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ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 (デヴィッド・イェーツ監督 / 原題 : Fantastic Beasts ; The Crimes of Grindenwald)

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世界で大人気の「ハリー・ポッター」シリーズ 8作に続いて始まった「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第 2作である。前作「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」は、2017年 1月 4日の記事で採り上げた。この 2作、「ハリー・ポッター」シリーズの原作者である J・K・ローリングが、原作はもちろん、脚本まで手掛けているので、「ハリー・ポッター」シリーズから続く正式なシリーズと位置付けることができる。ここでは魔法使いたちと人間たちの人知れぬ確執が描かれていて、実はその内容は、全く子供向きではない。このことは意外と認識されていないのではないだろうか。いや、私の思うところ、「ハリー・ポッター」シリーズも決して隅から隅まで子供向きということではなく、何やら禍々しいものたちとの対決は、子供にはなかなか分からないものだと思う。前作と同じ 11月23日に封切になったこの映画、明らかに正月の家族向けであったと思うのだが、これを家族で見た人たちは一体どう思ったのか、大変に興味がある (笑)。今確認したところ、封切から 2ヶ月近く経った今でも、かなりの数の劇場で未だ上映中である。

さて、前作についての自分の記事内容を、例によってすっかり忘れていたので、今回読み返したところ、おっ、なかなかいいことを書いている。つまり、前回少しだけ出演していたが、映画の宣伝には名前が出ていなかったある役者が、「次回作から堂々と登場してくるのではなかろうか」と書いたところ、まさにその通りとなっている。その役者とはこの人だ。
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もちろん、現代最高の俳優のひとりでありながら、どうやらコスプレ系の作品がお好みであるらしい (笑)、ジョニー・デップ。彼が演じる魔術師ゲラート・グリンデンヴァルドが今回の主役であり、原題は彼の名を引いて、「グリンデンヴァルドの罪の数々」というものである。例によって邦題は「黒い魔術使いの誕生」という、説明的なものになってしまっているが、まぁ確かに、原題の直訳では意味が分かりにくいのも確か。このあたりは日本の観客の指向や、また日本語の特性もあって、説明的な邦題でもやむなしということか。ここでの彼は、人間界におけるレクター博士さながらに、異常なほど厳重な警備が必要な、強い魔術の持ち主。しかも題名の通り、その魔術の用途が世の役に立つものではなく、邪悪なものなのである。

主役のニュートを演じるエディ・レッドメインをはじめ、前作から引き続いての登場となる役者たちが多い。だが私としては、その中には「絶対この人を紹介したい」という人は、正直なところ、あまりいない。唯一この人を除いては。
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このジュード・ローが演じるのは、あのホグワーツ魔法学校の校長であるダンブルドアの (比較的) 若い頃。劇中ではこのダンブルドアとグリンデンヴァルドは古くからの友人という設定で、いわば白魔術と黒魔術を、それぞれに体現するような存在である。実生活で見ると、ジョニー・デップが 1963年生まれ、ジュード・ローが 1972年生まれと、この 2人の年齢は少し開いている。この映画において、この 2人が直接絡むシーンは、幻想シーンを除いてはなかったような気がするのだが、見る者にとってはやはり、このような一流俳優が出演しているだけで嬉しくなってくるのである。あ、それからもうひとりをご紹介したい。
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これは実に齢 600歳を数える魔法使いで、ダンブルドアの友人であるニコラス・フラメル。フランス語読みのニコラ・フラメルと言えば、いわゆる賢者の石の製造に成功したと言われる錬金術師であるが、その年齢設定に鑑みても、これはその錬金術師ニコラ・フラメルその人が、20世紀まで生き永らえた姿であるということだろう。私が強調したいのは、これを演じているのはブロンティス・ホドロフスキーであること。このブログでは近作「エンドレス・ポエトリー」でその健在ぶりをご紹介したカルト映画監督、アレハンドロ・ホドロフスキーの息子である。私にとっては、1970年、彼が 8歳のときの父の代表作「エル・トポ」における少年役として記憶しているので、この役とは随分にタイムラグがある (笑)。この裸の後ろ姿。時の流れを感じる。
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上述の通りこの映画、とても子供向きではなく、かなり深刻な内容になっている。つまり、強大なパワーを持った黒い魔法使いグリンデンヴァルドが、人間界を亡きものにしようとしているというストーリー。そのテーマの重さゆえであろうか。ここに登場する不思議な動物たちの様子に癒されることとなる。以下、ニフラーとボウトラックル。
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今回登場する魔法動物たちの中には、東洋のものもいる。これは中国の怪獣、ズーウー。そして、日本の河童も、「カッパ」として出て来る。このあたりは、作り手側が今後の設定を見据えて、東洋のイメージを作り出しているのだろうか。
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上にも書いた通り、ここでの物語はファンタジーではなく、現実世界でのもの。この映画の設定である 1927年から数年してドイツに実際に登場する、グリンデンヴァルド並の強烈なアジテーター=独裁者のイメージも出て来る。これは何を意味しているのだろうか。原作者 J・K・ローリングが描こうとしているのは、もしかすると、異なるものたちの調和を重んじる精神が薄れ、集団ごとの利益を考える傾向に向かっている現代社会の暗喩であるのかもしれない。魔法使いたちがどんな能力を持っているのか、正直なところ私にはあまり分からないのであるが (笑)、小さくて多様な命とつながりを持つ主人公ニュートは、もしかすると、現代が必要としている救世主なのかもしれない。
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因みにこの作品の監督デヴィッド・イェーツは、「ハリー・ポッター」シリーズの後半 4作と、この「ファンタスティック・ビースト」シリーズ 2作を続けて監督している。人気シリーズの場合には、監督がコロコロ替わることも多いので、このようにひとりの監督が連続で続けることは、歓迎すべきことであると思う。演出上何か奇抜な点があるわけではないが、手堅くまとめている。この作品の終結部は、次の作品に向けて開かれたもの。全部で 5作となるこのシリーズ、残り 3作も私は見ることになるだろう。

by yokohama7474 | 2019-01-19 23:12 | 映画