2017年 02月 28日
マリアンヌ (ロバート・ゼメキス監督 / 原題 : Allied)






ストラヴィンスキー : ロシア風スケルツォ
プロコフィエフ : 交響的協奏曲 (チェロ協奏曲第 2番ホ短調) 作品125 (チェロ : アンドレイ・イオニーツァ)
ストラヴィンスキー : バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)
なるほどこれは、ロシア・プログラムだ。だがその中身は一味違っている。私はこのプレトニョフを、余人をもって替え難い大変な才人と思っているのだが、この演奏会では、その才人ぶりが見事に発揮されていた一方で、全体の仕上がりにはいささか課題も残ることになったように思う。

2曲目のプロコフィエフの曲は、内容はチェロ協奏曲なのであるが、オーケストラがかなり複雑な音響を鳴らすため、交響的協奏曲という題名で呼ばれる。この作曲家のチェロ協奏曲第 2番なのであるが、実は、チェロ協奏曲第 1番の改作。なるほどそう言えば、ショスタコーヴィチの 2曲のチェロ協奏曲はそれぞれ一定頻度で演奏されるが、プロコフィエフのチェロ協奏曲は、この交響的協奏曲はともかく、第 1番はかなりマイナーである。もっともこのプロコフィエフという作曲家、交響曲第 4
番も、改訂によって作品 47と作品 127 の 2種類が生まれており、別の作品として認識されている。この交響的協奏曲は、20世紀後半の偉大なチェリスト、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチの助言によって第 1番の協奏曲が大規模に改作されたものであるが、そのロストロポーヴィチは後年、小澤征爾指揮ロンドン交響楽団と共に録音している。素晴らしい名盤である。


さて後半は、ストラヴィンスキーの代表作のひとつ、バレエ音楽「火の鳥」である。だがここで演奏されたのは、普段なかなか耳にすることのない 1945年版。この曲の組曲には 3種類あり、これ以外には 1911年版と、最もポピュラーな 1919年版がある。その 1919年版と、今回演奏された 1945年版の、耳で分かる違いは以下の 3点だ。
・曲数が 5曲多い。それは「火の鳥のヴァリアシオン」と「ロンド」の間に入る 10分間ほど。
・序奏において 1919年版で響くチェレスタが、ここではピアノになっている。
・終曲で弦が朗々と歌う音型が短く切れている。
そういえば昔テレビで見た、作曲者自身が来日して NHK 交響楽団を指揮した「火の鳥」の映像では、終曲で弦の音が短く切れていた。調べてみるとそれは、やはり今回と同じ 1945年版。その演奏は 1959年のもので、今では DVD で見ることもできる。



さて今回新日本フィルに初登場したヴィトが指揮したポーランド・プログラムとはいかなるものであったのか。
スタニスラフ・モニューシュコ (1819 - 1872) : 歌劇「パリア」序曲
ショパン (1810 - 1849) : ピアノ協奏曲第 1番ホ短調作品 11 (ピアノ : クシシュトフ・ヤブウォンスキ)
カロル・シマノフスキ (1882 - 1937) : 交響曲第 2番変ロ長調作品 19
なるほど、ショパンの協奏曲以外は、あまり演奏されない曲である。だがこの 2曲を堂々たる暗譜で指揮したヴィトの演奏によって、これらの曲の魅力は大全開であった。
最初の曲の作曲者、モニューシュコは、ポーランドの国民楽派を起こした存在で、母国ではショパンと並び称されているとのこと。今回舞台に現れたヴィトが、聴衆の拍手が鳴りやまないうちに振り返りざま指揮棒を振り下ろし、見事な音響が勢いよく流れ出したのを目撃して、以前 FM で耳にした、カルロス・クライバーがウィーン・フィルを指揮した「英雄の生涯」を思い出したものだ。とにかく音の広がりが素晴らしく、新日本フィルも技術的に完璧な演奏を繰り広げたのである。私も初めて聴く曲であったが、大変にドラマティックな曲で、聴きごたえ充分。ヴィトはワルシャワ・フィルとともにこの作曲家のバレエ音楽集と序曲集をナクソス・レーベルに録音している。この機会に聴いてみようと思う。これがモニューシュコの肖像。






作曲者チレアは、「道化師」のレオンカヴァッロより 9歳下、プッチーニより 8歳下、「カヴァレリア・ルスティカーナ」のマスカーニより 3歳下、「アンドレア・シェニエ」のジョルダーノより 1歳上。ヴェルディ以降のイタリア・オペラの主要な作曲家はこの世代、1850 - 60年代生まれに固まっているわけであるが、多くの作品が今も演奏されるのはただひとりプッチーニだけであって、ほかの作曲家は、上に記したそれぞれ 1作ずつによって歴史に名を留めているに等しい状況である。その意味ではこのチレアも、この「アドリアーナ・ルクヴルール」1作によってその名を残していると言って過言ではないだろう (ほかには、カレーラスがアリアを歌うことのある「アルルの女」という作品もあるが、全曲はほとんど演奏されない)。調べてみるとこのチレア、1950年まで生きたにもかかわらず、最後のオペラ作品は、この「アドリアーナ・ルクヴルール」の次の作品で、トスカニーニが 1907年に初演した「グローリア」という作品であり、現存するオペラ作品はたったの 5つ。寡作家であったのである。





今回ロイヤル・オペラで鑑賞したものと同じプロダクションが、既に映像作品として市場に出ている。2010年の収録で、主演はルーマニア出身の名ソプラノ、アンジェラ・ゲオルギュー (私と誕生日が数週間違い)。共演はヨナス・カウフマンとオリガ・ボロディナで、指揮は英国人マーク・エルダーである。
















2017年 02月 19日
アンドレア・バッティストーニ指揮 東京フィル 2017年 2月18日 新宿文化センター



私はバッティストーニの才能を極めて高く評価する者であるが、過去にこのブログでも何度か採り上げた通り、すべての演奏を大絶賛というわけでもない。だが今回は、結論から先に言ってしまうと、大変に感動的なコンサートとなり、この曲の偉大さ、ひいては (月並みな表現だが) 音楽の素晴らしさをつくづく実感することとなった。そもそもこのヴェルディのレクイエムは、クラシック好きの人にとってはもちろんよく知る曲であろうが、このブログはクラシックに造詣のない方にも読んでもらいたいと思って書いている。その私は、ここで強く主張しよう。もしあなたがこの曲を知らないとすると、それは人生にとっての大きな損失。是非是非、いかなる手段でもよいからこの曲を聴き、何度も鑑賞を繰り返し、その偉大さを心の深いところで享受して欲しい。西洋音楽の頂点のひとつであるから。これが偉大なるオペラ作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディの肖像。


http://culturemk.exblog.jp/24489238/
ちょうど同じ時期にイタリア三羽烏のうち二人までが東京に滞在しているとは、東京はやはりなかなかだと思っていたのであるが、実は、この演奏会終了時、充足した思いで会場を出ようと通路を出口方面に歩いていると、客席に白人がいるのが見えた。・・・な、なんとそれは、そのルスティオーニその人ではないか!! 一瞬ジロジロ見てしまったが、自分でも驚いたことに、考える間もなく彼に話しかけてしまったのである。
私「マエストロ・ルスティオーニですか?」
彼「(ちょっと戸惑って) は、はい」
私「今日はどうでしたか。彼はあなたのライバルですよね?」
彼「(やや気色ばんで) ライバルじゃない。同僚です!!」
私「(丁重にお辞儀して) そうですか。では、『トスカ』がんばって下さい」
彼 (無言で笑ってうなずく)
その後楽屋に向かう風情であり、そんなところで一般人からあれこれ言われたくないのはよく分かるので、自分の無遠慮さを申し訳なく思ったが、実は、後で調べて分かったことには、彼はこの日 14時から東京文化会館で二期会の「トスカ」を指揮していたのである!! このバッティスティーニのコンサートは 18時からであったから、ルスティオーニは、オペラを振ったあとすぐに上野から新宿に移動したに違いない。やはり二人は親しい友人なのであろう。すると、バッティスティーニも二期会の「トスカ」を見たのかもしれない。これがルスティオーニ。バッティストーニよりも 4歳年上である。

QUOTE
ヴェルディの「レクイエム」には、イタリア人と神との関係が反映されています。イタリア人の「祈り」は、とても個人的なものなのです。自分と「神」との対話。私は神にこう尋ねる、とか、私はこのようなことが起こらないように願う、とか。だからこの「レクイエム」は、とても個人的で、人間的な作品なのです。
UNQUOTE
なるほどよく分かる。では今回、ひとりのイタリア人のもと、何百人もの日本人が成し遂げた演奏を、バッティストーニは、そして「同僚」のルスティオーニは、どのように感じたであろうか。そして、今後の音楽界を担うイタリア三羽烏のうちの二人までが集う、新宿文化センター。なんとも素晴らしい出来事ではありませんか!!二人して新宿界隈に飲みに行ったのでしょうかね (笑)。

シベリウス : ヴァイオリン協奏曲二短調作品 47 (ヴァイオリン : 諏訪内晶子)
ショスタコーヴィチ : 交響曲第 10番ホ短調作品 93
なるほど、ヤルヴィが先週採り上げたシベリウスの交響曲第 2番は 1901年の作で作品番号 43。同じ作曲家のこのヴァイオリン協奏曲はそのしばらく後、1904年の作で作品番号 47。但し現在演奏されるヴァージョンは、改訂を経て翌年 1905年に初演されたもの。この改訂初演のときのオーケストラはなんと、リヒャルト・シュトラウス指揮のベルリン・フィルである。西洋音楽史上で最も愛好されるヴァイオリン協奏曲のひとつになっている名曲だ。ソロを弾いたのは名実ともに日本を代表するヴァイオリニスト、諏訪内晶子。













2017年 02月 16日
本能寺ホテル (鈴木雅之監督)








2017年 02月 15日
ドクター・ストレンジ (スコット・デリクソン監督 / 原題 : Dr. Strange)








