ところで、この記事を書くために、1995年の若杉 / N 響の演奏会のプログラム冊子を引っ張り出してきて見ていたら、若杉のインタビューが掲載されていて、そこに「以前、コペンハーゲンの放送局の音楽部長さんが、グレ城に連れていってくださったことがあるんです」とあるのを発見。コペンハーゲンから車で向かったとのことだが、現地では、「ウィットに富んだ音楽部長さんが、近くの岸辺から見える湖の中洲を指さして、『山鳩はあの中洲からこちらに飛んできて、お城での悲劇を報告したんだよ』と。その瞬間、僕のなかでパーッと、目の前の風景が音楽のイメージと重なり合いました」とある。こうして書き写していても、あの柔らかい若杉さんの口調が思い出されて懐かしいが、それはともかく、調べてみると、確かに中世の城の廃墟として、グレ城跡は未だに存在しているらしい。廃墟とはいえ、後世の文学作品・音楽作品によって、その土地の持つ不思議な力を感じることができる場所であるのだろう。一度行ってみたいものだ。