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アリータ バトル・エンジェル (ロバート・ロドリゲス監督 / 原題 : Alita : Battle Angle)

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CG によって映像表現の幅が恐ろしく広がったこういう時代になってくると、新作映画を作るにあたっても、なかなか悩みが多いものと思う。つまり、凝った CG を使うには膨大なコストもかかるわけであり、巨額の資金をかけて映画を作ってみた結果、既にどこかで見た映像と同じだと思われたり、あるいはただ技術だけを見せていてドラマがないと思われたりする結果に堕することは、決して許されないわけである。その点、いっそ前回の記事でご紹介した「THE GUILTY ギルティ」のような、CG を一切使うことなく観客の想像力を刺激する映画など、稀有なるアイデアの勝利であって、昨今なかなかお目にかかることはないタイプの作品であろうと思う。一方、ここでご紹介するのは、まさに最先端の CG を駆使した SF もので、それとは全く対照的。予告編でそのあらすじは明らかであったが、要するにサイボーグ物である。少女の姿をしたサイボーグが、何やら悪い奴をバッタバッタとなぎ倒す。うーん、ストーリーとしては、それだけでは際立って個性的とは思われない。だが、見てみると、なんのなんの、いくつかの点において、ちょっとこれまでにはなかったほどの斬新な出来と言ってよいと思う。この画像は、チラシのコピーにある「天使が戦士に覚醒める」きっかけになるシーン。
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上の写真で分かる通り、この主人公のアリータは、目が異常に大きい。それゆえ、顔はすべて CG を施されているのであるが、そしてもちろん、見せ場におけるアクロバティックな動きの多くも当然に CG なのであるが、ただ、基本的な動きは人間が演じていて、その表情の多彩なことや動きのリアルなことは、驚くばかり。いや、その点においてだけなら、これまでに見てきたあれこれの映画でも、驚くものはあった。だが今回は、なぜだろう、このアリータという少女に対して、見ている者が強く感情移入できるように、巧みに作られていると思うのである。この少女は、スクラップとして捨てられていたものを科学者に拾われ、脳の部分 (?) が生きていたことから、新たに身体を与えられる。だが、彼女は徐々にその特殊な戦闘能力に目覚め、そして真の自分が誰であるかを思い出す、という内容なのであるが、そのストーリーの曲折にかなりの工夫があって、ただの自分探しということではない、何か切羽詰まったものが随所に見られる一方で、育ての親への遠慮とか、初めて知った愛とか、そんな、字にしてしまうと気恥しいような (笑) 感情の描写も、実に嫌味がないのである。実際、彼女が強い相手に立ち向かって、一旦大きな危機を迎えるシーンでは、私は鳥肌が立った。その後に育ての親が施す、彼女の再生方法は当然読めたのであるが、それにしても、ここまで強烈な描き方をするのか!! という印象であった。その危機は、このシーンのあと訪れるのだが。
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そうそう、強烈と言えば、ここでネタバレはできないものの、大詰めでアリータと恋人のヒューゴが絶体絶命のピンチに立たされるときの起死回生の脱出手段、これもすごい。大げさに言えば、人間存在とは一体何かと考えさせるようなところがある。つまり、心と体とが切り離せるなら、人間とサイボーグの差なんてないのではないか、と思われるのだ。この感覚、さらに考えを進めて行けば、人が生きていることのリアリティはどこにあるのか、という話にもつながっていて、さらには、仮想社会や再生医療といった最先端のテーマにも関係してくると思うのだ。見ていない人にはさっぱり分からないだろうが (笑)、私がそのような感覚に囚われたのも、冒頭から一貫してこのアリータというキャラクターの存在のリアリティが刷り込まれていたからだろうと思う。これこそが、この映画の際立った個性である。

とまぁ、ちょっと話は大げさになってしまったが、そのような Emotional な部分だけでなく、この映画のビジュアルには、それだけでも刺激的なものがある。異星人との間の戦争で壊滅的な破壊を被った地球はこんな感じ。終末感は感じさせるが、だがその一方で、これは現在でも我々が世界のどこかで見かけてもおかしくない光景とも思われる。
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また、アリータの敵たちのキャラクターも、それはそれは濃いこと。モーターボールというスポーツ (なのかな?) では、こんな恐ろしい連中に混じって疾走するアリータが、それはもう完膚なきまでに奴らを叩き潰す。それは凄まじい。
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役者陣も充実している。主役アリータを演じたのはローサ・サラザール。「メイズ・ランナー」シリーズで見たときには、あまり美形ではないし、このアリータ役はどうかなと正直思っていたのだが、上で私が称賛したアリータのリアリティの高さは、当然彼女こそが最大の貢献者であろう。
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ほかには、「育ての親」役のクリストフ・ヴァルツ、その元妻役のジェニファー・コネリーもよかったが、何気にこの人なんてどうだろう。
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おぉっ、このあからさまに怪しい人物は、先のアカデミー賞で作品賞を取った「グリーンブック」の出演者で、また、その作品でアカデミー助演男優賞も獲得した、マハーシャラ・アリではないか。ここではまた、なんと違った役柄を演じていることか。

そうそう、肝心なことを忘れていた。この映画は、もともとあのジェームズ・キャメロンが映画化権を獲得し、最終的には製作と脚本に参加したもの。監督は、「デスペラード」や「フロム・ダスク・ティル・ドーン」の頃の勢いからすると、最近はあまりぱっとしない印象もあったロバート・ロドリゲス。久々に面白い映画を撮ってくれたのではないだろうか。これは、本作の撮影現場におけるキャメロンとロドリゲス。
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そして最後に。上でジェームズ・キャメロンがこの作品の映画化権を獲得したと書いたが、もともと原作は、日本の漫画なのである。木城 (きしろ) ゆきとの「銃夢」(ガンム) という作品。例によって私は最近の漫画には全く縁がないもので、この作品についても知識はゼロなのだが、こんな大作映画の原作とは、大したものである。映画の世界とはまた違った面白さがあることだろう。
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by yokohama7474 | 2019-03-13 21:58 | 映画