川沿いのラプソディ


川沿いの住まいから、音楽、美術、映画その他文化一般を語りつくします。
by Crop Stock
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
> 非公開さん 貴重な..
by yokohama7474 at 22:16
> usomototsu..
by yokohama7474 at 22:13
明日(12月16日)この..
by usomototsuta at 16:39
> カギコメさん 合唱..
by yokohama7474 at 23:14
> エマスケさん おっ..
by yokohama7474 at 23:11
こんにちは。 またお邪..
by エマスケ at 14:33
> どれみどりさん 朝..
by yokohama7474 at 23:30
またまた、おじゃまします..
by どれみどり at 17:04
> カギコメさん 海外..
by yokohama7474 at 20:53
> 吉村さん そうでし..
by yokohama7474 at 23:51
メモ帳

テルマ (ヨアキム・トリアー監督 / 原題 : Thelma)

e0345320_22054622.jpg
この映画のポスターを見て、足が停まった。そして、劇場に置いてあったチラシを見て、さらに興奮した。そこに踊る文字は、「ラース・フォン・トリアーの遺伝子を受け継ぐ鬼才が放つ北欧ホラー、ついに日本上陸!」というもので、しかも、最後の「日本上陸!」は特大フォントである (笑)。そうなのか。この映画の監督、ヨアキム・トリアーは、あのラース・フォン・トリアーの甥っ子であるらしい。ラース・フォン・トリアーは、1984年のデビュー作「エレメント・オブ・クライム」に始まる一連の強い表現力の作品、とりわけカンヌのパルムドールを受賞した「ダンサー・イン・ザ・ダーク」で知られるデンマークの監督である。だが近年その名前は、そのカンヌ国際映画祭でのナチス擁護発言以降 (その発言を撤回したにせよ)、忌まわしいものになっているように思う。そんな中、この 1974年生まれのヨアキム・トリアーが活躍の場を広げ、2006年の長編デビュー後、今回が未だ 4作目であるにもかかわらず、既に各国での受賞歴もあり、注目されている由。
e0345320_22253359.jpg
この映画、どうやらそのヨアキム・トリアーが手掛ける最初のホラー映画らしい。何やら、少女の秘めたるパワーが覚醒する話であるようだ。そうすると、スティーヴン・キング原作でブライアン・デ・パルマが映画化し、さらにその後リメイクまでされた「キャリー」のような映画なのであろうか。実際、プログラムに掲載されている「『テルマ』に影響を与えた作品」という欄には、11本の映画と 2人の監督の名前が列挙されていて、その中には実際に「キャリー」もあれば「AKIRA」もあり、また「ローズマリーの赤ちゃん」「デッドゾーン」から、ヒッチコックの「鳥」、また監督としては、ダリオ・アルジェントとイングマール・ベルイマンが挙がっているという、かなりのごった煮である (笑)。だがここは先入観なく、この監督の映像美に向かい合ってみようではないか。

私の感想を正直に申し上げると、これは大変に凝った映画であることは間違いないものの、観客をグイグイと引っ張って行くものではなく、ひたすら感性に訴えようという作品であり、上記の映画のいずれとも異なるし、私見では、上記の映画群ほど面白くはない。要するに、観客をグイグイ引っ張るのではなく、ネタをズルズルと引っ張るタイプ。そしてクライマックスが驚天動地の凄まじいものになるかというと、そうでもない。少女の持つ神秘の力というイメージは、実際にはさほど強くないのである。116分の映画は、それこそベルイマンの「ファニーとアレクサンデル」(上映時間 311分) ほども長く感じると言えば、さすがに大袈裟だろうか。長く感じる理由のひとつは、役者たちの存在感が今ひとつということもあるだろう。そして、なかなか明かされない少女の秘密が、結局明かされるような明かされないような。「えっ、これで終わり???」という感想を持つ人がほとんどではないだろうか。そう、これって本当にホラーと呼べるのだろうかという疑問は、多くの人たちが抱くと思う。

主役のテルマを演じるのは、ノルウェイで子役時代から活躍していたという、1994年生まれのエイリ・ハーボー。
e0345320_22473941.jpg
さて、彼女の演技をどう評価しようか。繊細で複雑な役柄を、頑張って演じているとは言えると思う。だが、その熱演が映画をどこまで見ごたえのあるものにしているかというと、ちょっとクエスチョンマークなのである。私には、ここで語られている言語がノルウェイ語であるのかデンマーク語であるのかさっぱり分からないが、その言葉の馴染みのなさを割り引いても、超常現象を引き起こす少女の謎の力が、彼女の演技によってどこまで観客の心胆を寒からしめるかというと、ちょっと心許ない。特殊な能力ゆえにトラウマから抜け出ることができない彼女は、では一体、本当は何ができるのだろうか。何やら水に因縁があるようだが。
e0345320_22551590.jpg
ただ、印象に残ったシーンもいくつかある。画像は見当たらないが、冒頭と最後に出て来る、多くの人たちが行き交う大学のキャンパスのシーンである。かなり広範囲の映像において無秩序に人々が歩いて行く中、カメラはぐぅーっとズームして行く。そこには、どこの誰という特定がないにせよ、それぞれの人の人生が交錯している。そんな中、他人とは違う能力を持つ女性が歩いている。もしかすると私の隣にいて普通を装っているこの人は、実は宇宙人かもしれないし、吸血鬼かもしれないし、はたまたアンドロイドかもしれない。この奇妙に切実な感覚は、なかなかのものであった。我々は日常、街を歩いていてすれ違う他人について多くを感知することはない。もしかすると、先刻まで確かにここにいた人が、かき消すようにいなくなるかもしれない。この感覚にはちょっと怖いものがあった。だが、繰り返しだが、そのような恐怖の要素を、さらに強く、また効率的に観客に伝える術があったような気がしてならないのである。ラース・フォン・トリアーの遺伝子を受け継ぐこの監督には、ホラーよりも人間ドラマの方が合っているのだろうか。こんなシーンはホラーであれ人間ドラマであれ、いろいろな発展がありそうなものだが。
e0345320_23054189.jpg
ともあれ、この監督にはまた今後を期待するとしよう。そして我々は、この「テルマ」についてネット検索するとき、以下のような映画と混同してはならないのである (笑)。
e0345320_23080382.jpg
e0345320_23093912.jpg

by yokohama7474 | 2018-11-13 23:17 | 映画 | Comments(0)
<< ビートたけし × 村上隆 : ... ニコライ・アレクセーエフ指揮 ... >>


最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧