帝」のご感想をお聞かせ下さい。
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